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第二十四話 二大学園と因縁

「どうして……どうしてアンドレ様が……!?」

「そうか、見てしまったんだね」


 書類にサインをし終えたクリス様は、困った様に笑いながら、その場を立ち上がりました。


「せっかくのテラスだが、ここは人が多い。少し静かな所に行こう」

「俺は構わん」

「……わかりました」


 私達はお弁当をもって、先日もお世話になった花壇の所にやって来ました。今日は何人かいるみたいですけど、距離が離れてるので大丈夫でしょう。


「とりあえず座って、昼食の続きといこうか」

「それもいいが、まずはさっきのを説明しろ。向こうの学園の生徒会長が、王子のアンドレとはどういう事だ?」

「わからない。僕もつい最近知って驚いたんだよ。どうやら生徒会長の席に着いてから間もないらしく、これが初仕事だそうだ」

「それが、今回の一件で浮き彫りになったわけか」


 なるほどと頷くジーク様。そんな中、私だけは全くついていけずに、オロオロする事しか出来ませんでした。


「あの……私、何から何までよくわからないんですが……」

「それは仕方ないさ。なにから説明すればいいか……まずは交流祭の事から説明しよう」

「交流祭?」

「年に一回、ジェニエス学園とゲール学園が合同で、大きな祭りをするんだ。それを交流祭と呼んでいる。交流祭は、毎年違う催しをするんだよ。開催日は、再来月の予定だ」

「近年だと、パレードを行ったり、舞台を行ったりしたな。他国の文化を学ぶ為に、この国でやらない形式の祭を行った事もある」

「うわぁ、とても楽しそうですね!」


 この国にある二大学園。そのもう片方の名前はゲール学園とそのようなお祭りをするなんて、全然知りませんでした。とても楽しそうで、聞いてるだけでワクワクしてきます。


「あそこは絶対主義な学校でね。強者こそ正義なんだ。弱者は強者に搾取されるのは当たり前。それが嫌なら他人を蹴落として、這いあがれという事だ」


 蹴落とすだなんて、酷すぎませんか……? 人間は様々な人がいます。魔法や剣が強い人がいれば、弱い人もいます。


 でも、他にも勉強が得意だったり、お話が得意だったり……そう言った人達で、助け合って生きていくのが正しい道のはずなのに……。


 あ、もしかして……私があまり聞いた事がないのは、そういった悪評のせいで、あまり話に出てこなかったからかもしれません。


「ゲール学園の生徒会長になれるのだから、アンドレも相当な実力者という事か」

「だろうね。英才教育の結果、生徒会長になれるほどの実力を手に入れたと推測できる。権力でもぎ取った可能性もあるけどね」

「……あの性格からして、もぎ取った可能性の方が高い気もする」

「きっと甘やかされて育ったのだろう。あのような男がこの先国を……おっと、それは今の議題ではないね。そうだ、帰ってから話すつもりの事だったんだが……丁度良い機会だし、今話しておこう」


 クリス様は、まるで燃えているかのような真っ赤な目で、ジッと私を見つめてきました。その表情は、真剣そのものでした。


「来週の月曜日に、ゲール学園との定例会議が行われる。その日に、生徒会長となったアンドレと顔を合わせるんだが……その会場がジェニエス学園なんだ。だから、その日は授業が終わったら、即座に帰宅してほしい。もしアンドレに君の存在がバレたら、何をしてくるかわかったものじゃないからね」

「ごくりっ……わ、わかりました」


 せっかく幸せな生活を手に入れたというのに、アンドレに幸せを壊されると思うと、卒倒してしまいそうです。絶対に見つからないようにしないとですね……。


「心配無い。俺が守る」

「ジーク様……」


 不安で俯く私の頭に手を乗せながら、とても頼もしい言葉を言ってくれたジーク様に、私の胸は不思議と早く鼓動していました。顔も熱い気がするんですが、きっと気のせいでしょう。


 はぁ……それにしても、まさかこんな所でアンドレ様の名前を聞く日が来るなんて……何も起こりませんように……せめて起こったとしても、私の大切な人達が被害に遭いませんように……。



 ****



 ついに、ジェニエス学園にアンドレ様がいらっしゃる日が来ました。この日も特に何か起こるわけでもなく、普通に放課後まで過ごせてきたのは、不幸中の幸いです。


 とはいえ、この一週間は緊張のせいで、ほとんど授業に身が入りませんでした。それどころか、寝つきも良くないし、食事もあまり喉を通らないしで……ベルモンド家の方々に心配されてしまいました。


「ではホームルームはここまで。日直、号令を」

「きりーつ。れーい」

「はい、ではみなさん気を付けて帰ってくださいね」


 今日の授業が全て終わり、帰ろうとするクラスメイト達の声で賑わう中、私は目にも止まらぬ早さで帰る準備を済ませました。何人かに怪訝な顔で見られてしまいましたが……今は気にしている余裕はありません。


「よし、さっさと帰るぞ。荷物を抱きかかえるように持っておけ」

「はいっ……ひゃあ!」


 同じ様に帰る準備を済ませていたジーク様は、なんと私をお姫様抱っこをして、教室を出ました。そして……そのまま窓から飛び降りました。


「ふにゃあああああ!?!?」


 突然お姫様抱っこをされた事や、窓を飛び降りた衝撃に耐えられたなかった私は、ただ変な声で叫ぶしか出来ませんでした!


 あ、あまりにも突然すぎて頭の処理が追い付きません! 少なくともわかる事は、私の胸がドキドキしっぱなしという事です! これがお姫様抱っこをされたドキドキなのか、飛び降りた衝撃のドキドキなのかはわかりません!


「っと……舌を噛んだりしてないか?」

「ひゃ、ひゃい~……」


 二階から飛び降りたはずなのに、何ともないジーク様とは対照的に、私は完全にダウンしてしまいました……あ、頭がグルグルしますぅ……。


 って、グルグルしてる場合じゃありません! せっかくジーク様が体を張ってショートカットしてくれたのに、私がこんなんじゃ意味がありません!


「もう大丈夫です! 行きましょう!」

「ああ。いつもの所に既に馬車は来ているはずだ。それに乗ってしまえば、こっちのものだ」

「わかりました!」


 私に手を差し伸べるジーク様の手を取ると、いつも馬車を乗り降りしている場所へと向かって走り出しました。


 自然とジーク様の手に触れてしまっていますが、お姫様抱っこに比べればどうって事ありません! 後で思い返してドキドキするかもですが!


「おかえりなさいませ、ジーク坊ちゃま、シエル様。すぐに出発できます」

「ああ、急がせてすまない」

「よかった、間に合った……!」


 急いだ甲斐あって、何とか無事に馬車の元へとたどり着く事が出来ました。後はこれに乗って帰れば、アンドレ様に私の事を知られる事はありません。


 そう思っていたのに……。


「……何故お前がここにいる?」

「あっ……ああ……」


 もう聞きたくもない声。その声に無意識に反応してしまった私は、馬車に乗らずに、その場で振り向いてしまいました。


 そこにいたのは……とても驚いた表情をしていた、アンドレ様でした……。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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