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第十八話 聖女の旅

 一悶着がありましたが、無事に職員室へと連れて来てもらった私は、担任の先生である女性と共に、二階にある教室の前へと来ました。


 1-Cっていう教室なんですね。前に来た教室とは違うところみたいです。ちゃんと昇降口からここまで来るのを覚えておかないと……ただでさえ広いのに、元々迷子になりやすいので……。


「では私が先に入って静かにさせてくるわ。その後に名前を呼ぶから、教室に入って来てね」

「ひゃい!!」


 盛大に噛みましたが、そんなのが気にならないくらい緊張している私は、教室のドアの前でガチガチになっていました。


 クラスの子と仲良くやっていけるでしょうか……校門の時点であんな結果だから、ちゃんと自己紹介をしないと、絶対に浮いてしまいます。


 でも……ちゃんとした自己紹介ってなんなんでしょう……生まれから話すべきでしょうか……?


「シエルさん、入って来てー!」

「ひゃわ! 今行きます!」


 中から先生の声が聞こえてきたので、ドアに手をかけて入ろうとしたら……ドアに手がかからず、盛大に空振りをしてしまいました。


 しかも、体はもうドアが開く前提で前進していたので、途中で止まれるはずもなく……私は無様にドアと正面衝突してしまいました。


「ちょっと、大丈夫ですか!?」

「ら、らいりょーぶれしゅ……」


 うぅ……最初からなんて失敗してるんですか私……! これじゃ絶対にクラスの人に変な目で見られるの確定です……ぐすん。


「あ、あの……わ、私……シエル・マリーヌと申します……こ、こういうところに通うのは初めてで……友達もできた事がないので……仲良くしてくだしゃい……」


 鼻を抑えながら教室に入り、皆さんの前で挨拶をします。こんな変な挨拶になってしまいましたが、これで良かったんでしょうか……?


「確か、ベルモンド兄弟と一緒に来ていた子だよな?」

「そうだ、あの白い髪覚えてる!」

「はいはい静かにー。シエルさんは事情があってベルモンド家でお世話になってるの。だから不必要に騒がない事。シエルさんの席はあそこね」

「は、はい……あっ!」


 指定された窓際の席に行くと、隣の席に ジーク様がいらっしゃいました。


 まさかこんな所で一緒になれるだなんて、思ってもみませんでした! これならジーク様と一緒にいられます! ホッと一安心です!


「ではホームルームで話す事は特にないので、授業の準備をするようにー」

「ふぅ……まさかジーク様が一緒とは思ってなかったです!」

「俺も想定外だ。もしかしたら、生徒会長の兄上が何かしたのかもしれない」

「生徒会長……?」

「生徒会という、生徒だけで組織された連中だ。主に学校行事の運営、他校の生徒会との交流、ボランティア活動、雑務諸々……言ってしまえば、面倒事のオンパレードをさせられるところだ」


 最後の部分はちょっと飛躍してるようにも思えましたが、とにかくクリス様はそんな会のトップをしているのは分かりました。


「言っておくと、生徒会長は並みの生徒ではなれない。日々の成績や生活態度、周りの信頼があって初めて選挙で推薦される。そこで投票に勝たなければならない」

「よくわかりませんが、大変で凄いのはわかりました!」

「……そう思ってれば大丈夫だ」


 私の答えが面白かったのか、ジーク様はフッと笑みをこぼしてくれました。ジーク様の笑顔は、普段のギャップも相まって、とても愛らしいんです。私はこの笑顔が好きなんですよ。まあ……ジーク様の性格上、言ったらきっとやってくれなくなると思いますけどね。


 さて、おしゃべりはここまでにして……授業の準備をしておきましょう。教科書にノートに筆記用具に……うん、完璧です!


「おいシエル、その教科書……数Bだぞ。今日は数Aだ」

「……ふぇ?」


 ほ、本当だ……似てるけど、内容が全然違う! って事は……私、初日から忘れ物!?


「あーあ、初日から何やってるんだか」

「まあ回復魔法しか得意じゃない能無しじゃ仕方ねーだろ! ぎゃははは!!」

「……あいつら……」

「駄目です! さっき止められたばかりじゃないですか!」


 先程みたいに怒ってしまったジーク様の腕をつかんで、何とか静止させます。


 私の為に怒ってくれるのは嬉しいですけど、だからと言って暴力は……あれ? あの人達に見覚えが……そうだ! 私の試験の時に陰口を言っていた人達だ! まさか同じクラスだなんて!


「あの女、ベルモンド兄弟に取り入ってよからぬ事を企んでるっぽいわよ?」

「マジかよ! 通りで試験中にクリス先輩が変に肩入れをしてると思ったぜ!」

「本当に最低な――」

「あー!! やっぱりそうだ!!」


 私への悪口が悪化する中、その空気を完全に無視して、一人の女子生徒が私の所へ走ってきました。


 やっぱりって……何の事でしょう? 私、この人に何か悪い事でもしてしまっていたのでしょうか?


「聖女様ですよね!」

「え? あ、はい……元聖女です。でもどうしてそれを? 確か初対面……ですよね?」

「やっぱりそうだ! 以前あなたに父を治療をして貰った者です! えっと、カボチャ畑を管理してる!」


 南にある農村……カボチャ畑……あ、思い出しました! 確かに巡礼中に行きました! とても緑が豊かで、静かな良い所で……村の人達も、凄く良い人ばかりでした。


「覚えてますよ! あのカボチャは甘くてトロトロで本当においしくて……! その後のお父様の腰はどうですか?」

「おかげ様で、今までサボってた分を取り返すぜー!って張り切ってるって、手紙に書いてありました! その手紙に、あなたの名前と特徴が書かれてあったので、もしかしてと思って!」

「なるほど、そうだったんですね。なんにせよ、お仕事が出来るようになってよかったです!」


 私がお会いした時は、もう腰が痛くて畑作業が出来ない、生きがいを無くしてしまったと落ち込んでいましたが、元気になったんですね。本当によかった……。


「え、聖女様!? うっそ、最近まで巡礼してた人だよね!?」

「言われてみれば、確かにそうだ!」

「随分前だけど、うちの母親も治してもらったのよ! あの時はありがとう!」

「え、えぇ!? あの……み、皆様落ち着いてください……!」


 私が元聖女とわかると、本当に一瞬でクラスメイト達に囲まれてしまいました。そのおかげで、私への悪口が何も聞こえなくなりました。


 ……きっかけは騙された事でしたし、とてもつらい巡礼の旅でしたけど、こうして沢山の笑顔が見られたんですし、あの巡礼の旅も無駄じゃなかったんですね……。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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