*カランコロン*
*カランコロン*
夏。浴衣。項の奇麗な女。汗の香り。
下駄の音。
涼しげな風鈴。
打ち上げられるデカイ花火。
…………ブチッ!
あ〜〜〜〜〜〜〜〜クソっ!!!!
あちぃ!!!!!
俺は今、堤防脇に陳列するクレープ屋でクレープ生地を作っている。
小さめな鉄板とはいえ、顔に掛かる水蒸気と熱気は半端無い。
目の前にいる可愛い子ちゃん達も、今の俺には癒しの効果が無い。
俺もこの祭りを楽しみにしていたのにッ!!!
あんのクソオヤジの所為で!!俺はこんな状態だ。
夏祭り当日の朝のこと。
ガシガシ頭を掻きながら降りてきた俺を捕まえ。
「ああ、正親。俺ぎっくりしちゃったみたい☆」
と、のたまった。
なぁ〜に〜が、しちゃったみたい☆だッ!!!
お茶目に言っても効果ないぞ、熊がっ!
でも、それに騙された俺も、俺か・・・
あ〜クソッ!
絶対この屋台から離れた所で、かぁさんといちゃついてるに決まってる!!
はぁ〜俺も、アイツと・・・いちゃいちゃしたかったのに…
そう思うと、何故かさっきまで可愛いと思っていた女達がブスに見えてきた。
やばい…
暑さにやられたか?
カランコロン…
汗が滴り落ちる。
ふわりと頬を撫でる柔らかい布の感触。
「え?お前」
「よう、暑そうじゃん」
「おう。あちぃよ〜」
次いで手渡された冷たいポカリ。
それを一息で飲み干す。
「汗も滴るなんとやら?」
「ばーか。それを言うなら水だろ」
「知ってるよ」
クスクス笑うこいつ。
さっき俺が思い浮かんでいた男。
あ?退くなよ。
これでも俺達愛し合ってんだから。
夏ってのはさ、だりぃけど。
こういう時にさぁ、愛って感じるもんだよね。
それ言ったら。
「はははっ!ばかじゃねーの?」
んで、次に。
「そんなん。毎日でも感じさせてるじゃねーか」
嬉しいこと言ってくれるじゃねーか。
カランコロン…
二人分の足音。
カランコロン。
何処までも続く事を願って…
end