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~ブライアス、戴冠~

 その日、王都では勇者ブライアスの凱旋と国王即位を祝うパレードが開催されていた。


 王都の大門から王城へと続く大通りは、多くの人が集まり、人だかりになっていた。


 いよいよパレードが開始された。


 大門から馬に乗って先導する騎士、隊列を組んで行進する歩兵と次々に大通りに入ってくる。


 民衆の歓声が一段と高まった。勇者ブライアスの乗る馬車が大門から入ってきたのだ。


 馬車の中には、殿下とパーティを組む女魔法使いローレットと聖職者ヒルダが同乗していた。


 「陛下、民衆が待っております」


 随分気の早い女魔法使いが、陛下とブライアスを促す。


 「ふん。民衆がなんだ?臭いんだよ。あいつら」


 「しかし、民衆の心を掴むのも覇道の一つですよ」


 ようやくブライアスが右手を挙げ、民衆の歓声に答えた。


 そうしてブライアスのパレードは、大聖堂に至る。


 王権は神から授けられたものであり、神の代行者として君臨する。


 王は神に対してのみ責任を負い、民衆はもとより教皇に対しても自由である。


 儀式としては、国王即位は大聖堂で、教皇から王冠を授けられる。


 大聖堂前で教皇以下、教会の幹部がブライアスを待っていた。 


 「殿下、お待ちしておりましたぞ」


 そう言って、ブライアスを大聖堂に招き入れる教皇を、ブライアスは訝しげに睨む。


 「……どうだかな。僕の年齢を考えて、父王より扱いやすいとか考えているんだろう」


 「――殿下!」


  傍らに控えていた聖職者ヒルダが静止する。


 「なんだ?ヒルダ。僕より、この教会でふんぞり返っているジジイの肩を持つのかい?」


 「……い、いえ。神聖な大聖堂です。荒事はお控えを」


 「ふん。ヒルダ、覚えておくといい。僕はいつでも君を追放できるんだ。あの賢者のように」


 「心得ております」


 


 大聖堂で戴冠の儀式が始まる。


 ブライアスは、神前に跪いているが、不満そうである。


 教皇が王冠を手に、神の言葉を伝える。


 「汝、いついかなる時も神の御名において……」


 「――はぁ。うるさいなぁ」


 「殿下。今なんと?」


 「うるさいって言ったんだよ!」


 ブライアスは立ち上がり、教皇の持つ王冠を奪った。


 王冠は教皇によって戴冠されるはずだった。


 しかしブライアスは、自ら王冠を掲げ、自身に戴冠したのだった。


 大聖堂内は、騒然とした。


 教会の聖騎士達が今にも剣を引き抜きそうになるのを堪え、王の親衛隊はいつでも聖騎士を斬りつけられるように身構える。


 ブライアスは戴冠すると、そのまま騒然とする大聖堂の真ん中を歩いていく。


 そうして、扉の傍らに立っている髭を生やした大柄の男に気が付いて話しかける。男は親衛隊の服装に大剣を背負っていた。


 「将軍、あのジジイ目障りだよ。死んでくれないかなぁ。あっ、そうだ。今まであいつが殺してきた魔女みたいにさ、炎の中で踊りながら死んでもらうとかどうかな?見物だね!」


 「ご命令ですか?」


 将軍の口元が笑う。ブライアスの顔も醜く歪んだ。


 「うーん。まだいいかな。でもそのうちね。僕に逆らったらどうなるか教えてあげよう」 


 王国始まって以来の暴君、ブライアス国王の誕生の一コマであった。


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