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処女作です。
拙い文章ですが、お願いします。
「ぁ、あぁ…あぁぁあ…うああぁあああぁあぁぁぁあぁああ……ッ!」
降り頻る雨の中、少女の慟哭が響く。
とある紛争地帯。
建物はゴーストタウンのように荒れ果て、赤黒い血痕や弾痕が目立つ。
その街の暗く狭い路地裏には、綺麗な黒髪の少女と、青年に差し掛かったくらいの男が居た。倒れている彼の右腕は無く、焼け爛れた腹は大きく抉られ、出血が酷い。最早助からないと、誰もが考えるであろう状態だ。それでも悲痛な顔の少女は、青年の腹を、汚れるのも厭わず両手で必死に押さえていた。
その地域では滅多にない豪雨が、青年から更に体温を奪い、薄められた血が二人を次第に薄赤く染めてゆく。
青年は蒼白く、苦しそうな顔をしながら、茶色い瞳で少女を見上げた。
「…ノイ、ン!何してる!早く逃げろ!」
「う、ぅうぅぅ……ふ、ふざけないで!貴方は、ずっと一緒に居るって言ってくれたでしょう!?アインス、もし貴方が私を置いていく気なら…!!」
ノインと呼ばれた少女は悲鳴をあげるように叫び、どこからともなくナイフを取り出すと、その鋭い鋒を己の白く細い首に宛がった。
「…!何してる!?止めろ!!」
青年が血を吐きながら叫び、弱々しく手を伸ばす。しかし、彼が瀕死であることを理解してしまった少女に決意を違えるつもりは無いらしかった。
そんな事をされるくらいなら、と考えたのか、彼は少女の手を握り、強く、咎めるように話し掛ける。
「ノイン!」
「!」
少女はビクリと身体を震わせて顔を歪める。青年を見下ろすのは、様々な感情が綯い混ぜになった翡翠の双眸。
少女の注意を引いたと確信すると、青年は先程までとは一変して、恥ずかしそうに言葉を紡ぐ。
「…ノイン、もし…、生まれ変われたらその…また、一緒に居てくれる?」
「………………は、え?」
少女は突拍子もなく、しかし自分にとっては最も嬉しいその言葉に、一瞬硬直する。そして赤面しつつ、何を企んでいるのかと問うように青年を睨む。そして彼の真剣そのものの視線とかち合い、はにかみながらコクりと頷いた。
その返事に青年は蕩けそうな笑みを浮かべ、続ける。
「またいつか、結婚するって約束してくれる?」
「…?う、うん!だから…」
少女の返事を聞いた青年は、幸せそうな、しかしどこか悔しそうな表情を浮かべると、ごめんね、と少女の言葉を遮った。
血にまみれた手で握り返し、赤い顔のまま真意を確かめようと彼の瞳を覗き込んだ少女は、しかし困惑と驚愕が入り交じったような表情を浮かべ、…倒れ込んだ。
「…巻き込んで、ごめん」
青年は痛みか苦しさからか顔を歪めながら自分に覆い被さっていた少女を抱きしめ、濡れていない壁に寄りかからせると、血に染まった手からナイフを取り上げた。そして少女の首に自分のペンダントを掛け、何度かつつく。
少女の頬を震える手で優しく撫でた後、青年はナイフで首を掻き切った。
数分後。
そこには、血塗れの少女と紅い川だけが残されていた。