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8 社長魔王はマジシャンになりました

意識が戻ると見慣れない天井がそこにあった


掛けられていたのは暖かい布団


それ以上に温もりを感じる右手


ん?右手?


見ると、そこには青髪の美少女。

私の手を握りながらかわいい寝息を立てている。

そうだ。思い出した。盗賊たちにキレた後、MP切れをして眠ってしまったのだった。起きない私を心配して、一晩中側にいてくれたのか。まったく、行動に一貫性がない少女だ。

静かにしていれば本当に可愛いのに、などと思いながら起こさないようにそっと手を抜く。

ついでに、毛布をそっと掛けておくことにした。朝は冷える。


さて、ここはどこだ?

部屋にしては狭い気がする。小屋だろうか。

ベットから出てあたりを見回す。


「うわっ!」


人気がなかったにも関わらず、見知らぬ男の姿が見えた

と思ったら


「鏡? これが今の私か?」


そういえば一度も自分の姿を確認してなかった。印象は美青年? どこかで見たことがある、というよりはよくある顔?と言ったとこだろうか。予想以上に若くてイケメン。

そんなことより、あまりに驚いたせいでマリーを起こすとこだった。危ない危ない。


ドアから外へ出ると廊下だった。綺麗ではあるが、道幅も狭いし、天井も低めである。ドラゴンとかは通れそうにないがゴブリンだったら通れそうだな、などと考えていると、下への階段を見つける。

なるほど。ここは新しいダンジョンか何かなのかもしれない。警戒を強め、慎重に降りていくとそこには


「……!おはよう、ジンくん。体の方は大丈夫かね?無事目を覚ましとくれて安心じゃ。」


村長が朝ご飯を作っていた。

警戒していたのがバカらしい。よく考えたら木造のダンジョンなんてある訳なかった。


「いやー、村まで着いた頃に後方から凄まじい音が聞こえてきよってのう。時間を置いて見に行ったんじゃよ。そしたら盗賊もジンくんもみーんな倒れておるじゃろ。驚いて思わず腰が抜けそうになってしまったわい。」


そうか。村長があそこから運んでくれたのか。


「ところで俺以外の盗賊たちは?」


「ああ、本当はジンくんを回収してすぐ逃げる予定じゃったが、盗賊たちの方がジンくんよりも圧倒的に被害が大きかったからのう。とりあえず起こして見たんじゃが……」


「……じゃが?」

まさか、やり過ぎて殺してしま


「起きるなり『悪魔だ! 悪魔だ! 悪魔だ! 逃げろー!!』と言って五人とも一目散に逃げてしまったわい」


はい、犯人私です。


「きっと熊を悪魔だと勘違いしたんでしょう」


「そうか、熊が出たのか。お主は傷が少なくてよかったのう。それとも驚いて気絶したのかのう?……冗談じゃよ。何せ勇者じゃもんな」


「……え、ええ。それよりここは?」


「寝ぼけておるのか?わしの家じゃぞ」


「あれ、でも昨日あった場所とは……」


「あれは一階じゃよ。ここは二階。やっぱり寝ぼけとるな」


なんと!こんな狭いスペースしかないのに3階建の家なのか!確かに魔王城は4階建だが、この家の数十倍の面積があるのだぞ?!

いや、もしかして私の常識がおかしいのか?


「寝ぼけとるならまずは飯を食うことじゃな」


そういえば、昨日はこの体になってから何も食べていない。お腹から可愛らしい音がなる。



美味しいご飯を感謝しながら食べていると、上の階から慌ただしい足音が。

恐らくマリーだろう。

と思ったら違った。


「そんちょーおはよー」

「おはよーございます。そんちょー」


現れたのは男の子と女の子だった。


「おぉ、二人ともおはよう。今日も元気じゃのう。そうじゃ、ジンくんは二人と会うのは初めてじゃろ。紹介せねばな。もじゃもじゃヘアーの男の子がルディ君。サラサラヘアーの女の子がモイラちゃんじゃ。顔を見て分かる通り双子じゃ。二人とも。こっちはジン・マサカくんじゃよ。ご挨拶」


「こんにちは、おにいちゃん。よろしく!」

「はじめまして、こんにちは。よろしくおねがいします」


村長の酷い紹介は置いといて、なんて二人とも良い子なんだろう!昨日の出会い全てが残酷だったからもはや、二人が天使に見える。まっ、眩しいー!!


「そんちょー、あのね、きのうね、ボール投げたらね、木にひっかかっちゃったの」

「だから、とってほしいです」


「うーむ。今わしは、朝ご飯を食べるという難題を絶賛攻略中じゃからのう。そうじゃ! ジンくん頼めんか?」


「私がですか?」


くっ、村長め。なんと酷い言い訳だ。


「おにいちゃん」「おねがいします」


くっ、断れるわけないに決まっているだろう。



急いで着替えて、約束した一階出入り口まで行ったらもう二人はいた。

おかしいな。着替える時、マリーを起こさないよう気をつけたから、そこで少し手間取った。しかし着替えは村長が用意してくれたし、他の身支度も素早くしたはずだが。


「二人とも。ちゃんとご飯食べたかい?」


「もちろんたべたよ!」

「たべました。きょうもおいしかったです」


とっ、尊い。疑った私が浅はかだった。


「おにーちゃん、はやくいこ!」


「っああ。案内してくれるかい?」


「もちろん!ついてきてください」


連れて来られたのは村の結構外れ。昨日私がいた場所とは反対側だ。大きな木の、どうしてそんなとこまで投げた?と思うほど高い位置にあった。


登るのは面倒だな。浮遊魔法はまだ使えないから、そうだな。


「二人とも少し下がってて。」


「うん」「わかった」


チョコチョコっと小さく二本下がる。ヤバい可愛い。そろそろロリとショタの道に入り込みそうだ。いや、既に片足突っ込んでる。


「いや、もう少し離れてて。危ないから」


十分離れたことを確認して、木の幹を持つ。


「ふん!!!」


メキメキメキっと音がして、木の根が地面浮かび上がる。見た目以上に重い。良質な木なのだろう。そのまま木をゆっくり気をつけながら倒す。ふぅ。レベルがそこそこ高いのも悪くないな。ついでに、木があった場所にできた穴はちゃんと埋めておく。子供が怪我でもしたらいけない。


「おにーちゃん。すごーい」「カッコいーあれまほー?」


「ま、まあね。」

魔法でもなんでもない力技なのだが、子供の夢を潰す大人は良くない。


「ほかにもあるのー?みせてみせて!」「みたいみたい!」


なんて眩しい視線なのだ!同じ生き物とは思えない!


「よし、わかったぞ」


そう言ってまずは、倒した木から何本か、枝とって短い棒にする。火力を調節しながら、


(執念の炎!)


一斉に枝先に火をつけて投げたり回したりする。要はジャグリング。

右から左へ。左から右へ。最後は全て空中に放り投げて高火力で

(執念の炎!!!)

花火のように木片が飛び散る。


「すごーい!!」「かっこいいー!」


よし。うけた!


「「もっともっと!」」


少し引くほどの凄い食いつき方。まあ、さっきのは魔法というより大道芸だったのだが……まあ喜んでくれるなら大道芸でいいか。次は木を丸ごと……投げる!!


「「わぁあわぁわぁ」」


続けて

(ダーククロー!)

できるだけバレないように早技で。木は空中で分解され、綺麗なぶつ切り丸太へと姿を変える。


「「おおおおぉぅぅ」」


これで終わりの予定だったが、結構良質な木を見たら良い事を閃いた。

「まだまだ、これで終わりじゃないぞ!トレード!!」


さっきまで山積みになっていた木の山が一瞬で消える。代わりに、目の前に一本の剣が現れる。


「「「うおおおおぉぅぅー、すごーーーい!!」」」


予想以上に受けた。しかも、かなり良質の剣を入手。大成功という言葉はこの瞬間のために生まれたに違いない。それよりも気になるのは、


「えっとマリーさん? いつからここにいらっしゃったのですか?」

ついでに何子供と同化しているんだ?


昨日のローブと違い、今日はオシャレなワンピース姿。それもあって一瞬マリーと分からなかった。別に、昨日のローブ姿がオシャレではなかったとかそういう訳ではなく、ただその、今日の方が清楚な感じが青い髪と綺麗な胸に似合っているというかなんというか………。って一体何言わせてんだよ!てかこれ誰に言ってんだよ!

と、心の中で変な葛藤が生じていたのは余談。


「え、今さっきだよ? それよりジン、体はもう大丈夫なの?」


「この通り元気ですよ。昨日の晩は看病してくれたのでしょう。ありがとうございます。」


「っそ、そんな別に大したことないわよ。昨日は散々ジンに迷惑かけちゃったし……その、ありがとうはこっちのセリフで……」


ほう、こんなところでツンデレプレイですか?嫌いじゃないですよ。


「ってそんなことより、伝言伝言!おじいちゃんがジンを呼んでたよ。危うく本来の目的忘れるとこだった。さあ、行くわよ……あれ?」


「あたりをキョロキョロしてどうしたのですか?」


「この辺りって、ひときわ大きな御神木があったような……」


……ごめんなさい


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