7 社長魔王は倒れました
あらすじ>>私を殺せと叫ぶ
「聞こえなかったのですか?ならもう一度言います。私を殺せ!」
『……おい、あのにいちゃん頭狂ってんのか?』
『私ぃ、錯乱魔法なんてぇ、使ってないしぃ、そもそも使えないわよぉ〜』
『お前がなんかしたのか?』
『兄貴、何かしたとしてもあんなこと言いませんぜ』
『じゃあよう、なんであいつはあんなこと言ってんだ』
『この世に絶望した自殺願望者だから?』
『でもぉ、殺していいなら殺せばぁ?』
『いや、でも』
「おい、何ごちゃごちゃ言っているんですか? さあ殺せ。早く殺せ。思い切り殺せ」
「……おい、にいちゃん。死ぬって意味わかってんのか? 死んじまったら何もかもパァだぜ? そんなことより身ぐるみ置いて言った方が」
「つべこべ言うな! あれか? お前たち殺人犯になるのが怖いのか?安心しろ。自分の体にレイズの魔法かけてあるからお前たちは殺人者にはならない」
「「「…………」」」
「……ん?なんだ。殺さないのか?あぁ、安心したまえ。反撃系の魔法はかけていないしそのつもりは無い。さあ、早く!」
『はっ、兄貴わかったぜ! 』
『なんだ、あいつに関わったのが間違いだった以外に言ってみろ』
『ハッタリっすよ!ハッタリ!あいつはハッタリかまして俺らから逃げようとしてるんす!』
『……! なるほど確かに。そもそもレイズなんてつかえるチート野郎がこんなとこにいるわけないしな!』
『でぇ?どぅするのぉ?』
『決まってんだろ。』
「お望み通り、あの世行きだ。首を狙え。服は売れるから出来るだけ傷つけんなよ。」
「了解っす」
「了解ですぅ」
叫ぶと同時に来た。
リーダーを残して、二人がこちらへ飛びかかる。
速い。その上どちらが先の一手を決めてくるか分からないように撹乱している。実にうまい。
それに気を取られていると、タイミングを見計らうように左右から殺意の塊が飛び出す。
飛び出した刃は、まっすぐに首元へ!
あぁ、殺される!
よかった。説得が上手く言ったようだ。なるほど、あいつらも死ぬのが怖いんだよな。当然だ。
まあこっちは生き返れから、死ぬことは少し痛いだけである。まさかレイズがハッタリだと思う阿呆はこの世にいなかろう。なんてったって、私は前世魔王なのだから!!!
改めて思うとレイズを使っても倒せなかったあの勇者は本当の意味で怪物だったな……。
そう、これこそが私の思いついた作戦。
「盗賊に殺されかけて人間不信。性格変わっちゃいました(てへぺろ)引きこもりの勇者の大恥大作戦」
作戦内容は……説明いらないね。それよりも作戦名長いね。略して「盗賊大恥作戦」あれ、意味変わってしまった?
あれ、それよりそもそもこれ誰に説明してるんだろう?
まあいいか
後は大人しく殺されて
盗賊ごときにボコボコにされたという汚名付きの、しかも社会的地位で最も下であるヒキニートになるのだ! これで勇者という存在は世間評価がマイナス! ざまあみろ私以外の勇者め!
ちなみに私は引きこもりには慣れている。実際、ここ100年近くは仕事に追われ、魔王城に引きこもり状態だった。
作戦は超がつくほど完璧。ぬかりはない。
強烈な攻撃。
飛び散る刃。
開かれる恐怖の双眸。
顎が外れそうになる五人の口。
一斉にそれも4人もの強者から攻撃。
それが意味するのは即死。
すぐにHPバーは緑から黄や赤を見る事なく、空っぽになる
筈
なのに
あれ
この表現どっかで前も使った!!
(コラっ、メタ発言やめろー!!)
おかしいのはまだ死んでないことだろ!
「ちょっと全員タイム!」
「「「「「……あ、はい」」」」」
ステータスを確認する。
レイズはまだかかったまま。
生き返った訳ではなさそうだ。
持ち物が特殊なのか?
七つ道具か紙切れにそんな力が……なかった。ガラクタは所詮ガラクタだ。
はてさて、それではどうしてHPが減らないのだ?
再びステータスを見る。
lv49 ジン・マサカ
HP 498/498
MP 5145/5145
何もおかしなところは
「大ありだろー!!!」
盗賊達がビクりと驚く。驚かすつもりは無かったのだが。
待て待て、どうしてこうなった?
レベルアップはモンスターを倒して経験値を貯めて起こる現象だぞ。
ダンジョンには潜ったが、私はモンスターに一体も出くわさず、罠にも当たらす、一度も迷わず、攻略し……
……てなかった。そうだ、あのモンスターパレードを罠にはめていた。
なるほど。つまりこういうことか。
俺TUEEEE状況。まじキタコレ。
まさか引きこもりのスローライフストーリーの予定が、作者の手を離れて、なろう要素たっぷりの作品になってしまうとは!
(言ったそばからメタ発言コラっ!!)
まてよ、
ということは私の完璧な「盗賊大恥作戦」は失敗した?
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「おい、っではなくて、あのー、お兄様?突然泣き出してどうしたんだ……ございましょう?できるなら俺ら、私たち退散してもいいか、でしょうか?」
「…………作戦の失敗? そもそもどうしてだ?何か間違えたのか? 完璧だった。完璧だった。完璧だった!失敗なんて万に一つもないはずだった!…………そうか、こいつらが弱かったからいけないんだ。襲って来るくせに、自分たちより強い奴らを襲う輩がいけない。盗賊のくせに、聖剣とか即死武器とかではなくて、刃が大きいだけのククリフナイフなんか持ってるのがいけないんだ。そうさ、私は悪くない。完璧だ。悪いのは盗賊だ。憎いのは盗賊だ。勇者の次に憎いのは盗賊だ! ああ、失敗? 失敗なんて許さない。絶対にこのまま終わらせない。私は勝者だ。人生の勝者だ。失敗ばかりの敗者とは違う。勝者であり続ける必要がある。だからお前達には敗者になって貰わなければならないのだよ。さあ、今日のところはどう落とし前をつけようか? あぁ? 火達磨か? 溺死か? 電気椅子か?
あぁ、そうだ、いいこと思いついた」
「ひい! 体が、体が!」
盗賊たちの体が硬直する。
「何狼狽えているんだ? まだ拘束魔法と鋼鉄化魔法、即死回避魔法、回復魔法等をお前達にかけただけだぞ? 逃げられたりすぐに死なれても困るからな。あぁ、なぁに、少しばかりサンドバックになってもらうだけさ。スキルが正しく使えるか試すだけだよ。なかなか使えるか確認する機会もないし。そうでもしないと私は本当に今日の出会いはロクデモナイものばかりになってしまうだろ。せめてお前達が商品価値を生み出せよ。安心しろ、さっき言った通り死ぬことはない。死なないなら、ちょっと痛いだけだろ? 時間を取らせるんだから対価もやろう。ほら、さっきまで散々欲しがってた物だくれてやるよ。あぁ? なんで手に取らない? 呪いなんてかかってないぞ? あぁそうか、さっさと殺って欲しいんだな。わかったよ。無駄話はやめてさっさと取引に入ろうか」
「「「「「ひぃい!!!」」」」」
ーーー我の願いに応えよ 終焉の時は近い 血よ騒げ 殺戮の時は近い 回れよ回れ 来たれよ来たれ 贄は既に支払った 今こそ封印されし力を解放せよーーー
「 魔眼解放 」
あたりはすっかり暗くなっていた。赤い月が、赤い目が、人間を見下している。
「ダーククロー!」
ひれ伏す弱者5人。
「ヘビーインパクト!」
燃える左眼と悪魔の右腕を持つ強者一人。
「デスブレス!!!」
まさにそれは地獄絵。
紛い物のサンドバックはすぐに使い物にならなくなる。
それと同時に悪魔から殺気が消え去る。
(あっやばい、魔眼解放の反動が来……)
ばたっ。
六人が地面で寝転ぶ構図が夜道に出来上がった。
静けさと闇が世界を覆った。
今回、鬱描写とメタ発言とイジメを助長する描写があります。
苦手な方はご注意を。
(コラ!そういうのは前書きにかけ!)