〜ZERO〜
五茫星、というものがある。
円に、星の形の魔方陣。よく映画やテレビゲームなんかで悪魔召還関連の話があるときに床や壁に書かれている【あれ】だ。
これを逆さにすると――見えてこないだろうか?
角のはえた生き物に。
それは悪魔そのもの。
あるいは――供物に使われるヤギ。
ヤギは英語で、ゴートと呼ばれる。
だけどヤギの子は、ちょっと呼び方が違う。
――Kid。
■ □ ■ ■ ■ ■
それは、ある母子の会話。
「……ただいま」
「おかえりなさい。陸緒くん。……うれしそうですね」
歳の近い義母は、楽しそうに微笑んだ。
「ちょっと、いいことがあってさ。……そっちこそどうしたの。パソコンなんか立ち上げてさ」
「粘菌でできることを、私も私なりに調べてるんですよ」
「へえ。そらだけじゃないんだ。こういう物好き……」
「はい?」
「や、なんでもない。……えーと、たとえば?」
「……え? ……ええ、たとえば……今の自殺現象。これは粘菌が脳を侵食したばかりに起こっている混乱なのではないかと推測しているんです。それを克服して粘菌と脳が同化した場合、まったく新しい生命体へと進化できるのではないか、と。酸素を取り込めなかったかつての微生物が、ミトコンドリアと同化することでエネルギー生成能力を得て進化したのと同じように」
「……進化って?」
「はい。たとえばの話ですが、たとえば、人の脳の電気信号を操作して遠隔操作をおこなうことが可能になるかもしれない。たとえば、私が誰か嫌いな人がいたとして、たとえば生徒Aを利用したとしましょう。そして、その生徒Aに、自分の嫌いな相手のそばに爆弾を置かせる。こうすれば嫌いな相手を始末でき、しかも自分に罪はかからない」
「……怖いな」
「それに……私に好きな人ができたら――その人の脳に粘菌を植え付けて、さらに自分にとって都合のいい記憶を植えつけて、自分の思うがままにするとか……」
「……そりゃ怖いな」
「ええ、怖いです。わくわくするくらい怖いです。私にこの能力があれば、どんな人でも選べるんですから。」
「…………」
「隣の人でも。テレビの向こうの芸能人でも。学校にいるたくさんの子供たちでも――あなたでも」
「はは。たとえばの話、だろ?」
「……さぁ?」
■ □ ■ ■ ■ ■
一週間後の――とある会話。
「あら、誰かしら?」
「早水です。赤土先生。陸緒くんの友達で……」
「……ああ! 陸緒にこんな友達がいるなんて知らなかったわ」
「先生。陸緒くんがどこへ行ったか知りませんか?」
「さぁ、あの子、自分のことあまり話さない子だから……」
「あなたに聞きたいことがあるんです……」
「ええ、私でよければ……」
「肝だめしのご経験はありますか?」
「……? ……え、ええ。学生のころ」
「何年前ですか?」
「5年前よ」
「粘菌関連の事件が起こったのは、何年前ですか?」
「……5年前よ」
奇妙な静寂が、二人のあいだを満たす。
視線で殴りあうような、白刃同士を向け合ったような、ひどく剣呑な雰囲気。
「なんで、陸緒のお父さんと……結婚したんですか? ずいぶんと歳が離れていますよね?」
「好きになったからよ」
「誰をですか?」
「……さぁ?」
-ハジマリハジマリ-
どうだったでしょうか?
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ではでは。




