盗っ人
これは遠い昔のお話――――――
日本ではないどこか遠くの国のお話――――――
ある街には盗っ人がおりました。
盗っ人は夜になるとお金持ちの貴族の家に忍び込んでおりました。盗っ人は宝石やお金を少し盗みました。
盗っ人はどんな鍵だって開けてしまいました。盗っ人は窓でも、扉でも、金庫でも、なんだって簡単に開けてしまいました。
盗っ人は真っ黒な服を着ていました。盗っ人は誰にも見つかることはありませんでした。
盗っ人は逃げるのがとても上手でした。盗っ人は誰にも捕まえられることはありませんでした。
盗っ人は子どもが大好きでした。盗っ人は両親も兄弟も親戚もおりませんでした。盗っ人は小さな小さな孤児院で育ちました。
盗っ人はお金持ちが嫌いでした。盗っ人は小さな頃、偉い貴族の子ども達にいじめられていました。
盗っ人は赤い色が大好きでした。盗っ人は孤児院で育てていたトマトが大好きでした。
盗っ人はお金をあまり使いませんでした。盗っ人は欲しいものやしたいことがあまりありませんでした。
ある日盗っ人は考えました。
盗っ人は貧しい子どもにおもちゃや洋服をあげようと考えました。盗っ人は小さな頃、あまり遊べませんでした。
盗っ人は盗んだものをおもちゃや洋服に換えました。盗っ人は楽しい気持ちになりました。
盗っ人は早速、子ども達におもちゃや洋服をあげようと考えました。盗っ人はたくさんのおもちゃや洋服を白い袋に詰めました。
盗っ人は白いヒゲをつけました。盗っ人は顔を覚えられることを恐れていました。
盗っ人は真っ赤な服を着ました。盗っ人は子供に怖がられないように自分の好きな色の服を着ました。
盗っ人は街の子ども達におもちゃや洋服を配って回りました。盗っ人は幸せな気持ちになりました。
ある日盗っ人はまた考えました。
盗っ人は喜ぶ子どもを見て幸せな気持ちになりました。盗っ人はまた子どもを喜ばせたいと思いました。
盗っ人はますます盗みを働きました。盗っ人はそれでも誰にも捕まりませんでした。
盗っ人は毎年決まった日に子どもにおもちゃや洋服を配って回りました。盗っ人は子ども達の人気者でした。
ある日盗っ人はへまをしました。
盗っ人は貴族に捕まってしまいました。盗っ人はころされてしまいました。
盗っ人はじごくにいきました。盗っ人はすごく後悔しました。
盗っ人はそれでも子ども達を喜ばせようとしました。盗っ人はじごくを飛び出しました。
盗っ人はそりにのって空を飛びました。盗っ人はもう盗みはしませんでした。
盗っ人はサンタクロースでした。
サンタクロース好きの方がいらしたら申し訳ございません。