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とある使い魔は言った。「あの鎧・・・。 シュユは邪神扱いされたいのかしら?」

夜。

子供分隊の子たちにセツナを紹介したところ、かわいい天使にやっと会えたと喜んでいた。

・・・妹も無邪気な子供たちが気に入ったようだ。

子供たちが帰ったあと、帰ってきたイリスとエルマにもセツナを紹介した。


「妹がいない寂しさでどこかから誘拐してきたのかと思ったわ。」

「そんなことしないよ・・・。」

「かわいらしい妹さんですねぇー。」

「ありがと!! 2人だってとってもかわいいよ!! ところでにぃに、使い魔ってどうやって探すの?」


2人の紹介は先に済ませておいた。


「行き倒れてる人に精霊ですかって声をか「何嘘教えてんのよ!!」 ・・・嘘じゃないでしょ?」

「そっ、そうだけど!! ・・・そうね、精霊はマナの多い場所を好むわ。 だからそういう場所、この近くだと保護区があるけどそこで探すのが基本ね。」

「なるほど!! 私もエルマちゃんやイリスちゃんみたいなかわいい使い魔が欲しいなー。」

「そうだねー。」


あのトンボは置いておこう。

精霊が皆、人から見て容姿が優れているわけではないのであまり期待されても困るけど、現実は現地で知ってもらうことにした。


「なんか良いよねー。 相棒、って感じがしてさ。」

「そ、そうかしら?」

「まあ、一緒に戦った事ないんだけどね。」

「えっ? そうなの?」


最近は2人とも十分戦力になったけど・・・。

イリスはアリアさんの親戚の清掃会社でハウスクリーニング(物理)を開始。

他の仕事で家一件丸ごとクリーニングという荒業を身に付けたお陰で予約がいっぱいだそうだ。

・・・エルマの話だと、イリスの青魔法の威力は並程度ではあるが精度は超一流らしい。

そのため、真似をしようとしても出来る人はかなり限られるし、そもそもそこまでのレベルの人がわざわざハウスクリーニングなんてしない、という理由から顧客を確保できているようだ。

一方、エルマはアーズダインで人気の魔法薬屋でオリジナルの薬を作っている。

野菜屋で働いていた時、余った商品で野菜ジュースを作っているのを魔法薬屋の店長が見てティンときたらしい。

・・・つまり何が言いたいかというと、2人をわざわざ狩りに連れていかなくても、むしろ連れていかないほうが傭兵団としては儲けがあるのだ。

しかし、僕というマナ供給器を得たことで2人とも精霊としての本来の力を手に入れ、その結果僕より遥かに多くの人の役に立っているという現実。

・・・いつの間にこんなことになったんだろう。


「・・・にぃに、遠い目をしてどうしたの?」

「ごめんごめん。 でも、2人とも家族みたいなもんだから相棒って感じでもないかな。」

「ふーん? でもそれもいいね!!」

「まっ、まあ、そうかもね。 ・・・ところでセツナはアリアが帰ってくるまではどうするの?」

「お仕事してお金を稼ごうかなーって思ってるんだ!!」

「2人で魔獣狩りに行こうと僕は思ってるんだけど、セツナはどうしたい?」

「それでいいよ!!」

「気をつけて行ってきてくださいねぇー。」

「・・・私も行くわ。」

「エルマちゃんも来てくれるの?」

「ええ。 実戦に私も慣れたいと思ってたし。」

「それは良いと思うけど、お店はいいの?」

「明日は休みよ。」

「そっか。 じゃあ3人で行こうか。」


・・・ちなみにセツナはエルマの部屋で寝ることになった。



翌朝。

いつも通り朝の訓練を行った。

エルマは実戦に向けてか、いつもより気合が入っているようだった。


朝食前。


「あっ、セツナ。 おはよう。」

「ふぅぁあぁーっ、おはよー。 ・・・そういえばにぃには訓練、とかいって朝早くから運動してたねー。」

「うん。 神格が上がると色々と出来るようになるし、基礎も忘れずに鍛えておかないといけないからね。」

「私もいつか頑張るよ・・・。」

「そういえばセツナは朝弱かったね。」

「生まれ変わったけどそこは変わらなかったんだよねー。」

「慣れの部分もあると思うし、明日から一緒にやらない?」

「うん!! やらない!!」

「・・・そっか。」


朝食後。

3人でギルドへと向かった。

依頼の数は普段より少し多く、選択の幅は広そうだった。


「このへんかなー。」

「なになに? 森の中の魔獣狩り、畑の近くの森の魔獣狩り、村の近くの森の魔獣狩り・・・って結局全部森に入るんじゃん・・・。」

「魔獣も妖魔も森とか山に多いんだよ。 湖は水源として重要だから守人がいるけど、他の所は手が回ってない所も多い。 だから、これは国、こっちは農場主、あっちは村長からの依頼って具合に管理責任のある人が狩人を雇っているんだよ。」

「ふーん。」

「シュユ、これはどう?」


エルマが指差している依頼は・・・妖魔討伐の依頼だな。

えっと、森に獣魔が出現した模様、頭数は不明、報酬は1頭に付き最低4シルバ。

場所は・・・トプロの近くの山、及びその周辺の森か。

トプロはこの街の北西にある町だったはず。


「いきなり獣魔狩りに行くのは危ないと思うよ?」

「あんたが守りなさいよ。 それに、セツナのレベルをさっさと上げないと色々と困るでしょ?」

「そうかも知れないけど・・・。」

「にぃに、行こうよ!!」

「セツナ・・・。」

「大丈夫だって!!」

「・・・2人とも、無茶はしないようにね?」

「当然よ。」

「もちろん!!」


受付に行き、依頼を3人のチームで受注した。

依頼内容など詳しくはトプロの町役場で聞くように言われたので、宿舎に一旦戻り依頼のことを伝え、装備を整えてからバイクに跨りトプロへと移動した。


1時間後。

トプロに到着。

道中何度か魔獣を発見したため、狩っておいた。

・・・コンビネーションは皆無だけど、個々の戦闘能力で何とかなった。

エルマは魔法使いのセオリー通り相手から一定の距離を保ちつつ魔法で迎撃し、セツナは素早く動けるブーツと腕力補正のガントレットを活かし大剣で攻撃しつつ相手の攻撃を回避するというちょっと無茶な戦い方をしていた。

・・・ちゃんと注意はしておいた。

町にはそれなりに人が多く、格好から狩りを目的としている人も多そうだった。

町役場へ行きギルドの紹介状を見せると、担当者なのか受付の方に呼び出された若い男性が依頼について説明してくれた。

簡単にまとめると、3ヶ月ほど前から魔獣が増え始め、最近は妖魔の目撃情報が増えているらしい。

大型の妖魔は今の所確認されていないが、獣魔は相当数いると見て間違いないため出来るだけ多く狩って欲しい、とのこと。

・・・。


「何でそんなになるまでほっといたのよ・・・。」

「い、いえ。 実はですねっ!?」


エルマの冷たい視線に担当者の方は気圧されているようだ。


「最近まであの山には近づけなかったんです。」

「どうして?」

「実はですね、あの山は霊獣であるルガーランが繁殖する場所として有名なのです。」


ルガーランは、鶴のような翼を持つゴールデンレトリバーのような霊獣。

体長は最大で6メートルほど、気性は穏やかで人を襲うことはまずないが肉食のため注意が必要。

渡り鳥のように季節によって各地を転々とし、繁殖期になるとマナの豊富な山の中腹に巣を作り子育てを行う。

風を操る緑魔法を得意とし、身体能力の高さや瘴気に蝕まれる事がないという特性から騎獣としての人気がある。

・・・あとで役場内のパンフレットを確認した所、こんな感じのことが書かれていた。


「この町はかつて凶悪な妖魔に襲われそうになった所をルガーランに救われた、という伝説が残っているため今でも彼らを神獣として扱い、その繁殖地であるあの山、ラブラ山及びその周辺を保護しているのです。」

「なるほど。」

「その繁殖期間中は管理者以外はどんな理由であっても立ち入りができないという規則なんですが、それが先週終わりまして。」

「で、その間に増えた魔獣やらの狩りが始まった、ということですか?」

「はい。 山の中腹以上にはルガーランたちの巣があるのでそこまで多くの魔獣はいないでしょう。 ただ、周りの森はルガーランたちが狩りを行ってはいても数が増えていました。」


・・・ルガーランの自然界におけるヒエラルキーは高いようだ。


「だから、街中に狩人のような格好の人が多くいたんですか?」

「はい。 強力な妖魔は確認されておらず、獣魔もシャドーボバックやシャドーバックルなど弱い種類が多いようなので、希望者はおかげ様で多く来て頂いております。」

「そのせいで報酬が減るということはないの?」

「勿論ありません。 ルガーランたちが来年も訪れてくれるよう、1日でも早く森に平和を取り戻したいのです。 ですから報酬は必要経費として全額規定どおりにお支払いいたしますよ。」

「そう、ならいいわ。」

「にぃに、早く行こうよー。」

「そうだね。」

「ではみなさん、ギルドカードをお渡しください。」


数分後。


「カード、ありがとうございました。 シュユ様、セツナ様、エルマ様の3人を1チームとして登録いたしました。 報酬を受け取る際にはもう一度皆様のギルドカードをこちらの窓口に提示ください。 なおこの役場は午後6時には閉館いたしますのでご注意ください。」


現在は午前10時過ぎ。

まだ時間が早いので3人分の昼食を買い、凍結箱に入れて森を目指した。


森の前に到着。

・・・人が多かったので徒歩で移動した。

見かけた人たちのうち、森に入るのが目的の人たちは装備を見る限り40人ほど、残りの人たちは森の近くにある街道を通り次の町へ移動することが目的だったようだ。


「セツナ、エルマ。 森の中にはもっと人がいるはず。 誤射しないよう、そしてされないよう気をつけてね。」

「分かってるわよ。」

「はいはい!!」

「何かな、セツナ?」

「されないためにはどうするの?」

「やっぱり声を出すことかな。 勿論、戦闘の音が近くでしている場合はそっちのほうへ行かないようにするのが1番だけど、仕方ないときは大声で存在を伝えるのが良いと思う。」

「なるほど!!」

「じゃ装備を整えて入ろうか。」

「おー!!」


と言ってもエルマはすでに鎧を身につけてるし、僕は鎧を纏うだけ。

セツナもブーツをすでに履いてるからガントレットを出すだけなんだけどね。


「・・・それ何?」

「天界で買った新しい装備だよ。 ウィクトリス。」

「ナニ? ダーリン。」

「喋った!!」

「魂がある・・・。 天界では生きてる鎧を売ってるの?」

「一部ではね。」

「ワタシハケッコウツヨイカラ、イキタママヨロイニサレチャッタノ。」

「かわいそうな子なんだね。」


・・・おそらくやりたい放題した結果だと思うけど。


「とにかく森に入ろう。 セツナが前、エルマが真ん中で左右を、僕が後ろを警戒ってことでいいかな?」

「いいわ。」

「おっけー。」

「よし。 とりあえず、地図にあるこの広場を目指そう。」


役場で貰った地図によるとここから20キロほど先に広場があり、狩人用の宿泊施設があるらしい。

・・・たどり着いた人から先着順で借りるので空きがなければ他の場所まで行かないといけないけど。


森に入って2時間ほど。

魔獣に何度か遭遇。

やっぱり町に近い側から狩られているため数が少ない。

・・・2人とも魔獣との戦闘にも、倒したときのグロさにもなれたようだ。


「手ごたえないわね。」

「今の所、ただの魔獣しかいないからね。」

「にぃに、バイクで一気に行こうよー。」

「駄目だよ。 魔獣もいつか獣魔になっちゃうし、どこかに妖魔が隠れてるかもしれない。 この依頼は妖魔や獣魔、魔獣の殲滅が目的なんだし見逃さないよう丁寧に索敵しないと。」


・・・ウィクトリスが索敵してるから見逃すことは相手が神とかでない限りありえないんだけどね。

今回の依頼で森での索敵や戦闘になれて欲しいし、セツナには仕事の大変さも知って欲しい。


「はーい・・・。 あ!! 魔獣だ!!」

「穿孔弾!!」


穿孔弾は土魔法のロックパレットを黒魔法で変化させたもので、通常より貫通力を高めてあるらしい。

エルマによって撃たれた岩の砲弾は、木々の隙間を縫い魔獣化したボバックを撃ち抜いた。


「あっ、ずるい!!」

「誰が倒しても一緒でしょ?」


チームで登録した場合、報酬は山分けになる。


「そうだけどさー。 魔獣を倒したら経験値が貰えるんでしょ?」

「・・・マナの事? それならセツナが一番得してるはずよ? 先頭にいるんだし。」

「そうなの?」

「うん。 放出されたマナは近くにいるほど多く吸収する事ができるんだよ。」

「そうだったのかー。 でもそれでいいの?」

「先頭だと危険も多いし、マナを多く貰えるのは普通だと思うわ。 それに私はシュユからマナをいっぱい貰ってるし、シュユも今更魔獣を狩っても強くはならないわ。」


この世界では、一般的にレベルが100を超えると急に魔獣を倒してもレベルが上がらなくなる。

・・・色々と説があるらしいけど今の所、理由は不明らしい。


「そうなの? でも上手く出来てるんだねー。 危ない所の方が経験値が多いなんて。」

「まあね。 じゃ進もうか。」

「おー!!」


それからしばらく、魔獣との散発的な戦闘を繰り返した。

おそらく多くの狩人が森に入ったせいで魔獣の群れが攻撃され、生き残った数匹と遭遇していたんじゃないかと思う。


そしてついに宿舎に到着した。

広場の周りには塀があり、入り口には人がいた。

依頼で森に入っていることを伝えると宿舎に空きがあることを教えてくれたのでお礼を言って中に入った。

広場はそれなりに広く、端のほうに川が流れている。

・・・宿舎がいっぱいのときは広場にテントを張って泊まる人も多いらしい。

宿舎は3階建てのログハウスで、最大30人ほどが宿泊できるそうだ。

部屋を取り、時間を見ると昼過ぎだったのでせっかくだし食堂で昼食を取ることになった。


「うむ!! このステーキ美味しい!!」

「そうね。」


森の中にあるせいか、森の獣を材料にした肉料理が多かった。


「セツナ、疲れてない?」

「ん? 平気だけど?」

「なら良いんだけど。 無理はしないでね?」

「平気だよ!! こっちの体は丈夫だから!!」


・・・やっぱり入院していたときのことを思い出してしまう。


「私がいるんだから平気でしょ? それよりもさっさと食べて仕事に戻りましょ?」

「そう、だね。」


エルマは色々な回復魔法が使えるし、何かあっても大丈夫か。

よく考えなくても、セツナは神なんだし平気なのは知ってるんだけど・・・。

きっとすぐに慣れるだろう。


昼食を終え、森の管理をしているレンジャー的な人の話を聞いた。

その人によると、山の麓まではここから10キロほど。

その向こうには広大な深い森があり、その先に平野を挟んでデュイスという町がある。

そちらからも依頼で人が来ているので、山に近い森が獲物を一番見つけやすい、とのこと。

・・・人も多いはずなので事故にだけは気を付けないといけないな。

3人で話し合った結果、山の麓まで行きそこから山に沿って進むことになった。




お読みいただきありがとうございます。

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