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兄ちゃん、まじゴッド

神社を後にした僕は、帰宅し昼食をとった後、バイトに出かけた。

そして夜。夕食を取り数学や英語の和訳など学校で出された課題を片付け、風呂に入る前にトレーニングを行った。

リアルアトラスのあだ名は伊達じゃないのだ。

実用性重視の筋肉は祖父や父の考案した肉体改造計画によって得たものであり、すでに僕の拳は鋭さと重さを両立していた。

祖父曰く「もうイノシシ狩りに銃は要らない」そうだ。

祖父は元々銃ではなく五寸釘で狩りを行い、かつて貧しい食卓に肉と言う華を添えていたそうだが。

因みにこの祖父は母方の祖父であり、現在祖母と共に我が家に同居中である。

ちなみに、父方の祖父はアメリカ人でグリズリーと相撲を取っていたなどユニークなアメリカンジョークを聞かせてくれる。

それなんて金太郎? 鉞の変わりにトマホークでも持ってるの?と言ったら笑っていた。

ちなみに、父方の祖父の胸には大きな引っかき傷がある。 何の傷かは聞いたことは無い。

トレーニング後、風呂に入り、床に就くとすぐに眠気がやってきた。

明日も休みだからという理由により平日以上のしごきを祖父に受けた体は眠りを欲していたのである。




「おきたまえ。 少年。」


心地よい眠りから覚醒させたのは、同い年か少し年下のように見えるがえらく渋い声の少年であった。


「・・・どちらさまでしょうか。」

「君が佐藤太一君かね?」

「そうですけど・・・。」

「うむ。 我が名はゲンコウ。 君がお参りをしている神社に祭られている兄妹神の兄のほうであり、君の願いをかなえるべく、君の夢の中へと現れたのだ。」


・・・昼間のあれはガチだったようだ。 そして仕事が速い。 そこにシビ以下略。


「!! ということは妹を助けてくださるのですか!?」

「近いぞ。少年。」

「すいません。テンションが上がってしまって。」

「うむ。 リアルアトラスに詰め寄られて喜ぶ趣味は無いのである。」


絶対ピンクジャージの兄ちゃんだな。 あの少女がおそらく事の顛末を伝え、ちゃんとお願いを聞いてもらったのだろう。

話の流れ的に、まず間違いなく(ピンクジャージ)も神様でシスコンの最高神補佐がこのゲンコウ様ということか。

・・・明日さい銭を増やしに行こう。


「で、少年よ。 叶えたい願いとは君が溺愛している妹の治療、で間違いないだろうか?」

「はい。 不治の病で余命もあとどのくらい残っているのかさえ分からないのです。 一刻も早く治療をお願いします。」


そういって僕は頭を下げた。


「ふむふむ。 君の妹の名は佐藤千枝であっているかな?」

「!? はい!!」

「なるほど。 確かに人に治せる病ではないようだ。 しかし、それは君が支払う対価もまた並の人に払えるものではないということも意味している。 分かるかね?」

「・・・はい。」

「よろしい。 では契約内容を発表する。 まず君が得るものは、なし。 君の妹は健康な体と最低でも六十年の寿命を与える。 但し事故や事件等に巻き込まれ重傷を負うなどこの世界で常識的に人が死に至るような状態になった場合、この限りではない。 これで問題は無いか?」

「はい。」


十分すぎる。 しかし、対価を払えるのだろうか?


「うむ。 次に君が支払う対価を発表する。 それは君の全てだ。」

「すべて・・・とは?」

「すべて、だよ。 肉体も、魂も、記憶、記録など君が持つ全てのもの。 この世に存在したと言う事実さえ失われる。 親も妹も誰一人として例外なく君と言う存在を忘れる。 神である私や妹はさすがに覚えてはいるが。」


その対価は、あまりにも軽く、そして、あまりにも重かった。

しかし・・・


「分かりました。 その契約を結ばせてください。」

「・・・うむ。 君ならそういうと思っていた。 ではここにサインを。 そして君が消える瞬間を書き込みたまえ。」

「消える瞬間・・・ですか?」

「君の結ぶ契約は任意のタイミングでその効果を発動できる。 もちろん、妹君が生きている間に限られるが。」

「では、十二月二十六日になった瞬間。 今年のクリスマスが終わった瞬間に。」

「・・・うむ。日付を書き込めたようだな。 では、ゲンコウの名の下にこの契約を認め、神業の行使をここに宣言する。 以後、契約内容の変更はできぬ。 良いか?」

「もちろんです。」

「うむ。 ではもう会うことも無いだろうが、少年、後顧の憂いの無いよう残された時間を有意義に過ごすとよい。 ではさらばだ。」



こうして僕は残された最後の時間を普段通り過ごし、この世から消えた。

シスコンだから力を貸したのです。

誰にでも奇跡を起こすわけではありません。

by ゲンコウ

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