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ある使い魔は言った。「出番がないわ!!」

あれから40年・・・ではなく2週間。

毎日あくせくと働き、訓練しの充実した日々を送っていた。

しかし今日。 彼女が襲来した。

それはその日の昼前。

宿舎にカシアさんが現れたのだ。


「こんにちは。」

「うん? どちらさまでしょうか?」

「こちらがクローム傭兵団の宿舎で間違いないでしょうか?」

「そうだけど?」

「私はカシア・クアドラドと申します。 アリア様はどちらに?」

「アリアさんは依頼で夜まで帰ってこないけど? 入団希望・・・ですか?」

「はい。 あと、シュユ様は?」

「・・・シュユは、たしか自警軍の依頼で夜までいないわよ?」

「そう・・・ですか。 ではいつ伺えばよいのでしょう?」

「えっと・・・。 明日の朝かな。 たぶんアリアさんは夜遅くなるはずだし。」

「そうですか・・・。 では、出直すことにします。」

「ごめんなさいねー。 ・・・ところで、シュユの知り合いなんですか?」

「ええ。 結婚を前提にお付き合いしたいと思っておりますわ。」

「・・・え。」


・・・こんなやり取りが今朝あったらしい。

で今は夜。

夕飯後にオリビアに話を聞かされた。


「でさ、あの人誰なの?」

「たしかザンドでも有名な豪商の5番目の娘さんだったかな? とある事情で僕に惚れたらしくてね。 プロポーズを断ったら傭兵団に入って傍にいたいって言われてさ。 親とかを説得できたらここに来てください、って言ったから来たんだと思うけど。」

「・・・なんで断ったのに呼んだのよ?」

「ん? 別にカシアさんが駄目なんじゃなくて、知らない人とは結婚できないだけだし。 それに自分のことを知ってもらいたいっていわれたからさ。 カシアさんは腕が立つらしいし、チーム的に問題ないかなって。」

「・・・あんたはさ、あの人のことどう思ってるの?」

「うーん。 僕は悪い人じゃないと思うけど・・・。 恋人でもないのに結婚は無理だって言ったらわざわざここまで来てくれたし、男としては嬉しいかな。」

「そう・・・なの。」

「でも、かといって付き合いたいって訳でもないけどね? 今はそれどころじゃないし、そもそも天使だしこの世界に永遠にいるとも限らないしさ。 真剣にお付き合いするならある程度その人のことを知って好きになってからでないと。」

「ふ、ふーん。 そうなんだ。 ・・・で、こっちに来て良いなって思った人とかいないの?」

「うーん。 オリビアは良いな「はあっ!?」 何?」

「な、何であたしなの?」

「なんとなく?」

「何よそれ・・・。」

「正直さ、恋とか分かんなくて。」

「・・・え? 理由は?」

「実はさ、僕、シスコンなんだ。」

「・・・は?」

「だから妹より好きかって言われると正直微妙な人ばっかでさ。 好きな人って少なくとも家族を超えてないと駄目でしょ?」

「ま、まあそうね。 パパほどじゃないけど好きって人を恋人にしたいとは思わないわね。」

「でしょ? 好きになった人はいたけど妹を超えた女性が今までいないんだよね。 だからオリビアの努力家なところとか、優しいところとか良いなって思うけど、妹ほどではないってこと。」

「・・・ふーん。 でさ、妹さんのどんな所が好きなの?」

「全部だね。」

「・・・例えば?」

「まずはかわいい所だね。 見た目は元よりご飯を食べる姿とか、自分で体を拭いて欲しいって言ったのに照れる所とか、漫画雑誌1冊で凄くうれしそうな顔してくれるとか、あと「もういいわ。」 そう?」

「普通妹って面倒見ないといけなくて鬱陶しくなるもんじゃないの?」

「それは愛が足りないね。」

「え? 愛?」

「そう、愛だよ。 その人の性格にもよるけどさ? 甘えてくる妹が可愛くない兄なんていないね。 照れ隠しでも鬱陶しいなんて言う奴は愛がないね!!」

「で、でも私もお兄ちゃんがいるけどさ、そんな感じじゃないわよ?」

「そんなことない・・・はず。 世界とか種族による差はないとは言えないけど。」

「ふーん。 ・・・で、カシアさんのことはどうするの?」

「アリアさん次第かな? 入団するなら家族みたいなもんだし、入団しないにしても僕のせいで来ちゃった人を無下にはできないかな。」

「そうじゃ、なくてさ。 プロポーズは断ったんでしょ? ・・・気まずくないの?」

「別に? カシアさんはそれを承知できてるみたいだし、僕だけ変に意識するのもおかしいでしょ?」

「・・・そうかもね。 ・・・でさ、シュユ。」

「何かな?」

「私もさ、あんたのこと、割と好きだよ。」

「ありがと。 僕も割と好きだよ。」

「・・・ふふっ。 ありがと。 ということで、カシアさんには負けないから、覚悟してね?」

「ふっふっふっ。 妹を超えることが出来るかな?」

「超えて見せるわよ? シュユからプロポーズさせてみせるから。」

「それは楽しみだね。 でも、いいの?」

「何が?」

「僕が下級神になったら、不老不死になっちゃうけど?」

「うーん。 レストも寿命は長いほうだけど神ほどじゃないし・・・まあ、結婚してから考えるわ。」

「そう? じゃこれからも色々とよろしくね。」

「こちらこそ。」


こうして2人目の女性に攻略宣言されました。

・・・オリビアは隠す方かと思ってたけど。

寿命の差が極端な種族同士での結婚ってどんな感じなのかな?

葛藤とかあるんだろうか・・・。

・・・まあ、神になってから考えることにしよう。



で、翌朝。

いつものトレーニングをした。


で、朝食後。


「いいよ。」

「本当ですか!? ありがとうございます!!」


カシアさんの傭兵団入りがあっさりと決定しました。


「ただし、いくら実力があっても新人扱いは変わらないけど、いいね?」

「もちろんですわ。 で、私もお部屋を頂けるのですか?」

「そうだね。 母さん、使える部屋はまだあったよね?」

「ええ、あるわよ。 カシアさん、お荷物はそれだけ?」

「いえ、宿にまだありますわ。」

「そう。 じゃシュユ君、手伝ってあげてね?」

「はい。 どこの宿ですか?」

「近くの宿ですわ。 たしか東地区第2宿舎でしたわ。」

「高い所じゃないんだ。」


この街は仕事などで数多くの人が一時的に留まるので各地区に2,3の国営の宿がある。

食事もなく部屋も広くないが、1泊5ルーバ(約500円)で泊まれる。

さらに、洗濯や入浴なども格安で最低限の設備が使えるため人気が高い。

・・・魔力式の洗濯機があるため田舎から出てきた人たちには密かな観光名所にもなっている。 


「ええ。 ある程度お金を父にいただきましたけど、自立する為には節約しないといけませんから。」


カシアさんのお父さんは、条件付きで許可したらしい。

生活費等は自分で稼ぐ、最低でも半年に1度は家に帰る、手紙は2週間に1度出す、という条件で。


「すぐ取りに行く?」

「はい。 では参りましょう。」

「じゃ、行ってきます。」


荷物は大き目のキャリーバッグ2つ分くらいだった。

荷物をカシアさんの部屋に運ぶと、みんなが部屋を整備していてくれた。

女性の部屋だから男は出て行け、と言われ荷物を置いて部屋を出てしばし待った。


20分後くらい。

居間で子供たちと遊んでいるとカシアさんたちが出てきた。


「じゃ、改めて。 カシア、ここにいるみなが今日から家族だ。 よろしく。」

「「「「よろしくお願いします。」」」」

「は、はい!! よろしくお願いいたします!!」


これがクローム傭兵団の慣習である。

僕やイリスたちも同じようにしてもらった。


その後。


「シュユさん。」

「なんですか?」

「私もギルドにメンバー登録したいのでついて行ってもよろしいですか?」

「いいよ。 じゃ、身分証明書を忘れずにね。」

「はい。」


10分後位。

ギルドに到着。

カシアさんがギルドカードを作っている間に僕とカシアさんが請ける依頼を見る。

カシアさんは高級な杖は持っているが防具などはないため、討伐系は避けるべきだな。

・・・そういえば、回復魔法は得意って言ってたな。


この世界の杖は魔法記憶装置のようなもので、通常魔法を登録すると必要な魔力を込めることで詠唱なしで発動できる。

ただ、基本的に値段が高い。 1つしか記録できない杖でも1ゴルドはする。

・・・まあ、魔法のランクは無視して登録できる為1つでも十分便利だけどね。

とにかく、装備を整える為の資金は他の仕事で稼ぐのが良い。


「シュユさん、登録できましたわ。」

「よし。 じゃあ早速仕事を請ける?」

「はい。 依頼を見ていらしたようですけどお勧めとかはありますの?」

「これなんかどうかな?」


僕が選んだ依頼は自警軍の出す依頼の1つ、訓練中の負傷者の治療である。

この仕事はそのまま、訓練中に怪我をした兵士や依頼できた人を治療するというもので、有事の際は衛生兵の仕事をする医者の魔力を温存する為に依頼を出している。

特に優れた回復魔法を使える人は講義の依頼も来るし、魔力をお金に変える方法では効率は良い方である。


「大変そうですわね・・・。」

「良い人たちばかりだし治療だけなら楽だよ? 多分。」

「・・・では、請けてみますわ。 ・・・シュユさんも着て頂けませんか?」

「いいけど、僕は稽古相手の方になるからほとんど別になるよ?」


相当な大怪我以外は訓練終了まで自分でなんとかするのがここのルールである。


「そんな・・・。 でも自立しないといけませんものね。 では、それでもいいのでお願いいたしますわ。」

「そう、か。 じゃ昼からになるからそれまではどうします?」

「シュユさんはどういたしますの?」

「うーん。 工事も終わったみたいだし荷物の配送ですね。」

「私にも、出来ますか?」

「えっと・・・土地勘が無いと無理ですね。」

「そうですか・・・。 ではお仕事ではなく街を覚える為に同行させていただくことは出来ますか?」

「それはいいですけど、ついてくるだけでも結構大変ですよ?」

「構いませんわ。」

「分かりました。 じゃ、一応依頼主の人にも許可とってからでいいですか?」


その後、許可も下り午前中は荷物の配送をした。

カシアさんは記憶力が良いらしく終わるころには大まかに施設の位置をを覚えたようだった。


昼食後。

訓練場へ行き、僕はいつもどおりに着替えた。

カシアさんは医務室へ行き、そこで仕事内容を教わるそうだ。


訓練終了後。

相変わらず訓練はシビアだった。

お互いにパターンを掴み始めた辺りからは、精神的に疲れる攻防になるため勉強にはなるが良い感じに負けたくなる。

・・・連戦だと疲れる。

が、手を抜くと罰ゲームがえぐいことになるというジレンマ。

ぞろぞろと医務室へ行き、みんなで治療を受けた。

カシアさんはあっという間に治療してしまい、軍医にならないかと真剣に頼まれていた。


夜。

夕飯後にアリアさんに招集された。


「さて、話とは依頼のことだ。」

「私も参加できるんですか?」

「カシアでも大丈夫な依頼さ。 実は帝都の方で24日後に大規模な妖魔討伐を目的とした森の探索が行われる。 ここからだと17日程度かかる場所にある街、カンノを拠点として討伐隊を編成し獣魔と妖魔を殲滅するらしい。 そこで、この街の全てのチームに参加要請が来ている。 カシアは治療班、私たちは索敵班に応募する予定なんだけど、みんなは良いかい?」

「報酬はいくらなんですかー?」

「最低2ルード、上限は無し。 但し策敵班は最低3人のチームを組み、報酬はチームに払われる。 治療班は治療した人数で報酬が増える。 ただ、治療班は何人いても1チームだから誰が治療してもみんな報酬は同じだよ。」

「なんで索敵なんですか? 作戦的には前みたいに討伐班も必要なはずですけど?」

「それは簡単なことさ。 討伐は帝都から来た軍が担当するから、さ。」

「・・・僕たちは必要なんですか?」

「帝都の軍も無限に兵がいるわけじゃないからね。 索敵に人を裂くぐらいなら雇った方が楽だろうね。 帝都中で軍に妖魔討伐部隊の出動要請は出てるだろうし、討伐隊の編成だけでもカツカツだろうさ。」


こっちにきてからしばらく経つけど新たな妖魔や獣魔の討伐依頼はこの街だけで日に数件ある。

国全体で見れば100では済まないはずだ。


「参加予定は、私にオリビア、シュユ、カシアで登録して問題ないかね?」

「「「はい。」」」

「よし、じゃあシュユ。 バイクで4人いけるかい?」

「4人ですか? ・・・いけるとは思いますけど。」

「じゃあ最速で何日かかるか明日から調べてもらっていいかい? 報酬はちゃんと払うからさ。」

「バイク、とは何でしょうか?」

「ああ、シュユの神業で出せる乗り物だよ。」

「まあ!! 天使の騎馬に乗せていただけるのですか!?」

「んー。 騎馬、ではないかなー。」

「変な自動車みたいなもんだね。」

「自動車? たしかに4人乗れそうではありますけど・・・。」


やはり自動車の地位は低いようだ。


「まあ、乗ってみれば分かるさ。 快適だし何よりタダだからね。」

「・・・魔力は消費しますけど。」

「すぐ回復できるんだからいいでしょ?」

「まあ、そうだけどさ?」

「じゃあよろしく。 その結果次第で前後の依頼を考えないといけないからね。 しっかり頼むよ?」

「・・・了解です。」


大変そうだな・・・。

普通に行って17日だと、どのくらいかな? 最速だと1日で行けそうだけど、操縦が難しいんだよね。

ほぼ自動操縦だけど。

まだ試していない目的地まで勝手に進むシステムは可能かやってみようかな。



翌日。

朝食後に目的地を地図で確認し出発。

試してみたけど勝手に目的地を目指すシステムは駄目だった。

・・・線引きの基準は依然不明である。

不審者扱いされないよう都合の良い結界を張りカンノを目指す。

カンノは帝都近くの街で規模が大きい為見つけやすそうだ。


夕方。

カンノに到着。

・・・早いな。

神格のおかげなのか、使い慣れて性能を引き出せるようになったのか前よりも最高速度は速くなった気がする。

このまま引き換えすとアーズダインに着く頃には門は既に閉まっているはずなので泊まることにした。

カンノはザンドとアーズダインの中間くらいの雰囲気の街で軍本部と商業の中心地のある帝都が近く、いろんな人たちの活気であふれていた。

この街の南は鉱山があるため、鍛治職人も多いらしく、武器や防具を店で見てみると変わったものも多かった。

ただ、精錬工場は鉱山近くの街にあるため、インゴットの状態でこの街を中継し帝都へと運ばれるようだ。

また、食料品も多く種類も豊富だった。 僕は料理がほぼ出来ないので加工品を見て回ったが食べ方や味の知らないものばかりで楽しかった。

とりあえずまた来るのでお土産は無しにして個人的に食べたいものを買った。

その後、取っておいた宿には食堂が無い為露店で買い食いをした。

なにかをつけて焼いた鳥や揚げた魚なんかを食べてみたけど、味はインド料理みたいだった。



翌朝。

部屋で軽く体を動かすくらいにして宿を出た。

露店で食べた朝食はケバブのようだった。

門を出てアーズダインを目指す。


昼過ぎ。

到着。

宿舎に帰ったけど誰もいなかったので部屋の掃除をしたあと、中庭にある訓練場で1人訓練をした。


夜。

夕飯後にアリアさんに半日程度でいけることを伝えた。

話し合い、念のため期日の3日前に出発することを決めた。



お読み頂きありがとうございます。


キャラが増えて空気になるキャラが出てしまってますね・・・。


主人公目線で進めていますが外伝的なものも書いてみるかもしれません。

いつか。

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