ある傭兵は言った。「他の世界って凄いんだなぁー。」
前回までのあらすじ、勇者王の気持ちが分かりました。 以上。
ググロのコアは胸にあるらしく、本来は頭を潰しても倒せないらしかった。
にもかかわらず、ハンマーの1撃で倒せたのは前に撃った流れ星(技名にした。)でコアを損傷していたか、再生するだけのマナを既に失っており、傷口からのマナ流出を止められずに死んだかのどちらかだろうという話になった。
僕の腕は骨折していたらしく、筋肉もボロボロで治してもらうのに大分時間を要した。
・・・治してくれた2人にはマナ一発をプレゼントした。
その後、腕はしばらく使わないほうが良いと言われたので、カミロに運転を頼み街を目指した。
「そういえば、あの紫色の瘴気みたいなのも神業なのか?」
「あ、私も気になってました。」
「・・・たぶんね。」
・・・鬼神の加護が発動していたんだと思う。
あの時は、まるで流れ星の使い方や、強化の使い方を思い出したような感覚だった。
おそらく鬼神の加護は、みんなを守りたいという僕の気持ちを貫く為の力を与えてくれたんだと思う。
発動条件は、守りたいと強く思うことなのかもしれない。
「でもさ、あの技凄かったな・・・。 流れ星、だっけ?」
この世界に星は存在するが、流れ星という現象は起こらない為言葉も存在しない。
「そう。 僕の生まれた世界では夜空に流れる星を流れ星って言ってね、そこから取ったんだ。」
「・・・天使様の世界ではあんなものが空から降ってくるんですか・・・。 通りで強いはずです。」
・・・勘違いしているようだ。 まあ、別にいっか。
夜。
目的地ザンドに到着。
が、門が閉められており中に入れない。
「おーい!! 何で門が閉まってるんだー!!」
メンバーの1人が声をかけた。
「ググロが出たそうだ!! この街に向かってるらしくてな!!」
「ああ!! 悪いが門は開けられない!! 結界はまだ張ってないから塀を飛び越えられないなら西の町に行ったほうが良い!! すでにヘビを山ほど連れてきているらしいからな!!」
上から顔を出した自警軍の男性2人が大声で伝えてくれた。
「そいつらなら!! この天使様と俺たちで討伐したぜ!!」
「なっ!? 天使様!? 本当か!!」
「一応!!」
大声で伝えた。
「すまないが、証明できる物を出してくれないか!! 疑うわけじゃないがこの門はそう簡単に開けてはいけないんだ!!」
バイクで門の上の見張り小屋のような所まで上がり、天界のギルドカードを見せた。
・・・2人は驚いていた。
「これをギルドに持っていって読み取ってもらえれば、少なくとも僕が天使であることは分かるはずです。 その間に彼らを中に入れてもいいですか?」
わざわざ門を開けなくても、バイクで2人ずつ中にいれれば良いため、別に信じてもらう必要がないことに気付く。
「い、いえ!! 十分です!! おい!! 門を開けろ!!」
「は、はい!!」
僕が天使であることを信じてくれたようだ。
・・・手間をかけさせて、なんか悪いことしたな。
「ありがとうございます。 ただ、ググロの撒き散らしたマナで魔獣が活性化してると思います。 彼らが入ったら再び門を閉めてください。」
「はい!! 了解です!!」
言わなくても分かってると思うけど一応ね。
アーズダインやここザンドでは夜11時から朝5時までは門が閉められる。
ただ、今回のような非常時にはその限りではないけどね。
・・・でも、あの連中は僕たちが討伐できるとは思わず、さっさと逃げ込んで門を閉めさせたのか?
念のためなのか、はなから信用してないのか、どちらにしても僕たちが討伐に失敗していたらここで中に入れず、死んでいたかもしれない。
いや、依頼は護衛だ。
時間稼ぎ後に、僕たちが逃げてくるのを待っていたがなかなかこないため、しかたなく門を閉めたのかもしれない。
「すいません。」
「はい。 なんでしょうか?」
「この門はいつごろ閉められたのでしょうか?」
「えーっと、夕暮れ時に霊獣車と連れの兵士たちが駆け込んで来まして。 しばらくすると伝令で妖魔ググロが魔獣を引き連れて街に接近しているため、近くにいる人を中に入れた後、すぐに門を閉めるようにとの命令が来ました。 おそらく、霊獣車に乗ってきたお偉いさんが閉めさせたのだ、とみなで話しておりましたが・・・結果的に、閉めた後に来た連中には悪いことをしましたな・・・。」
「そうですね・・・。」
「我々も迎撃準備をしていたのですが、人員不足のためどうしようかと話し合っていた所だったので本当に助かりました。 ありがとうございます。」
そういってこの門の責任者らしき男性は頭を下げた。
「いえ。 実は僕たちはその霊獣車の護衛の依頼を受けていたのです。」
「護衛、ですか?」
「ええ。 ググロと魔獣の群れに遭遇し、霊獣車と兵たちの退路を7人で守ってたんですがどうも霊獣車が狙われていたようで・・・。」
「兵たちが攻撃を?」
「いえ。 彼らは車と妖魔の間を移動していただけです。 妖魔の性質にあまり詳しくないのですが、ググラにはそういった性質が?」
「・・・いいえ。 妖魔や魔獣はマナに惹かれます。 しかし、それよりも他の生物、今回であればあなた方を発見した時点でそちらを優先するはずです。」
「・・・妖魔を人為的に操る方法があるそうなんですが?」
「はい・・・。 いや、いいえだと思います。 確かにかつても妖魔や魔獣が不可解な行動を取ることがあり、邪神の加護によって誰かがそうさせた、という話はありました。 しかし、その力を実際に持つものは少なくとも公にはされていません。 しかし、天使様が持つような神業や神術にそういったものがあっても、邪神によって邪なものにその力が渡されていても不思議ではありません。 ですから、現段階では、いいえ、ですが可能性は十分にあります。」
「そうですか・・・。 そういえば、霊獣車に乗っていたのが誰か、ご存知ですか?」
「護衛の仕事なのに、ご存じないのですか?」
「・・・ええ。 鎧にも車にも家紋の類どころか、特徴さえありませんでしたし、隊長らしき人物に聞いても教える必要はない、と言われました。」
「・・・そうですか。 私たちの間ではビスト帝国の王族か、それに近い人物ではないかという話になっていましたが・・・。」
「なぜ、そう思われたんですか?」
「ひとつは、あの霊獣です。 あの霊獣はビスト帝国でも将軍など高位の軍人でようやく手が届くようなものです。 たしかバウトとかいう名前でしたか。 毛色は異なりましたがあの角と爪は間違いなくバウトでした。 おそらく、目立たぬように毛色を変えたのでしょう。」
バウトは虎と犀の中間のような生物で、体と角が犀、他が虎のようで毛の色は車を引いていたのはこげ茶色だったが、本来は赤らしい。
爪はスパイクのように地面を掴み、大型バイクほどの大きさの体でキャンピングカーのような車を引いていた。
「もうひとつの理由は車です。 あれは、多重結界を魔法職の力を借りずに展開できるという最新鋭のものです。 見た目は一般的なものに近づけてありましたが、隊員の中に詳しいものがおりましてな。 間違いない、と。 バウトが引く最新鋭の霊獣車。 であれば、乗っているのは最重要人物しかありえません。」
「で、王族ではないか、と。」
「はい。」
なるほど。 門を閉めろ、と命令できたことも考えれば正解である可能性が高い。
・・・まあ、何でもいいか。
今はさっさと眠りたい。
門番の人に礼を言った後、7人で依頼主を探すことになった。
報酬を貰ってないから当然ではあるけど、さっきまでぐったりしていた人たちとは思えない怒りっぷりだった。
街中で霊獣車の行方を聞き、ある大きな屋敷にたどり着いた。
門番がいたので誰か呼ぶように言うともう遅いから明日にしろと横柄に言われた。
・・・やばいよ。 プチッと音が聞こえた気がする。
「おい!! 俺たちは正式な依頼を受けてここまで来たんだ!! 報酬を請求するのは正当な権利だろ!! なんならギルドに話を持っていってもいいんだぞ!!」
さすがにそれはマズイと思ったのか、門番1人を中に入れ話を通したようだ。
数分後、隊長らしき例の人が出てきた。
「報酬はこれだ。 受け取ってさっさと帰れ。」
きっちり頭数で割った報酬が支払われた。 が・・・。
「門を閉めやがって!! 俺たちが逃げてきたらどうするつもりだったんだ!?」
「護衛対象に守って欲しかったのか?」
「なっ、なんだと・・・。」
「もういいでしょ!! みんなでご飯でも食べに行こうよ。」
面倒なことをされる前に帰りたい。
「シュユは・・・それでいいのか?」
「常に神は見ている。 こういえば僕が言いたいことは伝わるかな?」
「・・・こいつらのやったことはいずれ自分たちで償うことになる、ってことか?」
「そうだね。 ・・・神は優しいです。 けど、どんな人でも救うなんて都合のいい神はいないんですよ? それだけは覚えておいてください。」
「・・・覚えておこう。」
天使からの脅しは効果があったようだ。
6人もその様子を見て拳を降ろしてくれた。
その後、全員で食事を取った。
・・・あれはやりすぎだ、と流れ星を撃った時下にいた4人には怒られたけど。
食事代は全部僕が出した。
討伐もその後の治療でもみんなに迷惑をかけたから、と言ったら
「あ、そう?」
って感じであっさり僕の奢りになった。
・・・少しくらいは出してもいいんだよ?って言いそうになったが堪えた。
店を出てからは、空いている宿を探した。
宿はバラバラになったが全員部屋を取れた。
部屋に入り、体を拭いた後すぐに眠りについた。
翌朝。
ギルドカードをチェックすると、ググロを倒したことでレベル117に、最大MPは1773になっていた。
が、それ以外にはスキルの熟練度が上がっていたくらいで、新たなスキルはなかった。
? そういえばレベルの上がり方がおかしい。
最初はMP500で50レベル上がったのかと思ったのに、今のレベルは116だ。
MPを考慮すればレベルは最低でも200を超えているはずなのに・・・。
今更気付くのもあれだけど。
天界に戻ったらクイナさんに聞いてみようかな。
給料で防具を揃えたいし、あと半年ぐらいは戻るつもりはないけど。
その後、軽い運動をしてシャワーを浴び、宿の食堂で朝食を頂いた。
ちょっと高い宿だったので朝ごはんもちょっと豪華だった。
朝食後。
どうしようかな。
ギルドでアーズダイン方面の仕事を探そうかな。
それともすぐに帰ろうかな。
と迷いながらお土産探しをしていると声をかけられた。
「あなた様が天使様ですか?」
「・・・どちら様でしょうか?」
「とあるお方が天使様に是非ともお会いしたいそうでして、私が探しお連れするという任を受けております。 もちろんお礼はさせていただきますので。」
「とある方とやらがどこの誰かは知りません。 ですが、名も明かさぬ人のためにわざわざ時間を割くほど暇ではありませんので。 では。」
「お待ちください。 天使様をお連れしないとどんな目にあうか・・・。 この通りでございます。 どうか。」
男性は深く頭を下げた。
「・・・残念ながら、天使は誰にでも慈悲深く接する義務はありませんので。 そのとあるお方がどうしても会いたいと言うのであれば、本人が来るべきではないですか? それとも、わざわざ挨拶する価値もない・・・と?」
わざと煽ってみた。
昨日の、とある、要人の近衛兵の振る舞いを思い出し、気分は良くなかった。
「滅相もございません!! ですがそのお方は事情がありまして、直接会いに来ることが出来ないのです。」
「なるほど。 で、会ってどうなさるんでしょうか? 話し相手にでもなれ、と?」
「それは・・・私も存じ上げません。 ただ、お連れするように、としか。」
この展開で起こり得る未来は・・・。
・拉致、監禁、解体などバイオレンスなやーつ。
・天使様、力を貸して!!
のどちらか、かな?
・・・前者だと困る。
どうしよう。 まじで断りたいけど、邪神化フラグも立ってしまう。
・・・覗くだけ覗いて帰ろうか。 最悪壁を壊せるし。
「・・・分かりました。 では案内お願いします。」
「は、はい!! こちらです!!」
この男性は悪そうな人には見えなかったし、天使を騙すなんてふてぇ野郎だ!!的な展開にはならないことを祈る。
10分後くらい。
昨日報酬を受け取った屋敷と同じくらいの大きさではあるが別の所へ連れていかれた。
・・・ちょっとだけ行き先は昨日の屋敷かも、と思っていたので良かった。
門を抜け、玄関に入る。
中は大理石のような石材で組まれていた。
シンプルではあるが高級そうな屋敷で、好感が持てた。
家や車など、値段の張るもののチョイスは持ち主の人格を写す・・・らしい。
祖父が言っていただけなので事実かどうかは知らない。
2階へと上がり、応接間?に通された。
「はじめまして、天使様。 私はこの家の執事でございます。」
「こちらこそはじめまして。 本日はどういったご用件で?」
「その話の前に、失礼ですがギルドカードをお見せいただくことは出来ますか?」
「? どっちのですか?」
「・・・。 出来れば天界の物を。」
「えっと・・・どうぞ。 読み取る機械をお持ちなんですか?」
「はい。 依頼をギルドに出すこともありますので。」
数分後。
カードは返却された。
「ありがとうございました。 天使様、まずは数々のご無礼、お許しくださいませ。」
「いえ。 天使とはいえ見習いですから。 それに別に天使が偉い訳ではありません。 先輩たちが凄いだけですから、僕はただの子供ですよ。」
「さすが、天使様。 寛大なお言葉、ありがとうございます。」
「は、はぁ。 そういえば、ご用件は?」
「はい。 ・・・失礼を承知でお聞きしたいことがございます。 構いませんでしょうか?」
「そうですねぇ・・・美味しいお茶菓子が出るなら。」
「・・・あとで給仕のものに用意させます。」
「なら、どうぞ。」
「ありがとうございます。 天使様はシュユ様で間違いないでしょうか?」
「? はい、そうですが?」
「シュユ様に奥様、あるいは恋仲の女性はいらっしゃいますでしょうか?」
「いえ、今の所は。」
「そうですか・・・。 では、好意を抱いている女性はいらっしゃいますでしょうか?」
「・・・いえ。」
話の流れがマズイ。
「そうですか・・・。 実は、シュユ様をわざわざお呼びしたのは、当家のお嬢様の婿になって頂きたいからなのです。」
「・・・これは、笑うとこですか?」
「できれば、真面目に考えていただければ、と思いますが。」
3つ目の選択肢があったとは・・・。
「なぜ、天使あるいは僕なのか、お聞きしたいのですが?」
「実は・・・お嬢様は今年で22歳。 しかし、私は夢で見た天使様としか結婚する気はない、と縁談を断り続けて早7年。 どんな天使様なのかとお聞きした所、ヒュムのようだが背が高く筋肉質で、しかも年下だそうで。」
・・・やばい。 天界で眠った時間をカウントしないなら、ほぼ当てはまっている。
この世界でも、政略結婚は普通にあり上流階級には男尊女卑的な思想はあるらしい。
だから女性も初潮を迎える頃に嫁ぐこともザラらしい。
いわゆる政略結婚の駒、というやつだ。
が、7年も粘っているということはそれだけ大事にされているのか、末の娘でそこまで結婚にこだわらなくても良いのかもしれない。
「しかも、そのお方はこの街の救世主で、独身だとも。」
・・・こじ付けなのか、ガチなのか。
どちらにしてもたちが悪い。
断る理由を考えないと・・・。
僕はあくまでも天使として、人々のために戦いたいと思っている。
金持ちのお嬢様の旦那になれば、いろいろな責任まで背負うことになり自由は失われるだろう。
・・・下級神になった後ならまだしも、今そうなったらただただ天寿を全うしてしまう。
「すいません。 私は世の為、人の為にこの命を使いたいと思い天使になりました。 この家やお嬢様がどのようなものであっても、自由を失ってしまうのであればお受けすることは出来ません。」
良し!! 天使らしくしかも無難な断り方だ!!
「では、嫁入りなら問題ない、と?」
ちぃっ!! 押し付ける気満々かよ!!
「・・・そうではありません。 いつ死ぬかも分かりませんし、世界中をフラフラすることになると思います。 そうなれば、1人で家に残ることになるでしょう? それでは結婚する意味がないと思いますが。」
「・・・お嬢様は元々精霊魔法のエキスパートでございますし、強化や治療はお手の物です。 それに、7年前から天使様と旅をするんだ、と体を鍛え武術や剣術を習っておられ、教師のものたちも才能と実力を褒めておりました。 旅の供をするのは問題ないと思います。」
くうぅ。 逃げ道が・・・。
「そうですか・・・。 では、直接会ってお話しすることは出来ますか? 僕がその、お嬢様の言う天使様なのかも確認できると思いますし。」
「・・・かしこまりました。 少々お待ちください。」
こうなったら直接会って断ろう。 さすがにどんな理由であれ、好意を抱いてくれている女性を無碍にするのは良心が痛む。
20分後。
お嬢様は天使が家に来ていていることさえ知らなかったらしく、準備に時間がかかるらしい。
美味しいお菓子を摘み、上品な紅茶のような飲み物を啜りながら待った。
・・・だいぶお腹一杯になってきたな。
さらに10分後。
ノックの音とともに執事の男性が入ってきた。
「シュユ様、お待たせいたしました。 こちらがお嬢様のカシア・クアドラド様でございます。」
「は、はじめまして!! カシア・クアドラドでしゅ!!」
・・・噛んだ。
カシアと名乗る女性は青のドレスを身に纏っており、その裾を摘んでお辞儀をした。
その後、執事さんはお辞儀をして後ろへと控えた。
「え、えっと。 はじめまして。 シュユと申します。」
「シュユ様・・・。 あ、あの!! 天使様なのですよね!?」
「はい。 そうですが・・・。」
「な、何か?」
「執事さんからはどのようなことをお聞きになりましたか?」
「へっ!? ディマスからは、天使様がわざわざ挨拶にいらしてくれた、としか。」
「そうですか。」
執事さんはディマスという名前らしい。
「実は、カシア様が天使に憧れているとお聞きしまして。 お話でも、と思いお呼びいただいたのですが・・・迷惑でしたか?」
「いえ!! そんなことはありません!! むしろ嬉しいですわ!!」
「そ、そうですか。 しかし残念ながら私は見習いなので、たいしたお話は出来ないんですが。」
「見習いですか!? 天使のお仕事を最近始められた、ということですか!?」
やばい。 条件の1つを新たに満たしてしまったようだ。
「そうです。 ではカシア様はどういったお話をしましょうか?」
「シュユ様の好みの女性はどういった方でしょうか?」
天使関係ない!! いっそ清々しいね。
けど、これはチャンスだ。
「えっと。 髪が長くて綺麗な女性が素敵だと思います。」
カシアさんは肩より少し短いぐらいの長さである。
「ほ、他には?」
「そうですねぇ。 お淑やかな方とかですかね。」
さっきの話だと、カシアさんをお淑やかとはいわないと思う。
「な、るほど? 他にはどういった方が?」
「私は天使ですが、それを理由に距離を取らない人ですね。 天使とはいえ元は人ですから、天使だからと変に特別扱いされるよりは他の人と同じように扱ってくれる人が良いですね。」
「た、確かに。 私も特別扱いされるのはあまり好きではありませんわ。 あっ。 そういえば、私をシュユ様はカシア様、とお呼びいただきましたわね?」
「ええ。 そうですが。」
「私のことはカシア、とお呼びくださいませ。」
「ですが「私もシュユさん、とお呼びいたしますわ。」 ・・・ではカシアさん、とお呼びしますね?」
「はい!!」
悪い人ではない分だけむしろ断りづらくなってきた。
・・・さっさと帰ればよかった。
あっ、そうだ。
「では、逆にカシアさんはどういった男性がお好きなんでしょうか?」
「へっ!? 私ですか!?」
「あっ、やっぱり失礼ですよね? 他の話に「大丈夫ですわ!!」」
「私は強い殿方が好きですわ。」
「強い、というのは?」
「やはり騎士のように自分だけを守ってくれる殿方に憧れますわ。」
「ということは自警軍の兵士のように強い方々ですか?」
「い、いえ。 その・・・。 もっと強い方ですわ。」
「もっとですか・・・。 僕より遥に強い方ってことは・・・近衛騎士団の方とかでしょうか?」
「えっ。 あの・・・。 シュユさんは天使、なのですよね?」
「ええ、そうですが?」
「なら、自警軍どころか将軍様よりもお強いのでは?」
「とんでもない!! 私は見習いですから。 自警軍の方々に訓練で勝てたら良いほうですよ。」
よし!! 良い感じにがっかりさせられた。
振られれば問題は解決する。
「そうなんですか・・・。 ところでシュユさんはおいくつなんでしょうか?」
「えっ。 一応18歳ですね。」
「一応、というのは?」
「天使になる前に80年ほど眠りについていたんです。 ただ、感覚的には1晩寝たくらいでしたし、体も特に変わった様子はありませんでしたから。」
「それは18歳で問題ないと思いますわ。」
「そうですか? ではこれからは18歳だと言うことにします。」
・・・年下は譲れないらしい。
「それが良いと思いますわ。 ・・・あっ!! シュユさんに恋人はいらして? この街の特産品は香水ですから、私がお好きそうなのをお選びいたしますわ。」
「ありがとうございます。 でも残念ながらそういう関係の女性はいないんです。 ただ、同じチームに仲の良い女性がいますのでその方達の分を選んでいただけますか?」
「は、はい。」
・・・微妙そうな顔をしている。
「あっ!!」
「ど、どうしたんですか?」
「私もそのチームに入れていただけないでしょうか!?」
「「えっ!!」」
・・・執事さんも声を上げた。
お読み頂き、ありがとうございます。
読んだよ。の一言でも構いませんのでご意見、ご感想をお待ちしております。
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