ある天使は言った。「かわいくても数がいて許されるのは、2桁まで。」
休憩終了。
数人はまだぐったりしていたが、のろのろと移動し始めた。
・・・魔法の座学に参加するようだ。
一方僕は・・・。
「よし!! それじゃあいつも通り訓練を開始する!! 当然、装備は訓練用のものを使うように!!」
「「「「はい!!」」」」
「では、シュユ君。 君の得物は何かな?」
「ハンマーかナイフ、最近はハルバードと棒ですね。」
「ハルバード? 棒?」
「ええ。 装備。 ・・・これと、あとっ。 このハルバードを最近使い始めました。」
「・・・そうか、筋肉質の天使とは君のことだったか。 変わった武器だが・・・天界のものかね?」
「いえ、僕の生まれた世界の武器を参考にしました。」
「なるほど・・・。」
「あ、装備はどうすれば?」
「ああ。 今日は、そこにある短剣か斧、槍を使ってくれるかな? ハンマーは無いんでね。」
「・・・じゃあ、短剣にします。」
「うむ。 何本使うかね?」
「では、2本で。」
「よろしい。 では、みな準備できたようだな・・・。 では、シュユ君と戦いたいものはここに残れ!! 他の者は奥のフィールドを使うように!!」
「「「「はいっ!!」」」」
20人ほどがこちらの実戦訓練に参加していたが8人が残り、あとは奥に移動していった。
・・・先ほど話した獣耳の女性はこちらにいる。
「では訓練を始める。 シュユ君、この訓練では実戦形式での訓練を行う。 訓練用の装備とはいえ、当たり所が悪いと怪我をするので、気をつけるように。」
「はい。」
「どちらかが負けを認めるまで続ける。 当然魔法もありだ。 但し、私が止めたらそこで中止するように。 では、一番は誰だ?」
「はい!! 私です!!」
「ミルシェか。 よし、両者構え、始め!!」
「いくよ、天使君。」
「はい。」
30センチほどのダガーを1本構える。
もう1本は腰に差してある。
ミルシェさんの武器は片手剣のようだ。
「やぁっ!! はっ!!」
「ん。 ふっ。」
斬撃をかわしつつ、隙を探る。
が、さすがに現職の軍人である。
隙が無い。
「にゃっ!! 燃えろ!!」
「っ。 はぁっ!!」
バックステップで炎をかわす、が。
「いけ!!」
そこに炎弾が3発飛んでくる。
「ふぅ、生体加速。 加速加速。」
「にゃっ!?」
「しっ!!」
「ぬぅう!! にゃあ!!」
加速で一気に距離を詰め、斬りつけるがかわされ、距離をとられる。
が、
「やあっ!!」
腰のダガーを抜き、投げつける。
「にゃぁ!? ふう!!」
「そこっ!!」
咄嗟に避けるが、そこに刺突を繰り出す。
「まだまだぁ!! 守れ!!」
炎の壁が瞬時に現れた為、少し下がる。
「ちっ。 はぁっ!!」
「にゃに!? くっ!!」
もう1本も投げつける。
その隙に、加速をきり全身に魔力を纏う。
・・・これで魔法のダメージをある程度防げると自警団の人に聞いた。
炎の壁に突っ込み投げつけたダガーを剣で弾いたミルシェさんを捉えた。
「せい!!」
「いたっ!!」
剣を握る手を蹴り上げる。
ミルシェさんの剣が宙を舞う。
「甘い!! 切り裂け!!」
「装備!! はあっ!!」
「武器召喚!? なら、バンバン行くよ!! 燃えろ燃えろ!!」
柄で風の刃を砕き、炎弾をいなす。
「ちっ!! 貫け!!」
「そこだぁ!!」
風の矢を見切り、距離を詰め、柄の先で突く。
「ぐう!? 盾!!」
「貫けぇ!!」
「にゃん!?」
炎の盾を貫通し、柄が突き出される。
「ぐえぅ!?」
鳩尾に入ったようだ。
「ふぅ・・・。」
・・・熱かった。 炎の壁はガチの威力だった。
そして・・・詰め寄り、刃を出して首筋に当てた。
「・・・参った。」
「よし!! シュユの勝ち!! ミルシェは走って来い!!」
「・・・はーい。」
「・・・罰ですか?」
「うむ。 負けたほうはグランド5週だ。」
・・・1週1キロはあるよね、ここ。
「怪我は無いか?」
「はい。 ちょっと髪が燃えたくらいです。」
前髪が少し焦げ臭い。
「そうか。 じゃ、次は誰だ!!」
「えっ?」
「とりあえずは、怪我をするか負けるまでは続けるからな。 じゃ次は「はい!!」 ・・・ベニートか。 じゃあ、シュユ君、武器を拾って構えてくれ。」
「・・・はい。」
・・・結局4人目で負け、ボロボロで走った。
夕方。
「よし!! これで今日の訓練を終わる!! 協力してくれたシュユ君に敬礼!!」
「「「「はっ!!」」」」
「あ、ありがとうございました。」
「久しぶりにいい試合が見れたよ、ありがとう。 医務室はすぐそこだから回復魔法を受けて、着替えたら帰っていいよ。 できればまた来て欲しいんだが・・・考えておいてくれ。」
「はい。」
走り終わってからも訓練は続き、8人と合計15試合を行い、10勝を勝ち取った。
・・・つまり合計25キロ走ったんだけどね?
「今日はありがとうございました。」
「うむ。 報酬は受付で受け取ってくれ。 ではな。」
「はい。 お疲れ様でした。」
・・・報酬は3ルードだった。
門を出て帰る途中。
「よう、シュユ。」
「ああ、キイチか。 どうしたんだ? 徘徊してるの?」
「してねえよ!! ・・・どうしたんだ? 疲れた顔してるけど。」
「自警軍で稽古相手の仕事をしたんだよ。 今はその帰り。」
「マジで!? お前、勇気あるなぁー。 あんなの腕試しにいく奴か、相当才能あって呼ばれる奴くらいしか受けないぜ?」
「知らなかったんだよ、こんなにしんどいなんてさ。」
「で、何勝したんだ?」
「10勝だよ。」
「・・・化けもんだよ、お前も。 自警軍の奴らなんて対人戦のプロだからな。 新人相手でも3勝出来れば傭兵としては十分だぜ?」
「そうなのか? 5回も負けたし、もっと訓練積まないとって思ってたんだけど。」
「・・・しかも勝ち越しかよ。 まあ、天使なら全勝するのが普通だけどな?」
「・・・。 で、キイチは何してたの?」
「俺は荷物運びとかが終わって飯食いに行く所だよ。 一緒に行くか?」
「いや、遠慮しとくよ。 みんなが待ってるし。」
「・・・羨ましくないからな!! あばよ!!」
「おーう。」
宿舎に帰るとイリスが迎えてくれた。
少しして夕飯になった。
オリビアは今日は休んでいたらしく、部屋着だった。
アリアさんは仕事を探しに言っていたそうだ。
「しかし、自警軍の仕事を請けるなんて物好きねー。 私は1ゴルド貰っても嫌よ?」
「そう? 確かに疲れたけどさ、あんなに実践的なのに安全な訓練受けられて、しかもお金をくれる場所なんて無いと思うけど。」
後で聞いたけど、訓練着は魔法によるダメージをある程度軽減する効果があるそうだ。
・・・なぜ半そでなのか。
「私もパスだね。 訓練にはなるけど儲けは少ないしね。 でも、さすがシュユだね。 知り合いなんてその仕事請けた日の夜は飯なんて食えなかったよ?」
「一応、鍛えてますから。」
「オリビアも行ってみたらどうだい? シュユに追いつけるかもよ?」
「私は私のペースで頑張りますから、大丈夫です。 あ、そういえば討伐系の依頼ってもう無いんですか?」
「無いねぇ。 前の仕事の評判が広まれば来るかもしれないけど、今のところ指名は来てないよ。」
「じゃあさ、シュユ。 明日は精霊狩りに行かない?」
「精霊狩り?」
「そう。 シュユも精霊魔法使えるようになりたいでしょ?」
「そんな簡単に使えるようになるの?」
「さあ?」
「さあ、って。」
「精霊や妖精にも当たりはずれがあんのよ。 欲しい色を持ってるかも色がどれぐらい濃いかも奴隷化するまではわかんないし。」
奴隷化したとき、使えるようになる精霊魔法が強い精霊を色が濃い、と言う。
・・・くじ引きみたいなもんだね。
「そっか。 じゃあ行ってみようかな。 2人は?」
「私は遠慮するわ。 黒魔法の制御だけで手一杯だし。 それに明日も仕事だし。」
「私もですぅ。」
「私も用事があるから無理だねぇ。」
「・・・じゃ、シュユ。 2人で行きましょ?」
「分かった。 じゃあ朝ごはんを食べたら準備していこうか?」
「りょーかい。」
翌朝。
エルマとイリスの猛攻も昨日の訓練を思い出すとたいした事は無かった。
でも、徐々にではあるけど確実に精度や威力は上がっている。
僕も棒術の勘を取り戻しつつあり、魔力制御もかなり上達している。
・・・精霊魔法の便利さは昨日痛感したし、今日の狩りが成功することを祈る。
朝食後。
「じゃあ行きましょっか。」
「どこに行けばいいの? 僕はそういう場所知らないんだけど。」
「精霊クラスが欲しいし、この街の東にある保護区に行きましょう。」
「保護区?」
「そう。 勝手に入ったら捕まるけど、お金を払えば1日精霊を3匹まで奴隷化、若しくは使い魔に出来る場所があんのよ。 マナも豊富だし、魔獣や妖魔も滅多にでないから新人でもお金さえあればレベルアップできる森林地帯ね。」
「へぇー。 で、いくら掛かるの?」
「1日6ルードね。」
「・・・結構するんだね。」
「妖精がうじゃうじゃいるし、精霊も結構見つかる。 装備代だと思えば安いもんよ。 じゃ行きましょ?」
「なるほどね。 じゃ、案内よろしくね。」
昼前。
保護区を管理する町の1つ、ホーリッドに到着。
オリビアは、バイクを当てにしていたらしく結構な距離を飛んだ。
・・・徒歩なら着くのは明日の夕方になりそうだった。
受付に行き、代金と引き換えに24時間の入場許可証を受け取る。
森は、地平線の先まで続いており夢想樹のような巨大な木も5本見えている。
「じゃ、お昼食べてさっさと精霊狩りに行きましょ。」
「そうだね。」
で、昼食後。
バイクで数分かけて森の入り口に到着。
門番に許可証を見せ、門の中へ入った。
この中では常に監視されているので、4匹目に手を出すとすぐにしょっ引かれる。
そのかわり、遭難することも無いけど。
「で、どんな精霊魔法が欲しいの?」
「とりあえずは何色でもいいけど戦闘に使えるレベルのが欲しいね。」
「じゃあ、強そうな精霊を狙うべきね。 付加系のは変な妖精の方が案外当たりなんだけど。」
「そうなの?」
「ええ。 たしか魔力へダメージとか、魔法反射とかは妖精から得るって話よ。」
「へぇー。 余裕が出来たら狙ってみようかな。」
「じゃ、マナの特に濃いそうな場所を探しましょ。」
2時間後。
妖精たちはわらわらと寄ってきては一部を残し全力で逃げるというのを繰り返していた。
波長の合う妖精達はなついてくれるけど1匹2匹ではなく、100,200で押し寄せてくる。
・・・ちょっとキモい。
妖精の姿は多種多様で、獣型にいわゆる妖精型、人型に虫や魚、爬虫類など。
正直どれが妖精でどれが他の生物かよく分からない。
ただ、精霊はほとんど姿を見せない。
・・・まあ、目的がばれてるからだろうね。
精霊は気に入った人にしか姿を見せないと受付の人に言われた。
・・・入場者の中には、精霊が見つからず森を荒らしたりクレームをつける輩もいるそうだ。
「いい子がいないわねー。 精霊も逃げちゃうし。」
「無理に契約するつもりもないのに。 まあ仕方ないけどね。」
「そうだけどさー? 2時間くらいは歩いてるのに収穫ゼロじゃ萎えるわ。」
「じゃあ、さっきからついてきてるこの中から選んで契約すれば?」
「嫌よ。 それは帰る間際で十分。 シュユがすれば?」
「・・・そうだね。 1匹捕まえて奴隷化してみようかな。」
「そう? じゃあそのわらわらしてるのから1匹選んで捕まえてみて。」
色々なのがいるけど・・・どれが何の効果を持っているかは本当に大まかにしか分からない。
まずは、体色。
これで、どんな属性を持っているかがなんとなく分かる。
次にそれ以外の見た目。
羽に替わった模様があるとか、変な紋章が刻まれているとか。
だけど意味のない模様である確率は8割程度である。
・・・正直、卵を見て何が生まれるか当てるの位難しい。
精霊クラスなら会話によってほぼ100%性質が分かるけど、妖精は無理。
つまり、鶏とかダチョウの卵の周りに未開のジャングルにありそうな虫の卵が山盛りになっているようなものである。
「じゃあ、この金色のカブトムシにしようかな。」
「カブトムシ? ああ、異世界の虫ね?」
「そうだよ。 で、どうかな? 良さそう?」
「うーん。 虫系ははずれが多いって聞いたことあるからやめたほうがいいんじゃない?」
「そうか・・・。 じゃあこの銀色の烏賊みたいなのは?」
「イカ・・・こっちと同じ名前なのね。」
烏賊はイカらしい。
「えーと。 水系の魔法の可能性がちょっと高いけどいいの?」
「水系か。 イリスがいるしやめとこう。 ・・・じゃあこの真鍮製の亀みたいなのは?」
「亀? タドルのことね? ・・・たしかタドルは色と同じ属性のシールドが張れたり張れなかったり。」
「・・・どっちなの?」
「攻撃系ではない可能性が比較的高い、としか言えないわね。」
ぬぅ。 アバウトすぎる。 悪徳業者の契約書を読んでいるみたいだ。
・・・やはり、見た目の好みで選ぼう。
奴隷化しても使い魔のように扱うことが出来るし、愛でられるだけでも後悔はしない。
「じゃ、このメタリックグリーンの蛇にするよ。」
「ヘビ? ヘビなら、はずれは少ないからいいかもね。 ・・・当たりも少ないけど。」
・・・もう気にしないことにした。
あと蛇はヘビらしい。
「じゃあ君に決めた。」
肩の上で眠っていた10センチほどのヘビを手に乗せ、契約する。
「我、汝の魂を縛るものなり。 我が名はシュユ。 我、契約により汝と運命を共にすることをここに誓う。」
呪文を唱えると、ヘビは嬉しそうに手の上を飛びはじめた。
・・・翼があった。
「へぇー。 精霊でもないのに翼のあるヘビなんて初めて見たわ。 ・・・でなんか頭に浮かばない?」
「・・・特には。」
「じゃあはずれね。 当たりなら何か呪文とかイメージが浮かぶんだけど。」
「・・・そうか。 まあ、かわいいから良し。 戻れ。」
奴隷化したら、消したり出したりができるようになる。
「ま、無駄になることはないし何かに使える日が来るわ、きっと。 じゃ、もっと奥に行きましょー。」
「おー。」
1時間後。
「良い子いないわね・・・。」
精霊は僕たちを見るや否や脱兎のごとく逃げた。
「そうだねー。」
あまりに暇なのでアルと戯れる。
・・・ちなみに、さっき奴隷化したヘビの名前である。
「初めての奴隷化でその子を選ぶなんて変わってるわよねー。」
「そう?」
「ええ。 普通は話の出来る精霊から選ぶもんよ? そのほうが次の精霊とも交渉しやすいし。」
「へぇー。 そうなんだ?」
「うん? って重い!!」
赤紫色の梟が音もなくオリビアの頭にとまった。
「かわいい子だね。」
「そう? んー。 精霊になりかけって感じね。」
梟はオリビアにむんずとつかまれても、じっとオリビアを見つめて動かない。
「とりあえず契約しといたら。」
「・・・。 使い魔にするわ。」
「え? なんで?」
「アウルはレストにとって縁起の良い鳥なのよ。 だから、使い魔にするわ。」
アウルは梟のことらしい。
「で、契約するけど良い?」
アウルは頷いた・・・気もする。
「じゃあ右の翼に印をつけるね。」
こうして、オリビアに使い魔が出来た。
「ふふーん。 これで元は取ったわね。」
オリビアは頭に先ほどのアウルを乗せている。
・・・アウルの巣を頭につけてるみたいだな。
「・・・なんか失礼なこと考えたでしょ?」
「ん? 別に。 ただ、その子を頭に乗せてるとオリビアの髪の毛が巣みたいだと思「十分失礼じゃない!!」」
さらに1時間後。
「・・・ねぇ、あいつこっち見てない?」
「帰ろうか、オリビア。」
「でも精霊っぽいし良いじゃない。 あんたを見てるし、契約したら?」
「見えないよそんな・・・の。」
・・・ばっちり目が合った。
移動しやがって。
「嫌だよ。 あれ絶対妖魔だって。」
「それなら襲い掛かってくるでしょ? ほら、あんたをガン見してるじゃない。」
オリビアのフー子(僕命名)と契約した場所から川伝いに移動していると木の上からドサリ、と落ちてきた。
・・・熊手ぐらいの大きさのヤゴが。
僕はトンボがあまり好きではない。
いや、むしろ嫌いだ。
・・・昔飼っていたメダカを食ったから。 あと、自転車に乗ってるときにトンボが顔にぶつかった所為で川に落ちたから。
いや、同じ水槽に入れた僕が悪いんだけどさ? ぶつかったのは僕の所為じゃない。
「君、精霊なのかな?」
ヤゴが縦に首を振る。 シュールだ。
「僕のこと、気に入ってくれたの?」
また縦に首を振る。
・・・。
「奴隷化するつもりだけど良い?」
・・・少し間があって首を縦に振った。
オリビアが後ろでプークスクスと笑っている。
「でもさ、僕天使だしずっと奴隷かもしれないよ?」
「構いませぬ。 私は世の為、人の為にこの身を捧げる覚悟は出来ておりまする。」
・・・あー。 喋れんのね。
「天使様がこの森に現れるのを待っておりました。 しかも、幸運なことに私と相性のよい方が来て下さった。 まさに、これこそが天のお導き。」
「・・・なんでそこまでして、その・・・世の為、人の為に頑張りたいの?」
「私が精霊になったばかりの頃、妖魔に食われそうになったところをとある騎士様に助けていただきました。 そのお方は、命を救うのに種族なんて関係ない、そう仰られ去ってゆかれました。」
「なるほど。 ・・・それで?」
「私はいたく感動し、この救われた命をあの方のように誰かを救う為に役立てたい、と強く思うようになりました!!」
「・・・なるほど。 で、天使の僕と共に戦いたい、と?」
「はい!!」
・・・断りづらい。
キラキラと目を輝かせるこの子の願いを、ヤゴが、トンボが嫌いだからなんて理由で断れない。
「・・・分かったよ。 でも奴隷化してもいいんだね?」
「はい!! 構いませぬ!!」
「そうか。 じゃあいくよ?」
「どうぞ!!」
ヤゴの頭に触れる。
「こほん。 我、汝の魂を縛るものなり。 我が名はシュユ。 我、契約により汝と運命を共にすることをここに誓う。」
・・・? 頭の中に変なイメージが浮かび上がる。 流れ星?
それは、木の葉のようなものを撒き散らしながら突き進む流れ星のようなって、あれ!?
・・・目の前のヤゴがプルプルしたかと思うと脱皮しだした。
「え!! ちょっ、キモじゃない大丈夫!?」
「はい!! 力が満ち溢れるようです!!」
そうして、ヤゴはエメラルドをあしらった純金のトンボのような生物に進化した。
・・・羽が4対あるけどね?
お読みいただきありがとうございます。
いつか使えるかもくらいで、無計画に設定を増やしてます。




