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ある青年は言った。「最初はジョークだと思った。 数秒で見えなくなるまでは。」

ゲル状の妖魔を倒した後、広場へと向かった。


「おーい!! 大丈夫かー!!」


キイチがこちらに気付き、手を振っている。


「大丈夫だー。」


広場の様子を確認しながら、適当に返事をしつつ着陸する。

狩りに来ていた人たちの中には、数人の怪我人がいるようだが、グループ全員とイリスにエルマ、みな無事のようだ。

・・・狩場にいた他の人たちも集まってるようだった。


「みんな、大丈夫だった?」

「お前こそ!! ラーシュが慌てて帰ってきてジャンクゴーレムみたいな妖魔が出たって騒いでさ!! お前が戦ってるから援軍にいける奴探してたら帰ってくるし!!」

「ジャンクゴーレム?」


ジャンクゴーレム。

黒いゲル状の体に黒いコアを持つ人型の妖魔。

物理的に硬いものを好み、それを取り込むことで自身の強度を高める。

取り込んだ物質の強度を精霊魔法でさらに高めるため、取り込んだ物質によっては最悪の妖魔となる。

加えて本体は対衝撃に優れたゲルであり、取り込んだものの強度と相まって物理的強度は妖魔でもかなり高い方であり、コアも並みの攻撃では傷1つ付かない。

正攻法としては何らかの魔法で自由を奪い、魔力を吸い取ってコアを溶かすなど、魔法主体となる。

以上があのゲル状の敵の正体らしい。 特徴が類似してるし、間違いないとは思う。

ちなみに、ラーシュとはあの場にいた男性の名前である。


「取り込んでた石やら木やらをかなり壊したけど、材質の割りに硬いなぁ、とは思ったんだ。」

「倒した、のか?」

「えっ。 倒さないほうが良かったの?」

「・・・いや、1人でどうやって倒したのかなって。」

「ハンマーでぶっ叩いて取り込んでるものを吐き出させて、最終的に本体を直接潰して、出てきたコアにナイフを突き立てて倒した・・・んだけど・・・。」


明らかに周りの人たちが引いている。


「ま、まあ、天使だし? それくらいできて当たり前、なのか?」

「ま、まあね。 武器も天界のだし? コアなんてそりゃあもう熟れた果実みたいにスパッと切れたし?」


おおっ、と感嘆の声が聞こえた。


「まあ、私の主なわけだし? 負けるなんて思ってなかったけどとりあえずは褒めてあげるわ。」

「ふふっ。 ありがと、エルマ。」

「私も信じてましたよぅ!!」

「ありがとう。 イリス。」


駆け寄ってきたイリスを抱き締めてやる。


「はふぅ。」


ん?


「どうした? イリス?」

「なんかぁ、すごく気持ちよくてぇ。」


・・・あの神業が発動しているらしい。 存在を忘れてたけど。


キイチたちの話をまとめると、狩りをしていたら魔獣がいきなり森の奥から現れたそうだ。

幸い、みな魔獣との戦闘には慣れており、怪我人こそいたが死者はいないそうだ。

ただ、ラーシュが遭遇した妖魔ジャンクゴーレムは特殊な武器を持たない場合、基本的に魔法でしか倒せない。

彼はマナを得るために戦闘に入り、妖魔の性質を思い出す前に接近され、逃げ遅れたらしい。

・・・彼は運があったのか、無かったのか。

とはいえ、妖魔がこれ以上でないとは限らないため、辺りに人が残っていないことを確かめ、みなで引き返した。


50人ほどの集団での移動だったので、町に着く頃には夜になっていた。

その頃には、怪我をしていた人も回復魔法でほぼ完治していたため、町役場で事情説明をした後すぐに解散となった。

役場の人は注意を聞かないから、と不機嫌ではあったもののギルドに調査依頼を出すことにすると言っていた。


でその後、4人で食事をし、入浴後に宿に帰った。

みな疲れていたので、すぐに眠りについた。



翌朝。

身支度中にふと気になり、ギルドカードを確認したら・・・

レベルが102になっていました。 

クラスも1になっており、早速スキルを確認した。

新しいスキルは、っと。


武人のオーラ

発動条件 常に発動

効果 クラスを持つもの特有のオーラを醸し出す。 身体能力を高める。 


闘士の心得2

発動条件 闘士の心得1をマスターする。

効果 闘士の心得1の効果を高める。


戦士の心得2

発動条件 戦士の心得1をマスターする。

効果 戦士の心得1の効果を高める。


武人の一撃

発動条件 物理攻撃を発動対象へ当てる。

効果 クラスを持つものの一撃。 ある程度相手の肉体強化を無効化したダメージを与える。


・・・この辺が使うスキルかな?

他にも剣や斧など、特定の装備を身につけていると使えるスキルは多くあるがナイフとハンマーで使えるスキルは無かった。

くそう。

神格に変化はなし。 まあそりゃそうか。

メールもないな。 魔力を充填してからしまった。

 

今日はどうするか、キイチに聞いたら妖魔が出たことで町に人が戻ってきているが、もうイベントは終わった感じの雰囲気らしく、1人では厳しそう。

そこで、天使がいるという話も広まっているため、一緒に来て人を集めて欲しいと言われた。


「まあ、いけどさ。 もうあきらめるべきじゃないか?」

「あきらめたらそこで終わりだろ!?」

「もうそんな雰囲気じゃないんでしょ? いくらなんでも僕がいってどうこうなるとは思えないけど。」

「頼むよ!! 俺たち親友だろ!?」

「いつの間に親友になったんだよ・・・。 分かった。 今日で最後だからな?」

「ようし、じゃ行こうぜ!!」


・・・結局昨日のグループの人たちとは話をしたけど特に何も無く、町もだいぶ落ち着き初日のような賑わいはすでに無い。

受付に行ったが既に多くの人がイベントを終えている(多くの名札が返還されているそうだ。)。

妖魔の影響もあるらしいがほぼ例年通りのことだそうだ。


「なあ、シュユ。」

「どうした、キイチ。」


魔力制御訓練をしつつ答える。


「このイベントが終わったらさ、お前どうすんの?」

「街のギルドにいって討伐系の仕事をするつもりだけど。」

「・・・俺も付いていっていいか?」

「ダメダヨ!!」

「なんでだよ!! そこはいいぜ、っていうとこだろ!?」

「別にキイチの好きにすればいいよ。 ただ、めんどくさい。」

「正直すぎんだろ!? もっと遠まわしに言えよ!!」

「嫌いじゃないの。 嫌なだけ。」

「悪化したよ!! まあ好きにするけどな!! アーズダインでも彼女探しはできるしな!!」


こうして、僕たちはお見合いイベントを終えた。

宿への帰り道に荷物を揃え、明日の朝アーズダインへと出発することになった。



翌朝。

身支度をし、町を出る。


「・・・おい、まさかとは思うがその変な乗り物で先に行く、とかいうんじゃねえだろうな?」

「えっ。 行くけど?」

「・・・乗せてくれるよな?」

「このバイク、3人乗りなんだ。」

「だと思ったよ!!」


数日後の夕方。

アーズダインに到着した。

宿を取り、夕食を食べたあとすぐに眠った。

道中特にイベントは無かったが、やはり警戒しながらの旅は疲れる。


で、翌朝。

身支度をし、久々にギルドに行った。

手ごろな仕事を探してみたが、やはり討伐系が金額的に良さそうだ。

・・・そういえば。


「すいません。」

「はい。 シュユさん、どうしました?」

「最近、アリアさんはここに来ましたか?」

「ええ。 一昨日来られましたよ。 アリアさんに何か用があるんですか?」

「はい。 たしか、手紙をギルドを通して他のギルド会員に渡してもらえるんですよね?」

「はい。 可能ですよ。」


しばらく止まる予定の宿の場所と、しばらくこの街で仕事をすること、アリアさんと話をしたいということを記した手紙を、受付で渡した。

その後、力自慢急募と記された荷物配送の仕事をして小銭を稼いだ。


で昼過ぎ。

仕事が終わり、食事に行った。

エルマやイリスには夕飯までには帰ると伝えてある。

・・・そういえば、1人の飯っていつぶりだっけ? 

配送業者の人おすすめの店に行くと、少し時間が外れているにもかかわらず混雑していた。

おすすめだ、といわれた日替わりランチを注文したけど、まるで学生向けの食堂のように大盛りだった。

この世界に来ていくつかの食堂で食事をしたけど、大体がパンみたいな穀物の粉をこねて焼いたものか、炊いた雑穀が主食であった。

しかし、この店は白米・・・のようなものが主食だ。 

ハマという穀物で、見た目は大きな胡麻のような形、色はほんのり赤いくらいでほぼ白。 味は質が少し悪い日本米のようだった。 

おかずは、川魚と葉野菜の酸味や辛味が強めの炒め物と、おそらく魚のあらで取った塩味の具なしスープ。

これで4ルーバ(約400円)とは驚きである。

・・・なんでもこの店の店主の知り合いが仕入れを上手くしているらしい。

とにかく、久々に食べた白米のようなハマの味は自分が日本人であったことを思い出させた。

この店が人気なのはハマの粉で作った麺類のおかげらしいので次はそっちを注文しようと思うけど。

僕は米が好きだけど、同じくらい麺類も好きなのだ。

・・・ってどうでもいいか。


昼食後、魔獣を狩りに行ったが数匹しか見つからなかった。

ギルドカードを持っていると何故か倒した頭数が記録される。 

依頼を受ける前にカードを渡しその頭数を記録することでそこから増えた分の報酬をもらえる、という仕組みである。

魔獣は元になった獣によって強さが変化するため、当然報酬も変化する。

また、魔獣は妖魔の出す瘴気を浴び続けると最終的に獣魔になる。 獣魔の強さは妖魔と変わらないため獣魔とは瘴気を出さない妖魔と認知されているけど。

その獣魔を討伐すれば、大体元の魔獣の10倍程度の報酬が得られる・・・こともある。

ギルドの依頼はあくまでもギルドが仲介してくれる仕事なので、ハフリンの村長たちのように、依頼主が報酬を用意してから依頼を出すため、仕事の難易度と報酬は一致しないこともある。

当然ギルドの職員が仕事内容を聞き、適正な報酬を教えてくれるが決定権は依頼主にあるためだ。

また、依頼がなければどんなに強力な妖魔であっても、討伐した所で報酬はでないのだ。

精霊や霊獣などは討伐すれば、武具や薬品等に利用できる材料を得られるが、妖魔や獣魔は基本的に絶命と共に消滅してしまうため、それすらも得られない。

・・・ただし、何らかの方法を用いればその限りではないらしい。

実際、妖魔の体の一部が高額で売られているのを市場で見たしね。


ちなみに今日の稼ぎは3ルード(約3万円)であった。

報酬を受け取り、宿へ帰るとイリスは寝ており、エルマは魔力制御の訓練中であった。

エルマは通常の精霊魔法がほとんど使えない代わりに黒魔法が使える。

が、黒魔法はほぼ呪文が無い代わりに高度な魔力制御によって効果を発揮するため、実質下級魔法しか扱えないエルマは戦闘能力が低い。

・・・先日のスクラップゴーレムとの戦いで、まったく僕に当てにしてもらえなかったことが悔しかったらしく、練習に力が入っているみたいだった。

イリスもコアを大きくするために魔力を吸っては眠っている。 ・・・決してサボっているわけではない。

とにかく、2人に魔力を回している分、戦闘に魔力を割かないようにはしている。

回復は十分速いけど、生体加速すれば回復は遅れるし、いざというときに急加速できないと困る。

とはいえ、魔獣相手なら素手でも勝てる程度の化け物には既になっていることが判明したため、普段困ることはなさそうだけど。


その後、二人と夕食を取り、訓練後に入浴し眠った。


 

お読みいただきありがとうございます。

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