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風と共に去りぬ(轢き逃げ)

眩しさが消え、辺りを見回すと足元には石のステージのようなものが。

その周りには森が広がっているようだ。

とりあえず森を出ようと思っているとデンワが鳴った。 かばんに入れていても通信が入ると持ち主にだけ聞こえる呼び鈴が鳴るのである。 しかも取り出さなくても念じれば念話を開始できる。


(はい。 シュユです。)

「こんにちは。 ミノリンですわ。 まずは、天使としての初仕事開始、おめでとうございます。」

(ありがとうございます。)


声に出さなくても話は出来る。 いきなりぶつぶつ言い出したら気持ち悪いしね。


「装備は整っていますか? そこを離れると転移は不可能になります。 再度確認してください。」

(大丈夫です。 全てかばんに入れていますし、武具も装備できます。)

「それはよかったわ。 そういえば請求書の額が思ったより少なかったけど大丈夫なの?」

(はい。 僕にはもったいないほどすばらしい装備を頂きました。 本当にありがとうございます。)

「そうなの? なら良いのだけれど。 これからシュユ君にはとりあえず好きなようにそちらで生活してもらいます。 以前も話したとおり、自己責任でなら何をされてもかまいませんわ。」

(はい。)

「ただし、ギルドで天使として登録した際にも伝えましたが、緊急要請に限り、負傷にて身動きが取れないなど特殊な場合を除いて強制的に作戦参加していただきます。」

(はい。 分かっています。)

「そこは、モリリンの管理する聖域の1つです。 天界へと戻るゲートでもあるので、デンワで位置情報を記録しておいてくださいね?」

(はい。 記録しておきます。)

「よろしい。 あとシュユ君の位置情報は常にこちらで把握しています。 なので、その場所によってはなにか個人的なお願いをするかもしれないけど、無理して聞く必要は無いわ。 先ほども言ったけれど緊急要請以外は、自由意志によって行動する権利が天使には認められているの。 無視してもそのことでデメリットは無いから安心してね。 もちろん報酬は用意するけれど。」

(分かりました。 何でも言ってください。)

「ふふっ。 ありがとう。 では通信を終わります。 健闘を祈ってますわ。」


通話おわりっと。

場所も記録したし、森を出ようか。

どうやら聖域はあまり広くないようで少し歩くと森を抜け、小川の流れる草原地帯へと出た。

・・・よし!


「召喚!!」


現れたのは黒い一人乗りの中型バイクである。 当然浮いている。

まずは跨って。

MPは499。 念話で少し減ったが大丈夫。

とりあえず遠くに道らしきものが見えるので、そこまでいくか。

・・・ええとアクセルがこれでブレーキがこれ。

このバイク、オートマである。 当たり前だけど。

フルスロットル、とばしてみましょ。 って思ったらスピードは3秒ほどでマッハ2。

風景は流れ、一瞬で道路付近へ。

急ブレーキをかけ慣性の法則を無視して停止。

・・・スピード制限と加速度の調整を忘れていた。 てへぺろ☆

設定は出す直前にしか出来ないため一旦バイクを消した。

そして再度


「召喚!!」


うむ。乗ってアクセルをひねると思ったより早いがいいかんじに速度が上がり時速70キロに。

運転に慣れるまではこれでも十分だろう。


そしてしばらく経った。

MPの値は12ほど減少している。

このバイク、走行距離ではなく発動時間で魔力を消耗するのでおよそ2時間経過しているはずだ。

ということは140キロは走行しているはずなのだが・・・道に沿って走っているのに森、草原、川以外には鳥や、動物しか見ていない。 道の近くにいたため鹿のような生物を轢き殺し川で解体した後に空間凍結箱へいれた以外特にイベントは無かった。


およそ40分後。

ふんふんと鼻歌を歌いつつ運転していると道近く、左側の森の向こうで狼の遠吠えのような声が聞こえた。

・・・いやな声だ。

犬や狼などは連携して狩りを行う際、追い立てるように鳴くのだ。

それに、何か意味があるのかは知らないが・・・

念のために確認しておこう。

バイクを消し


「生体加速。」


全力疾走で森を抜けると木に囲まれた草原のような場所で10人程度の小柄な人?たちが武器を構えて円を作っている。

円の中には人を背負った人が二人・・・。 背負われている2人は怪我をしているようで、おそらく皮の鎧の隙間や足には赤いものが見える。

その周りには、20匹ほどの狼のような黒と灰色のまだらのような生き物たちが囲んでいる。

犬のように吠えながら動き回り、人の側の隙をうかがっているようだ。

・・・ん? 森の反対側に大まかではあるが牛のような大きさの狼がいる。

そいつは真っ黒で時々吠えている。 ・・・指示でも出しているのか?

とにかくまずい。


「召喚!!」


何匹かこちらに気づくが、すぐに飛び乗り

ノンストップで、行ってみーましょ。

とアクセル全開。 地面からの高さを一定に保てるので高さを気にせずに疾走する。

そして・・・ドン!!とか、ボゴォ!!というくぐもった音を無視し、でかいのに向かう。

が、サッと回避された。 むぅ。

またも急ブレーキでバイクを乗り捨て、バイクを消しながら籠手を出し、サバイバルナイフを抜く。

小さい方の狼は5匹ほど、何故か、減っているが気にしない。

でかいこいつは、こちらを値踏みするようにその目でこちらを見ているが・・・。


「ふっ。」


息を吐き突っ込む。 小さいのが来るとまずいかもしれないのでまずは攻めて強さを測ろう・・・。

が、巨体に見合わない軽やかな動きで回避され、左腕を狙って噛み付いてくる。


「けやぁっ!!」


側頭部に蹴りを叩き込む。 犬系の生き物は噛み付いてから前足で押さえ込む性質がある。

なら前に出た頭を叩くのは簡単ではある・・・が。


(重い!! っ!)


狼は吹き飛んだがすぐに体を起こした。 つま先を魔力で強化しているブーツではあるが、様子を見る限り奴の骨はなかなか硬そうだ。

とはいえ、ダメージを与えたのだろう。 奴の目が変わった気がする。 久しぶりの殺気を感じた。

天界にいる神々から見れば、羽虫のような存在であろう僕に殺気を向けるなど無駄なことをする神はいなかった。

そのためか、肌が粟立つ感覚。 気を抜けば死を招くこの感覚に、魂は踊っていた。


「ワウッ」


小さく呻くと奴が距離をつめてくる。 さっきの蹴りで奴の重さは受け止めるべきではないと分かった。


「生体加速。」


加速して迎え撃つ。 ・・・足の痺れは無視できる。 なら・・・。


「ふっ。」


加速してもなお速い巨狼。 ・・・なら狙うのは足だ。

いきなり噛み付くのは危険だと判断したのか、奴は突っ込んでくる。

だが・・・。


「甘いっ!!」


二段階加速すれば十分に速さを追い越せた。 奴も急な加速に驚いているかもしれないが、そんなことは知らない。

そして、振りぬいたナイフは奴の左前足を切り落とした。 ・・・凄い切れ味だな。

最低まで減速すると奴は自分の体重を支えられず地面を滑り木にぶつかったのが見えた。

だが・・・傷口から青白い何かが漏れているがあの巨体にもかかわらず片方の前足で立っている。 

ありえな・・・いのは自分も同じか。

だが休ませてはやらん!! トレンチナイフも抜き再度加速する。

するとやつも加速した。 同じ速さではないが一段階分の加速は追いつかれた。


「でもっ!!」


神業に限界は無い!! さらに二段加速し、奴の側頭部にトレンチナイフを突き立て、軽くひねりつつ引き抜く。

加速をとくと、奴はまたも血ではなく青白いなにかを噴出して倒れた。

だが・・・まだ生きているようだ・・・。

ならばと、急いで近づき、僕は


「はあっ!!」


とハンマーを頭に叩き込んだ。

頭は吹き飛び、少しすると巨体は青い炎吹きながら炭のようになり、崩れ落ちたあと消えた。

ふぅ。 頭は文字通りつぶしたが・・・。 あっちは依然としてピンチのようだ。

頭がいなくなっても狩りは続くらしい。 なら・・・。

僕は駆け出した。


「生体加速。」


最低加速で走り、近づく。

すると、狼は接近に気付いたらしく、こちらに近い奴らはこちらに振り向く。

サバイバルナイフとハンマーはしまい、トレンチナイフを強く握る。

ある程度近づき足を止める。 カウンターで仕留める!!

突っ込んできた狼はのどを狙ったのだろう。 首もとへ噛み付くべく飛び掛ってくる。 が・・・。


「はっ。」


ハイキックで蹴り飛ばす。 そして、足首を狙っていたのか少し遅れてきた頭を


「ふっ!!」


旋風を発動し、ハイキックを無理やりローキックへとつなげ、足はくの字を描き、頭を蹴り飛ばす。

すると、何故か狼は2匹とも転がった後弾けた。

グロイ。

・・・まだ数はいる。

が、すでに狼たちは逃げ出していた。 さすがに分が悪いと判断したのだろう。

ふぅ・・・。 とりあえず初の戦闘は勝利を収めた。 ・・・だいぶ魔力を無駄にしたが。



「おーい。 大丈夫か?」

声をかけつつ背の低い手段に近づく。


「な、なぜヒュムがこんなところに!? いや、でかすぎるか!?」

「でも、あの動き・・・。 もしかして!?」

「手当てが先だ!! 早くしろ!!」


声が聞こえるがどうやら警戒されているようだ・・・。


「えーと。 僕は新米だけど天使だから、戦うつもりはないよ?」

「天使様!?」

「「マジで!?」」

「・・・ええ。偉くマジです。」


とりあえず警戒は解いてくれたようだ。

みな程度は違うが怪我をしていたので、消毒し、タイプWILDを塗り、傷口をふさいだ。


「これで、大丈夫かな。」

「はい!! ありがとうございます!!」

「ありがとうございます!!天使様!!」


と口々にお礼を言われた。

・・・天使って存在はわりと有名なんだね。


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