第6話 完全スルー
美咲たちが銀行を出ると見慣れた顔触れがいた。
「………」
「さすが区立千歳台中学最強の4人だな。それにしても、よく動けるな。」
「相手はピストルを所持していたのに、恐くないのか?」
「女の子なんだからあんな危ないことしちゃダメだよ!」
そこにいたのは、今や『青城の王子』と言っても過言ではない4人。黒田拓海と高橋祐輔と大迫駿と椎名雅樹だった。
「………」
美咲は無視して歩き出す。そのあとを追うように美奈と美琴と美帆も歩き出した。
無視されるとは思っていなかったので、拓海を除く3人は呆然とした。拓海はここでも興味無いようで黙っている。
「って、ちょっとなんで無視するの!? 待ってよ!」
呆然としていた雅樹が4人を追いかけに行ったので拓海たちも追った。
美咲たちに追いつくと、雅樹は再び話しかけた。
「ねえ、なんで無視するの?」
「………」
「(出た! 美咲得意の男スルースキル!)」
「(今日も健在だね)」
「(って言うか、私たちもスルーしてるけど)」
雅樹の話を完全にスルーする美咲。その様子を見て苦笑いをしながら小声で話す3人。
あまりにも無視されたので、ついに雅樹は強硬手段をとった。その手段とは、なんと美咲に抱き着こうとしたのだ。だが、抱き着こうとした瞬間、美咲が右足で後ろ蹴りを放った。
「ぐはっ!」
軽く蹴ったため、雅樹は少し後ろに飛ばされた。それを見ていた美奈たちは、苦笑するしかなかった。
「(まさか抱き着こうとするなんて………)」
「(美咲が怒ってない時だったからよかったけど、怒ってる時だったら………)」
「(軽い蹴りじゃあ済まなかったね)」
蹴られた雅樹は蹲っていた。追い着いた拓海たちが先ほどの雅樹の行動に呆れている。
「馬鹿だ」
「確かに」
「同情の余地もない」
そうこうしているうちにファミレスの前まで来ていた。
「早く入ろう。さっきの銀行強盗のせいで無駄な時間使っちゃったし」
「そうだね。早いとこ勉強しないとね」
美咲たちはファミレスに入っていった。
拓海たちも雅樹を引き摺りながらファミレスに向かい、入っていった。まさか同じところだとは知らずに。
ボックス席に案内され、美咲はアイスコーヒー、美奈はアイスティー、美琴はサイダー、美帆はオレンジジュースを注文して勉強を始めた。4人とも頭脳明晰であるため、わからない教科は特にない。ただ苦手な教科はあり、美奈は数学A、美琴は古文、美帆は化学Ⅰ。だが、美咲だけは苦手な教科はないのだ。そのため、美咲が教えることになっているのだ。
「美琴、そこは――――――――だよ」
「なるほどね」
「美帆、これは濃度を求めているから――――――――だよ」
「そっか」
「美奈、この場合は階乗だよ」
「ほんとだ」
4人が集中し始めたとき、1人の声で中断してしまった。
「あー! 4人ともここにいたんだ!」
声の主は先ほど美咲が蹴り飛ばした雅樹だった。