第5話 不運な強盗たち
5月下旬、来週から中間テストが始まるので、みんな勉強している。いつも拓海たちの周りに集まっている女子たちでさえ、勉強している。勿論、美咲たちも勉強している。
「美咲、美奈。今日はどこで勉強する?」
美琴が美咲と美奈に尋ねた。
「ファミレスにしない?」
「それじゃあ、駅前のファミレスにしよ」
ファミレスで勉強することに決まった4人は荷物を持って教室を後にする。
「祐輔! 駿! 今日は一緒に勉強しようぜ! 場所は駅前のファミレスで!」
雅樹が祐輔と駿に声をかけた。
「別にいいけど」
「俺も構わないよ」
「そうだ! 拓海も一緒にやろうぜ!」
興味無さそうにしていた拓海にも声をかけた。すると、拓海は雅樹に言った。
「うるさい。一人でやれよ」
「ひどっ!」
「まあ、いいじゃないか拓海。一緒に勉強するくらい」
苦笑いしながら拓海を説得する祐輔。拓海は面倒くさそうに溜息をついて承諾した。
美咲たちはファミレスに向かっていたが、銀行の前を通りかかったとき、美咲が言った。
「あー! 今日お金を下ろさなきゃいけなかった!」
「それじゃあ、先に銀行に寄ろう」
こうして銀行に入った4人。このあと面倒な事件に巻き込まれるとは、思っていなかった。
美咲たちがATMでお金を下ろし終えて銀行を出ようと出口に向かって歩き出した。その瞬間――――――――。
「動くな!!」
「大人しくしろ!!」
なんと5人組の銀行強盗が押し入って来たのだ。背の高い奴が2人、1人は180cmぐらいの背で青のニット帽を被っていて、もう1人は190cmくらいの背で黒のニット帽を被っている。小柄な奴も2人いて170cmぐらいの背でグレーのニット帽を被っている奴と160cmぐらいの背で茶色のニット帽を被っている奴、最後に160cmぐらいの背の小太りの奴の5人だ。
「金を出せ!」
「早くしろ!」
強盗たちは全員拳銃を所持している。美咲たちはすぐに犯人たちと銀行員と客の位置を確認して捕まえるタイミングを待った。
「(私が合図したら、美奈はグレーのニット帽の奴、美琴は茶色のニット帽の奴、美帆は青のニット帽の奴をそれぞれ確保して)」
「(残りの2人は?)」
「(黒のニット帽の奴と小太りの奴は私が捕まえるわ!)」
「「「(わかった!)」」」
「(くれぐれも拳銃には注意してね!)」
「(えぇ。わかってるわ!)」
「(大丈夫!)」
「(心配ないわ!)」
強盗たちの視線が現金のほうに向いた瞬間、美咲が小さく手を振り下ろした。
「(今よ!)」
打ち合わせ通り、美帆は青のニット帽の奴の背後から一気に近づき懐に入ると、拳銃を持っていた右手のの手首を左手で思いっきり掴むとすぐさま一本背負いで投げた。思いっきり床に叩きつけたため、こいつは気を失ったようだ。美帆は転がった拳銃を確保し、マガジンを抜き取った。
美琴も茶色のニット帽の奴の背後から一気に近づくと左足で股間を繰り出し、激痛に耐えようとしたところを素早く右足で上段の回し蹴りを放った。こいつも気を失ったので素早く拳銃を確保し、マガジンを抜き取った。
美奈もグレーのニット帽の奴の背後から一気に近づくと左足で股間を繰り出した。すると、こいつは左手で股間を押さえながら振り向いたので、美奈は左足の後ろ回し蹴りで拳銃を蹴り飛ばし、そのまま右足で顔面に上段回し蹴りを放った。当然こいつも気を失ったので拳銃を確保してマガジンを抜き取った。
美咲は小太りの奴の背後から素早く近づき、左手で奴の左肩を掴むのと同時に右足で奴の左足の膝関節を蹴り体勢を崩し、右手の手刀を奴の首に放った。小太りは気絶したので素早く拳銃を拾いマガジンを抜き、こっちに拳銃を向けようとしている黒のニット帽の奴の顔面目掛けて投げ付けた。拳銃は見事顔面を直撃して背で黒のニット帽の奴は少しよろけた。その間に美咲は奴に接近して拳銃を持っている奴の右手を拳銃ごと内側に思いっきり曲げ、手首を痛めさせると奴の右手を左手で掴んだまま一本背負いで投げ、床に叩きつけた。奴は当然気絶した。美咲は先ほど投げた拳銃とこいつの拳銃と確保した。
2、3分して警察が来た。その場で簡単に事情聴取をしていると誰かが声をかけてきた。
「女子高生が強盗を捕まえたって聞いて、まさかと思ってきてみたら、また美咲ちゃんたちだったのね」
「真希さん!」
美幸の義従妹の真希だった。
真希は警視庁刑事部捜査第一課第六強行犯捜査強盗犯捜査第2係の警部補だ。
「「「こんにちは、真希さん!」」」
「もう4人ともこういうことは危ないからやめなさい! って、何度も言ってるでしょ」
「「「「ごめんなさい」」」」
「でも、捕まえてくれてありがとう! こいつら、今指名手配中の連続強盗犯なのよ」
この強盗たちは5件の連続強盗をしていて指名手配されていた。
「それじゃあ、4人とも気をつけて帰ってね!」
そう言って真希は現場を去って行った。