第4話 過去(1)
美咲はまだ目を覚まさないので、あとから来た美鈴に任せて、美幸は病室を出て廊下のベンチに座っていた美奈たちにお礼を言う。
「今日は本当にありがとうね」
「いえ……。それより、美咲は一体どうしたんですか?」
「ちょっとね……」
美幸は言葉を濁らせながら、誤魔化した。
しかし、拓海の一言に美幸の表情が一変した。
「諸川克也」
「!?」
「ご存知なんですね」
「……どうして……」
「逃げて行った男に見ながら斎藤が気を失う直前に言ったんです」
「そう……」
「諸川克也とは、一体何者なんですか? なぜ斎藤は気を失ったんですか?」
拓海の顔は至って真剣で、拓海の目を見た美幸は溜め息をつきながら肩をおろし、話し始めた。
――――――――――――――――
7年前、当時29歳だった美咲の父親である晃と美幸は仕事におわれていた。
警視庁刑事部捜査第一課第六強行犯捜査―性犯罪捜査第1係に所属の警部だった晃。射撃や剣道、柔道が警視庁内随一且つ世界一の腕だった。
一方、美幸は美幸は現在勤務している所とは違う大手電機メーカーで課長補佐になったばかりで忙しかったが、しっかり者の美咲が家事を手伝ったり、美鈴や美月、美春の面倒をしっかり見たりしていたため、苦労はしなかった。
そんな幸せいっぱいだった斎藤一家を悲劇が襲った。
事件が起きたのは、8月14日。軽井沢旅行から帰ってきた時だった。
当時はアパートに住んでいて、駐車場が部屋の前にあった。駐車場に車を止めて荷物を車から降ろし終えた時だった。
35人の男が突如現れた。そのうちの1人は警視庁刑事部捜査第一課第三強行犯捜査―殺人犯捜査第5係の警部、諸川克也だ。この男、キャリア組の27歳で警視庁でもトップクラスの射撃と武道の腕前で数多くの凶悪犯を捕まえてきた男だ。
さらにもう1人、美幸と同じ企業に勤務している西嶋春樹だった。