第11話 そっくり
「知り合い?」
「知り合いも何も、同じクラスの男子」
「まあ! そうなの!? 偶然ってあるものなのね」
あまりのことにお互いの顔を見たまま固まる美咲と拓海。そんな2人と対照的に美幸は何故かニコニコして嬉しそうだ。
「美咲、夕飯ができるのにはまだかかりそう?」
「あ、ううん。もう少しでできるよ」
「そう! じゃあ、私は着替えてくるから黒田君はここに座って待って!」
「あ、はい!」
そう言って美幸は寝室に入っていき、美咲はキッチンに戻って夕飯の用意を続けた。
拓海は美幸に言われた椅子に座るとちょうど向かい側に見えるキッチンで料理をしている美咲を少しの間眺め、そのあと部屋を見渡した。
「(マンションのLDKにしては広いほうだな。ということは、このマンションの家賃それなりにかかるんじゃないか?)」
拓海の思った通り、このマンションの家賃は少々高く、美幸は課長ではあるが、男よりも給料は低いため結構苦しい。晃の遺産が1000万円あるが、美幸はその1000万円を美咲たちの学費に充てたため、斎藤家の光熱費や保険料などの生活費は全て美幸の給料だけで成り立っている。
美幸が着替えて出てきてすぐ美鈴と美月と美春が学校から帰ってきた。
「「「ただいま!」」」
「「おかえり!」」
美鈴と美月と美春の3人を見た拓海は少し驚いた。
「(それにしても、斎藤ってお母さんにそっくりだなぁ。しかも斎藤の妹さんたちもそっくりで母娘で街中を並んで歩いていたら美人姉妹にしか見えないな)」
拓海がそんなことを思っていると美鈴が美幸に話しかけた。
「アレ? お客さん?」
「ええ! 美咲の同級生の……、何君だったかしら?」
突然話しかけられて少々焦わてた。
「えっ、あ、黒田拓海です」
「そうそう、黒田君!!」
「それでなんでその黒田さんいるの?」
「さっきね、ナンパ野郎に捕まった時に助けてもらったのよ!」
「そうなんだ。お母さんにちょっかい出すなんて馬鹿な奴だね」
「「ほんとだね」」
「それより3人とも早く着替えてきなさい。もう夕飯で来てるんだから」
「「「はーい!」」」
返事をした3人は、リビングを出て行った。
3人が戻ってくる間に美咲と美幸がご飯やおかずをテーブルに運んだ。拓海も手伝おうとしたが、美幸に止められ椅子に座って待っていた。
着替えてきた3人が来ると、拓海の隣に美幸が座り、その隣に美月が座る。拓海の向かい側に美咲が座り、その隣に美鈴、美春の順に座った。
「みんな揃ったから食べましょうか!」
「「「「「「いただきます!」」」」」」
今日の料理は、鶏の唐揚げと煮物だ。




