第5話 不調
美鈴を送り出すと、全員の弁当を用意する。すると、突然目の前が真っ白になり、クラッとバランスを崩した。
(えっ? やばっ!)
だが、なんとか持ち堪えた。
(疲れがたまってるのか?)
期末テストやバイト、美鈴の修学旅行の準備の手伝いなど忙しかった上、いつもより早く起きたせいか、美咲は少々気分が優れない。しかし、この程度で学校を休むわけにはいかなかったので、美咲は気合いで押さえ込んだ。
放課後、美咲はいつも通り美奈たちと帰ろうとしていた。
「それじゃあ、帰ろう!」
「今日はどっか寄っていく?」
「どっちでもいいわよ」
普段通りの会話をしながら昇降口を出た時、美咲の携帯が鳴った。相手は睦美だった。
「はい、斎藤です」
『美咲ちゃん? 今大丈夫かしら』
「はい、大丈夫です。どうしたんですか?」
『悪いんだけど、今日出れるかしら? 1人来れなくなっちゃったのよ』
「今日ですか……(朝、気分が良くなかったからなぁ。でも、もう平気みたいだし)大丈夫です!」
『ホント! ありがとう! それじゃあ、待ってるね!』
「はい!」
美咲は電話を切ると、美奈たちの誘いを断り、バイトへ向かった。
スイートミルクに着くと、すぐにメイド服に着替えフロアへ。
美咲がフロアに出てから10分後、なぜかまた拓海が来店してきた。
(なんで、今日来るんだ!?)
美咲は驚いたが、顔に出ないようにした。
いつも通り拓海は19時頃までいるだろうと美咲は思っていた。ところが、今日は18時に店を出ていった。スタッフ全員が不思議に思ったが、口にはしなかった。
21時過ぎ、美咲は外のごみ置き場にごみ袋を出しに行く。外に出てごみ置き場にごみ袋を置いたとき、クラッとして美咲は壁に寄りかかった。
(まずいなぁ。これ熱あるかも……)
そう思った美咲は睦美に話して早引きさせてもらおうと、中に入ろうドアへ向かった。その時。
「ねえねえ、君。何してるの?」
後ろから声をかけられ振り向くと、そこには3人のチャラ男がいた。
「君カワイイね!」
「俺たちと“楽しいこと”しない?」
(コイツら、絶対エロいことしか考えてない)
美咲が思ったとおり、コイツらはセッ〇スしか考えていない奴らだった。
美咲は無視して中に入ろうとしたが、腕を掴まれた。
「逃げなくていいじゃん!」
「俺たちが楽しませてあげるからさ!」
美咲は掴んでいる手を振り払おうとするが……。
(力が入らない!?)
いつもの美咲なら腕を掴まれない。たとえ掴まれても簡単に振り払い、捻り上げることができる。しかし、今の美咲は、熱のせいか捻り上げるどころか、振り払うことさえできない。その上、意識が朦朧としてきた。
ここは非常に人通りの少ない。そのため、ここで何か起きても誰も気づかない。
(やばい……このままじゃあ、こんな奴らに……犯される……)