第1話 入学式
4月8日、今日は青城大附属青城高校の入学式。
新しい制服に袖を通した美咲は自室を出て玄関へ向かう。
「もう行くの?」
母の美幸がが美咲の姿を見て声をかけた。
現在時刻は7時20分。
「うん。美奈たちと駅で待ち合わせしてるから」
「そう。ごめんね、今日行けなくて……」
「仕方ないよ、仕事忙しいんでしょ。それじゃあ、行ってきます!」
美咲は自宅マンションを出ると駐輪場から自分の自転車を出し、待ち合わせ場所の千歳台駅へ向かった。
千歳台駅に着くと親友の美島美奈と上条美琴と北村美帆が待っていた。
「おはよう!」
「「「おはよう!」」」
改札を通った4人を何人もの男たちが鼻の下を伸ばして見蕩れていた。ついこの前まで中学生だったとは思えないほどのスタイルとルックスの4人だ。見蕩れるな、という方が無理だ。
そんな視線を全く気にもとめず4人は階段を上っていくと、ちょうど乗換駅である新宿行きの急行が来るところだった。青城大附属青城高校は渋谷区広尾にあるため、新宿で山手線に乗り換えないといけない。
電車に乗った4人は新宿駅に着くと、山手線に乗り換え恵比寿駅へ向かった。
恵比寿駅に着き、電車を降りて改札口を出て広尾方面に歩いていくと途轍もなく広い敷地が見えてきた。その敷地が青城大附属青城高校の敷地だ。青城高校の正門を高級車が何台も入っていく。その光景を見て美咲が口を開いた。
「まったく、学校には自転車か電車を使って徒歩で行くものでしょ! 車で登校なんておかしいわよ!」
「仕方ないよ、ここの生徒の半分近くが上流階級の家柄なんだから」
「そうだよ。高校からの入学者は80人しかいないんだし」
「その入学者も大半がそれなりにお金がある家だからね」
と言って美咲を宥める3人。
しかし、美咲はすかさず3人に突っ込む。
「そういう美奈たちもお金持ちじゃない」
「「「あはは………」」」
美咲の言葉が事実であるため苦笑いする3人。
「それより早く行こう」
4人は正門を通って敷地内に入っていった。
中を歩いていると昇降口前にクラス表が掲示されていた。美咲たちはそこから自分の名前を探す。すると、4人とも1年1組だった。
「「みんな同じクラスだ!」」
「「よかった!」」
「また3年間よろしく!」
「こちらこそ!」
「よろしく!」
またとは、4人は小学1年生のときから9年間同じクラスだった。そしてこの青城高校はクラス替えが無い。そのため、1年のときのクラスがそのまま持ち上がる。つまり、4人は12年間同じクラスになる事が決まったのだ。
「それじゃあ、早く教室に行こう!」
4人が校舎に入り、階段を上って1年1組の教室に向かう。1組の教室に入り黒板に貼られている座席表を見てそれぞれ自分の席に座る。
少しして教師だと思われる人が1人入ってきた。
「はい、席に着いて! これから3年間、このクラスの担任になる橋本弘哉だ。よしく! それじゃあ、今から出欠を取る」
担任のだった。
「―――――――――大迫駿」
「はい」
「――――――上条美琴」
「はい」
「北村美帆」
「はい」
(美琴と美帆以外の名前は知らない人の名前のはずなのに、どこかで聞いたことのある名字ばかり)
そう思いながら一人一人顔を見ている美咲。残念ながら自分の席の列の人の顔は見えない。
「―――黒田拓海」
「はい」
(黒田、拓海。柔道、空手関係で聞いたことがある名前だけど。まさか………ね)
「――――――斎藤美咲」
「はい」
その後も聞いたことのある名字しかなかった。大半が家柄や親の名前が有名で知っているという理由。中には中学時代に部活動で活躍していた人もいた。
先生は出欠を取り終えると、この後のことを簡単に話した。
時間になり体育館に行き、入学式が行われた。新入生代表は本来、主席合格者がやることになっている。しかし、今回は主席合格者が2人いたが双方とも辞退したため、代わりに次席合格者がやった。
入学式が終わり、教室に戻りHRで配布物が配られ、明日以降の予定を聞き解散となった。
「美咲帰ろう!」
「うん!」
「美琴と美帆も行こう」
「OK」
「この後どこか寄る?」
「どうする?」
いつも通りの会話をしながら学校を出て駅に向かう。
恵比寿駅に着き電車に乗ってどうするか話したが、今日はこのまま帰宅することになり、千歳台駅に着くとみんな帰路に着いた。