第12話 最強の4人VSファンクラブ 第3戦 (2)
10分後――――――――――――
「それではこのクジを引いてください。同じ数字の人と勝負します」
クジの結果、美咲が4、美奈が1、美琴が3、美帆が2。ファンクラブ側は4人とも女子野球の選手で日本代表にも選ばれている。クジの結果は1から順に麻生、馬原、千葉、伊達となった。
麻生は身長174cmの右投げ右打ち、馬原は身長168cmの右投げ左打ち、千葉は身長164cmの右投げ両打ち、伊達は身長170cmの左投げ左打ち。
対戦相手を確認すると、じゃんけんをして先攻の順を決め、美咲たちが先攻に決まった。
「それでは1から順に始めます!」
美奈はバットを持って右バッターボックスに入り、麻生はグラブを持ってマウンドへ登る。審判は野球部キャプテンが務める。
「プレーボール!」
麻生は両手を大きく振りかぶる。どうやらワインドアップで投げるようだ。リラックスした状態で投げた。球種はストレートだ。
美奈はまるでバッティングセンターで打つかのようにバットを振る。
カキーン ガチャン
ボールはバットにジャストミートして打球はレフトのフェンス上部に直撃。その飛距離は十分ホームランの飛距離だ。
「(えっ!?)」
麻生は打たれるとは思ってもいなかった。麻生の投げた球の球速は147km/hで女子高校生に投げるたまにしては十分速く、Aの自己最速だった。
麻生は気を取り直し次に決め球のスライダーを投げるも、今度はライトのフェンスに直撃してまたホームラン。
そのあとも麻生は果敢に投げるも簡単にホームランされ、完敗。
攻守交代して美奈がマウンド、麻生がバッターボックス。
美奈もワインドアップでストレートを投げた。麻生はスイングするも空振りでゲーム終了。
球速が147km/hだった。
「嘘……麻生さん負けるなんて………」
「ま、まだよ。あとの3人が勝てばいいのよ!」
2番目の美帆VS馬原。
馬原はノーワインドアップで投げる。
しかし、
カキーン ガチャン
打球は美奈と同じで全てフェンス直撃のホームラン。
攻守を交代して美帆が148km/hのストレートを投げる。馬原も当てることができず、敗北。
3番目の美琴VS千葉でも全く同じで147km/hのストレートを千葉が空振り、千葉の敗北。
そして、ラストの美咲VS伊達。
美咲は左バッターボックスに入り、伊達が投げた球全てを流し打ちのホームランにした。
攻守交代で美咲は左投げ用のグラブをしてマウンドへ。
「(打ってやるわ! 私は打撃も得意なのよ!)」
伊達はバッターボックスに入ると一気に集中する。
「(球種はおそらくストレート)」
球種を絞り込んで美咲が投げるのを待つ。
一方、美咲は―――。
「(彼女はストレートだと思っているだろうから、ここは“アレ”にしよう!)」
美咲は伊達の裏をかいてストレート以外の球種を投げることにした。
美咲がワインドアップから思いっきり投げた。伊達はストレートだと思い、スイングする。「捕らえた!」と、伊達が思ったときだった。ボールの軌道はストレートと同じだったが、ホームベースから1mほど手前でボールが落ち出した。
「(変化球!?)」
そのため、ボールはバットに掠ることなくミットに収まり、伊達は空振り。美咲はストレートではなく、フォークを投げたのだった。
これで伊達の敗北が決まり、4勝0敗で美咲たちの勝ちとなった。