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オキナグサの恋  作者: 嶋恭作ニ
第一話 赤い糸を操る女
8/10

vol.8 心機一転

智樹と別れてから2年ちょっと経った。彼は希望の大阪本社に栄転し結婚もして幸せに暮らしているらしい。

麻央はあれから元の様な仕事だけの平凡な生活に戻り、ようやく智樹のやっていた仕事をマスターした所だった。しかし世の中の変化は急で激しく、会社として自分の担当していた部品群から撤退する事が決まり課長から呼び出された。


「太田さん、噂には聞いているだろうけど今の業務は数年かけて撤退する事が決まった。でもそれに代わる

新部品開発のチーム結成が決まって、君達若い人はそっちに移ってもらう事になった。俺も転勤で営業としてそっちに関わるから今後もよろしくね」


「えー?!課長も移動ですか⁉︎我がチームは空中分解ですね。次の職場と上司はどんな感じですか?」


「次の課長は僕の3つ年上で宮崎さんというんだけど、その新しい商品群開発をアメリカで成功させて今回帰国する超やり手のエリートさ。結構怖がられてるけど実は凄く良い人で酒も大好きな話しやすい人だよ。俺も尊敬している。君も気に入るし話も合うんじゃないかな。」


「でもまたイチから仕事覚え直しですね」


「大丈夫。今までの商品群のマニュアルよりもっと凄いマニュアルがあって、とりあえずそれがあれば何とかなるから。そのマニュアルを作ったのもその人だから、怖がらずに聞きに行けば何でも教えてくれるよ」


'なんか凄い人の下に付くんだな。怖いけど心機一転頑張るか'と麻央は前向きに考えた。'この前までの後ろ向きな自分も失恋のおかげで少しは成長したかも'


そして期が変わりいよいよ新しい職場がスタートした。新課長の宮崎は見た目は普通の40過ぎのおじさんだが、確かに凄かった。厳しいが話の筋は理屈が通っているし、忖度とか遠慮とか一切不用でとりあえずマニュアル通りに仕事を進めれば簡単な仕事は新人同然の麻央でもはかどった。

麻央はマニュアル以外は全くわからない事だらけだったので、前の課長のアドバイスに従ってしょっちゅう宮崎課長を質問責めにした。ベテラン社員達はそんな麻央を見て'良くあんなにしょっちゅう聞きに行けるな。怖くないのか?'などと陰口を叩いていたが宮崎にとってみれば何年かぶりに帰って来たこの工場で若手社員がコミュニケーションを取ってくれるのは嬉しかった。

課全体の雰囲気も若い人間が多かったのでとても良くなった。課長本人が酒好きのせいもあるが前の課の宴会部長と呼ばれた麻央より少し年上の田村先輩も一緒に転籍してきたので前の課同様に飲み会は多かった。麻央はすっかり新しい課になじんで、事務の若い子以外で唯一の女性開発担当者だった事もあり課長を含めた先輩達から可愛がられた。

麻央は2年ぶりに仕事が楽しくなった。


-続く-



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