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オキナグサの恋  作者: 嶋恭作ニ
第一話 赤い糸を操る女
4/10

vol.4 飲み会

新しい職場の雰囲気はとても良く、麻央と智樹の直属の上司である係長と課長がまだ30代でしかも2人とも大の酒好きだった事もあり、麻央の歓迎会を含めて何かと飲み会が設定された。智樹は会社の独身寮住まいだったし、麻央も近くのアパートを会社が借り上げてくれるシステムで帰宅には便利だったので二人とも飲み会にはほぼ全て参加させられた。勿論断る事もできたのだが内心楽しくてむしろ積極的に飲み会を催促していた程だった。麻央も智樹もそれまでは学生時代を含めて余り飲み会に積極的では無かったのにだ。


一方で智樹は関西に帰る頻度が落ちていた。飲み会が金曜日にある事が多く土日に関西に帰省するのが面倒くさいせいもあったのだが、彼女の方にしてみれば面白くない。正式な婚約こそしていないがお互い結婚を前提に付き合っている事は納得していたからだ。智樹にしてみればまだ26歳だし、ようやく仕事も職場も面白くなってきたのでもう少しこの自由な独身生活を楽しみたいとも思っていた。


そんな頃、数週間ぶりに忙しい職場の人間が金曜日に揃う事になり、当然の事の様に飲み会が催された。工場からは徒歩で20分程の最寄の小さな駅にある安くて美味しいいつもの居酒屋に集合した。暑い夏もそろそろ峠を越えたビールの美味しい時期だったせいもあり、飲み会は大盛り上がりとなり自然発生的に近くのカラオケスナックで2次会をやる事になった。麻央も智樹も2次会まで付き合うのは初めてだったが気分も良かったので自然の流れで参加した。特に智樹は仕事の忙しさと彼女からの結婚プレッシャーからのストレスを発散するためか、いつも以上に酒が進んでしまい酔い潰れてしまった。

心配した課長は麻央に'君たちは同じ方向で近いから智樹をタクシーで送って行きなさい'とタクシーチケットを手渡した。泥酔した智樹をタクシーに乗せて自分も乗り込んだ。麻央のアパートの方が近かったので一旦タクシーをアパートの前に止めさて先に降りようとしたが、智樹が目覚めて吐きそうにしていたのでこれはまずいと思った。


「運転手さん、ヤバそうなのでこの人も降ろします」


「それは助かるわ。社内で吐かれたら大惨事だからね」


といって降ろすのを手伝ってくれた。そしてタクシーが去った直後に我慢しきれず道端に大噴火した。


「まったくこんなになるまで飲むなんて智樹らしくない。とりあえずどうしよう??」


「麻央、ごめん。とりあえず水だけ飲ませて」


「じゃあ中入ってちょっとだけ休む?」 


「ありがとう、そうさせてもらうわ」


智樹をアパートの部屋に入れて水を飲ましたら、彼は安心したせいかもの凄く安心した無防備は顔をしてソファに座ったまま寝てしまった。その彼の寝顔を見ながら麻央は'なんて可愛いのかしら。こんな智樹の顔初めて見たわ'と思ってしまった。

その瞬間、何か人生で初めての衝撃的な感情が湧き上がり、「ぶしゅー!!!」と音を立てて何かが智樹に向かって発射された。そして間違いなく智樹に命中した。


-続く-

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