表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オキナグサの恋  作者: 嶋恭作ニ
第一話 赤い糸を操る女
14/14

14. デジャブー?

宮崎は役員になり本社に転勤して行った。

'私を通り過ぎていく男たちは皆んな栄転して本社に行くのね。私ってひょっとして『あげまん』?'などと麻央は思いにふけっていた。


麻央は課長代理に昇格して、課全体のリーダーとなった。課創設以来の古株は麻央以外宴会部長の田村と2年後輩の竹田だけで、その他の先輩(古株)は海外への事業拡大展開でアメリカや韓国やタイなどに転勤して行った。年齢順で言えば田村が課長なのだが、宴会だけが得意な『5時から男』には流石に会社として重要な課の運営任せられなかったのだろう。この人事には宮崎の意向が強く影響した事はいうまでもない。


麻央は2回の失恋を経て益々逞しくなった。宮崎とプライベートでは別れたが本社に転勤するまでの4ヶ月間彼から超スパルタ教育を受けた。マニュアルの充実はもちろんの事、細かいノウハウ、過去のトラブル対処法など叩き込まれた。'もちろんこの人事を想定しての事だったんだろうが、私じゃなかったらパワハラで訴えられてるわ'と思って内心嬉しかった。

田村は麻央の補佐(技術的な事で無く人事や総務的な事を主に担当)、そして竹田は後輩の指導と技術的リーダーとなり、その3人での課の運営はきわめてうまくいった。


麻央は見合いも何度かしたがさすがに心を動かされる様な人とは巡り会えず、恋とはまた無縁になった。

麻央が課長代理になって一年半経ったある日、後輩の竹田が深刻な顔で相談に来た。


「課長、大変です。名古屋のT社から大クレームが入っています」


「あのさ、課長って呼ぶのはやめて、太田さんとか麻央さんにして」


「じゃあ麻央さん、2ヶ月後に納入が始まる新製品がT社の試運転で壊れました。すぐ対策会議を持ちたいから早急に日時を決めて返事しろ、明日にでも来いとかなりお怒りです」


「ん?コレって前にも同じ事あったわよね。デジャブー???」


「課が出来て初めて行った慰安旅行前のM社の件じゃないですか?僕はまだ新人2年目位だったからあまりお手伝い出来なかったけど、宮崎さんと麻央さんで解決したんでしょう。今回は最大顧客のT社ですよ。失敗したら大変な事になりますよ」


M社の件は麻央にとっては忘れられない仕事であり、その事を思い出したら何か力が湧いてきた。この手のトラブルは宮崎のスパルタ教育時の資料がいっぱい残っている。マニュアル化しようと思っていたが多忙で出来ずに麻央の後の書棚に放ってあるままだ。麻央はその書類の山を取り出して竹田に言った。


「今日中にこの資料から今回のトラブルに関連のあるものをまとめてT社説得資料にして。私も手伝うから。T社アポは明日の午後イチよ。アンタと私で出張するからね」


「了解!死ぬ気で頑張ります!」



翌日の夜、麻央と竹田は池袋の居酒屋にいた。

「かんぱーい!竹田君、素晴らしかったわ。完全にT社を説き伏せたね」


「いやいや、麻央さんのおかげです。完璧な準備資料があったからです。堂々としてたし。尊敬します」


「いやいや、ハッタリよ。実はドキドキバクバクだったんだから」


と言った時、麻央は'あれっ?この会話も前にした事ある。またデジャブー?'と思った。

'あっ!?そうか!M社トラブルの後ね。私が竹田でみーさんが私か!'


前日二人とも深夜まで資料作りしたせいか、あっという間に酔いが回ってしまった。特に余り酒が強くない竹田は眠りに入りかけた。


「竹田君、もう出よう。疲れたでしょ、ちょっと休んでいこう」


と言って自動販売機で水を買って近くの公園のベンチで酔いをさますことにした。

'そう言えばこの公園はみーさんとのキスポイントだったな'などと思って眠っている竹田の寝顔を見たら思わず

「可愛い‼︎いつもは黒縁の眼鏡かけてオタクっぽいと思ってたけど、スーツ姿で眼鏡外すのを見たら意外とイイ男なのね。おっとヤバイ!こんな事考えるとまた赤い糸が発射されちゃう。今度は最後の3本目なんだから慎重にならなきゃ」

と我に返ったところで竹田が目を覚ませた。


「麻央さん、大好きです!5年以上も前から!」


竹田は酔いと疲労に任せて告白した。麻央は唖然として固まった。


「5年前、慰安旅行の時、夜遅く海岸に出て行ったでしょう。僕は偶然その麻央さんを見つけてついて行ったんです。そしたら宮崎部長と座っていい感じになったのを見ちゃったんです。あの時麻央さんがが赤い糸を発射して二人がそれ以来繋がれているのが見えたんです。それから5年間ずうっとその赤い糸が消えるのを待ってたんです。宮崎部長が本社に栄転する少し前に消えたでしょ」


「えー!!!!! 竹田君、ひょっとして赤い糸の伝説を知ってるの?あんたも発射したりできるの?」


竹田は黙ってうなづいた。


「麻央さん、受け止めてください!」


『ブシユー!!ぐさっ』


竹田が放った赤い糸は麻央に確実に刺さった。

麻央は赤い糸操作マニュアルを思い出した。


1)自分自身が本当に好きだと思わないと赤い糸は発射されない。発射スイッチは無く本当に好きだと思う事によって自動的に発射される。

2)相手に赤い糸が刺さるかどうかは相手次第で刺さらなかったら恋は不成立、刺さったら成立。

3)恋愛が成立した後で何か不都合が生じた時は自分で赤い糸を切る事によって別れられる。相手は赤い糸を切る事が出来ない。


「麻央さん、一生僕は絶対赤い糸を切りませんから」



-第1話 赤い糸を操る女 終わり -


(オムニバス第2話執筆中、題名未定)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ