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オキナグサの恋  作者: 嶋恭作ニ
第一話 赤い糸を操る女
12/14

vol.12 出雲

宮崎も悩んでいた。

こんな気持ちになるのは20数年以上ぶりだ。大学生の時、初めて付き合った彼女に振られてからまともな恋愛をした記憶が無い。おそらくその大失恋を10年位引きづり30歳過ぎてしょうがなく見合い結婚したのだった。家庭には特に大きな不満もなく、子供も2人設けて傍目にも自分的にも人並み以上に幸せな人生だとは思っていた。


最近の麻央との付き合いはほぼ仕事の流れだし、キスまでは行ってしまったが付き合っている訳じゃないと自分を納得させていた。でもこの抑え切れない感情は間違いなく20数年前と同じものだった。


そんな時、大学時代の親友で飲み友達の飯田から電話がかかってきた。

「おーい宮崎、久しぶり。お前結構鉄道好きだったよな。実はサンライズ出雲の2人用の指定券買ってたんだけど、急に行けなくなったんだ。キャンセルしても良いんだけど、2週間後の金曜夜発のプラチナチケットなんでもったいないので俺が買った値で買わないか?子供小さいから奥さんとじゃ無理だろうけど」 


「是非、売ってくれ。今度飲む時に出雲のお土産付きで払うから」


『サンライズ出雲』というのは今どき珍しい寝台特急で、中々指定券が取れない事で有名だ。瞬間的に麻央の事が浮かんだ。彼女もSL好きというくらいだか鉄道好きではあるはずだ。ダメでも鉄オタの友達はいるし、なんとかなるだろうと思った。

その週の池袋の反省会で宮崎は麻央に恐る恐る聞いてみた。


「麻央、来週末金曜日の夜発の『サンライズ出雲』の2人用指定券を友達から譲り受けたんだけど、良かったら俺と行かない?」


「えー‼︎あのプラチナチケットって呼ばれてるヤツですよね!絶対行く‼︎」


と二つ返事で了解を得た。それが個室だとかその翌日どうするとか何も聞かないで。


「翌朝、朝10時くらいに出雲に着いて観光して夜7時位に向こうで飛行機に乗れば土曜日中にはコッチに帰って来れるけど、ハードスケジュール過ぎるかな?寝台特急は個室だから金曜の夜は良く寝られると思うけど・・・」


「・・・・・みーさんにお任せします・・・・」


麻央は穂乃佳さんに言われた『行くところまで行かないと、赤い糸は見えないし切れないわよ』という言葉を思い出していた。

'どうにでもなれ!!まさか個室とはいえ寝台特急の中でそういう事にはならないだろうけど。でも超楽しみな旅行だわ!!'


翌週の金曜日の夜9時半過ぎ、二人は東京駅にいた。結局翌日どうするのか麻央もあえて聞かなかったし宮崎もあえて答えなかった。寝台特急の個室は快適だった。駅弁やらツマミやら酒類を持ち込んで完全に個室宴会状態だった。二人で飲む事は珍しくなかったが、仕事の事、プライベートの事、終電も気にする事無く何でも話できた。

二人とも寝るのがもったいないと思い、ずうっと話し続けたが、知らぬまま眠りについて起きたのはかなり日が登ってからだった。もちろん何事も起こらなかったのだが、それでも一緒に目覚めた事に幸せを感じ、初めて朝のキスを交わした。


寝台特急は朝10時に出雲市に着き、そこからはお決まりの観光モデルコースである出雲大社参拝、神門通りで出雲そばやぜんざいなど名物グルメを堪能し、神々を迎える神聖な海岸として有名な稲佐の浜や日御碕神社・日御碕灯台を散策した後には夕方4時を過ぎていた。

東京に帰るには午後6時くらいには空港に行かなくてはならないが、実は宮崎は宿を予約していた。


「麻央、実は今夜旅館を予約しているんだけど。'お任せします'って言ったから」


麻央は宮崎の腕を取り組んで言った。


「行こう。豪華夕食と温泉付きでしょ!早く行かなきゃ!」


その夜、二人は行くところまで行った。


-続く-




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