vol.1 スピルチュアルカウンセラー
オキナグサの花言葉は「裏切りの恋」だそうです。
失恋において振られた方は'裏切られた'と思うものですが、その裏切りに隠れている「事情」というのは少なからず存在するものでしょう。今回作は前作「類魂」ほどリアルなノンフィクションではありませんが、自分を含めた知人、友人の失恋話を元にリアルな失恋について様々なパターンをオムニバス形式で綴ってみました。失恋はバッドエンドと思われがちですが、必ずしもそうでは無い事は付け加えておきます。
麻央は指定されたファミレスに来ていた。約束の時間までは5分以上あるが、どんな人が来るんだろうと不安でキョロキョロ見回していた。
話は1ヶ月前に遡るが、麻央は親友の香織と久々に会い盛り上がってお酒も入っていたせいか、つい愚痴ってしまった。
「ねえ香織。私、実は恋した事無いんだ。'あっ、あの人カッコいい'とかの軽い憧れはあるけど本当に好きになるっていうのがわからないんだよね。もう大学卒業を控えた22歳の乙女がだよ。私って変だよね」
「あんた、それは重症だよ。良いお医者さん紹介するよ。実際は医者じゃ無くてスピルチュアルカウンセラーなんだけどね、その人が凄いのよ。TVに良く出てた江原啓之さんは知ってるよね。あんな感じで人の内面にズバズバ切り込んでくるし、それがまた当たっていて人生相談にもなるんだよね。もう卒業だから暇でしょ。日時を向こうに合わせれば予約は取れるから連絡しておくね。あんたのメールアドレスに返事が行く様にしておくからね。」
香織の強引な紹介に戸惑ってはいたが、そういうのも一回チャレンジしてみるかと思い彼女に任せたのだ。そのカウンセラーを今待っているのだ。すると何処からかいきなりその人は現れた。
「麻央さんですね?私、香織さんを通して依頼を受けたカウンセラーの穂乃佳と言います」
「あっ!そうです。今日はよろしくお願いします」
'いったい何処から現れたんだろう?キョロキョロしてたのに全然気づかなかった。それにしても不思議な感じの人だな。年齢不詳、一見普通のおばさんだがちょっと先生みたいでもあり緊張するタイプだな'などと思っていた。
「大よそのお悩みは香織さんから聞いているけど、まずあなた自身を観させてね。念の為あなたのフルネームと生年月日を再確認させて。それが鑑定の基礎だから。後は事前に大体見えて来た事と一致するか再確認するから」
と言って手帳と分厚い辞書みたいな本をしばらくチェックしていた。'へえ、私の事事前にチェックしてくれたんだ'と感心してその人の事をしばらく眺めていた。
「お悩みは'恋愛した事が無く、この先どうすればいいのかわからない'という事で良いわね」
「はい、その通りです。香織からはどのくらい話が行っているんですか?」
「基本的にそれだけよ。なるべく先入観が入らない様に基礎情報以外は最小限しか事前に聞かないの。だから今日もまず私からあなたについて観えた事からお話しさせてもらうわ。」
穂乃佳さんは麻央について
1)異性に対して恋愛的に好かれる自信がない。世の中の男は外観から入るから自分なんてそもそも対象外と諦めてしまう。だから化粧もオシャレもしない。
2)でもいつかは自分の内面を認めてくれる王子様が現れると内心期待している。
3)性格は控えめで自己顕示欲が無い方で、恋愛には特にその傾向が強く出る。音楽をやっているみたいだけど主旋律を奏でるより伴奏で縁の下の力持ちになる事を好む。
4)自分ではあまり気づいて無いかもしれないが、意外とスピリチュアルな力は強い(霊感など)
という内容の説明を一気に話した。
麻央はビックリを通り越して、愕然とした。言われた事は100%その通りだったからだ。香織からはほぼ情報が入っていないと言っていたが後で電話して何処まで話したのか確認してみよう。でも彼女にも話していない事も半分以上あったし自分でも内心そうかも知れないと感じていた事もあるので、これはいずれにしても穂乃佳さんを信じるしかないなと覚悟した。1)と2)は一般的にこういう悩みのある人はそうなのかも知れないが、ピアノをやっていてその発表会の事でピアノの先生と揉めている事(麻央は出たくなかった)や最近ピアノ伴奏を地元の合唱団から依頼されてそっちが楽しいくてピアノ教室を辞めたい事、金縛りに合って霊が見えたり他人の考えている事が妙にわかる様になったりして来た事があったからだ。これらの事は香織も知らない内容だ。
「すみません、100%いや120%その通りです」
穂乃佳さんは続けた。
「あなたは外観とかにコンプレックスがあったり、控えめで縁の下の力持ち的な立ち位置が好きでしょう?
コンプレックスは自信がない事から来ているの。あなた自身の控えめなパーソナリティは素晴らしいし、外観だってちゃんと化粧してヘアスタイルも意識して、眼鏡もオシャレなものにするとかコンタクトにするとかすればかなり可愛いんだから。でも私が言いたいのはオシャレして外観を整えなさいということでは無いの。その事はあくまであなたが自信を持ちなさいという意味で言っただけよ。あなたも恋をしたらオシャレしたくなるわよ。したくなったら出来るし可愛くなるという自信を持つだけで良いの。」
「それであなたの相談の本題に対する解答だけどね。今後王子様が現れる事はあると思うわ。だけどそれが一般的に言われている王子様かどうかは違うと思うの。あなたにとって王子様かどうかという事を見極めてね」
「どうやって見極めるんですか?」
「それはね・・・・・・・」
-続く-




