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偶像の証明  作者: 川村尋之


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秘書の死

ネット上では、死亡した岡島についての投稿が目立つようになっていた。


 彼の死を惜しむ投稿はごく少数で、ほとんどが、岡島が政治資金を横領していたとか、岡島が佐原玲子を恐喝していたとか、岡島はマスコミのスパイだったとか、あげくの果てには、岡島は覚せい剤の常習者だったという根拠のない憶測が凄まじい勢いで拡散されていた。


 その中で玲子の投稿がひときわ目を引く。

 

《岡島さんは確かに能力的な問題もあったし、女性問題も抱えていましたが、基本的にはとても優秀な方でした。ご冥福をお祈りします》

 

 この投稿を信じた信者たちが、岡島が不倫をしていたという根も葉もない情報を拡散していた。

 

 

       ◆

       

       

 スーパーの店内。買い物客がそれぞれ目当ての品をカゴに入れている。棚に商品を並べている静江。

 

 ある日のこと、母の自宅に置いてある小型の金庫に五百万円を入れる玲子。


「銀行に預けたらいいじゃない」

 居間でお茶を飲みながら玲子に声をかける静江。

「うん、もちろん預けるつもりよ。でも、またすぐ必要になるかもしれないから」

 そう言って母の前に座る玲子。


「どう?議員の仕事は?」

「もうやることが沢山あって大変よぉ」

「そりゃそうよ、だって市民の税金からお給料もらってるんだから、大変に決まってるでしょう」

「そうね」

「お父さんも喜んでるわね、きっと」

「だといいけど」

「喜んでるわよ、一人娘がこんなに立派になって、母親には毎月きちっと仕送りまでして、こんないい家にも住まわせて……」

 突然、言葉に詰まる静江。


「お母さん?」

「ごめんね、玲子…。してもらってばかりで、何もしてあげられなくて……」

「やだ、泣かないでよ、今まで十分すぎるほど良くしてもらったわよ」

「お父さんにも今の玲子を見てもらいたかったわ……」

「お母さん…」


 玲子……。

 

 立ちあがろうとした時、突然、静江の頭に激痛が走る。今まで感じたことのない強い痛み。思わずその場に倒れる静江。


 その場にいた買い物客の誰もが驚き、倒れた静江に、大丈夫ですか!?と声をかける。

 

 

      ◆

      

      

 夕刻、議員会館の事務所には玲子一人が残っていた。


 机に肘をつけ、指先で天板をトントンと叩きながら、落ち着かない呼吸を繰り返す。そこへ電話が鳴る。見知らぬ番号だった。


 嫌な予感がする……。電話に出る玲子。それは病院からの電話だった。

 

 玲子が病院に到着した頃には、すでに日が沈みかけていた。


 対面した医師から、くも膜下出血と告げられる玲子。


 幸い、運び込まれるのが早かったため、一命は取り止めたが、それでも予断は許さない、後遺症が残る可能性もあることと告げられる。ベッドの上の母は、口元を酸素マスク、胸元には心電図の誘導リードが付けられ、その姿は痛々しかった。


 このまましばらく様子を見ますと言って、医師はその場を去っていく。


 いつから家族で出かけることがなくなっただろうか。記憶では中学三年生の夏休みに家族でディズニーランドへ行ったのが最後だったように思う。


 その頃にもインターネットはあったが、そんなに活用していなかった気がする。とにかく当時は勉強を誰よりも頑張っていたし、いい大学、いい会社に入ることで豊かな人生が手に入ると信じていたし、実際、大学を出てからは大手広告代理店に就職した。


 周りから見れば恵まれた人生を歩んでいるように見えるかもしれない。

 

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