表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偶像の証明  作者: 川村尋之


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/24

重要証人

 自動車修理工場。ガレージの前で葵と田上が立っている。

 よく晴れた快晴の昼下がり。


 空を見ても何も感じない自分。


もう何年になるだろう。昔は雲が多いとか、虹が出てるとか、そんな些細なことで大喜びしている時代もあったが、今はまったく興味もない。


 ガレージから作業着の中年男、水嶋が出てくる。


「いやぁ、お待たせしました」

警察手帳を見せる葵と田上。


「警視庁捜査二課の田上です」

「同じく大野です」

「ああ、こりゃどうも」


 佐原玲子の支持者の特徴として、風貌が冴えないという特徴がある。中には見るからに負のオーラを撒き散らしているようなうだつの上がらない人間もいる。


 この水嶋という男は、まぁ普通な感じだ。


「能力開発カンパニーのことでしたっけ?」

「ええ、佐原玲子さんが顧問を務める会社です。水嶋さんは何度かセミナーに行かれたことがあると聞きまして」と葵が言った。


「ええ、行きましたよぉ、三回くらい行ったかな、でもほら、あそこ高いんだよね、一回のセミナーで五万とかするからさ、それになんかどっかの本に書いてあるようなこと喋ってるだけで、あまり役に立ちそうでもなかったし」


 大した話は聞けそうにないか、葵も田上もそう思っていた。


この男が金の流れを知るはずもないし、あくまでも証言の一つを得るための聞き込みである。


「あ、そういえば岡島さんとも一緒になったことあるな」

「そうなんですか?」と田上が聞く。

「ええ、岡島さんもね、玲子さんに行くように言われたって言ってたな」

「岡島さんって佐原さんの秘書になってもう長いんですよね?」と葵が聞く。

「三年くらいじゃないかな?まぁ、最近はあまりうまくいってないみたいだけど」

 含みを持たせる水嶋。葵がちょっと食いつく。


「うまくいってないって?」

「前にね、他の支持者さんが言ってたんだけど、人前で玲子さんにこっぴどく叱り飛ばされたらしいんだよね。岡島さん。それ以外にも、けっこうキツく当たられててね、最初は岡島さん、かなり頼りにされてたらしいけど」

「なんでそんな風になったんですかね?」と葵が聞く。

「色々と岡島さんが口を出すから、疎ましく思われてるんじゃないかな?玲子さんも前に岡島さんにイラついてるポストとかしてたもんね。割と有名な話ですよ、支持者のなかでは」

「水嶋さんは、今も佐原玲子さんの支持を続けてるんですか?」

 と田上が聞いた。

 水嶋が笑いながら答える。


「いやぁ、私はもう一年くらい前に支持やめてますよ」

「そうなんですか?」

 と田上。

「ええ、なんか不正を暴くだの権力に立ち向かうだの言ってるけど、一貫性がないなって思っちゃって。ほら、今話題になってる裏金の話、あれもね、収支報告書なんか見ると明らかに不自然だもんね、金の動きが。だからやめたんですよ」

 

 

       ◆

       

       

 二人で街中を歩く葵と田上。歩きながら状況を整理していく。


「あんなふうに支持者をやめる人間もいるんだな、洗脳から解けて、まともな人間になれて良かった。なぁ?」

 と田上が葵に話しかける。


「佐原玲子とその秘書は、うまくいってなかったんですね」

「そうだな、あの女、人の意見とか聞かなそうだもんな」

「たぶん金のこともかなり口出ししてたんじゃないですかね?あの秘書さんは信者の中でも少しまともな気がします」


 話しているうちに何か嫌な予感を感じる葵。その予感は田上も感じていたようで、少し沈黙ができてしまう。


「ねえ、田上さん。もしですよ?もし岡島が、金の流れを把握していたとして、佐原玲子との関係性も悪化してるとしたら」

「岡島から崩せるかもしれんなあ。あたってみるか?」

 浮かない表情の葵。


「大丈夫ですかね?岡島」

 佐原玲子の信者たちは玲子のためならなんでもする。それが葵の結論だ。


 不正の事実を知っていると思われる岡島が邪魔になれば、当然殺すことだって考えられる。


「岡島を…保護するか」

「…?」

「ちょっと大袈裟な気もするけど、佐原信者はもう完全にカルト化してるからな、あの女がやれって言えば素直に従う犬猫は多いはずだ」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ