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ため息
薄暗い刑事部屋の机に、葵は一人座っていた。
資料を見ながら何やらノートに書き込んでいる。
「この会社に三百万でしょ、この政治団体には二百万、ここにも二百万、で、百万円がこっちに寄付されて………なんじゃ、これは」
どうやら、佐原玲子の寄付金の流れを葵なりに整理しているようだ。
だが、あまりにもいろんな団体を挟んでいるため、すぐにお手上げ状態になってしまうのだった。
ボールペンを放り投げ、椅子の背もたれに大きく背中を預ける葵。玲子の母の顔が浮かぶ。
あの子は、国のためにしっかりやっているんです。それなのに、こんな恨みを買うなんて…
田上が逮捕したオレオレ詐欺の若者の母親の話を思い出す。
高校生の娘を失い、葵に敵意の目を向ける母親の顔。
そして、あの日、幼い葵を真剣に叱り、頬をぶった時の母の顔。
剣道の素振りをする幼い葵に、指導する父の優しい顔。祖父が学校に呼び出された帰り道、二人だけの秘密だと笑った祖父の顔。
次々と浮かんでは消える。
葵は頭を振って立ち上がり、コーヒーポットのところへ行く。コーヒーのいい匂いが鼻をつく。紙コップを取って、コーヒーを注ぎ、ズズッとひとくち啜る。
はぁ………と深いため息をつく。




