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偶像の証明  作者: 川村尋之


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子を想う母

 朝から雨が降っていた。


 議員会館の廊下で、昨夜遅くから降り続く雨を深刻な表情で見つめている岡島。

 

 

       ◆

       

 

 警視庁の廊下を歩く土屋と田上、そして葵。

「佐原玲子の母親ですか?」

 と葵が言った。


「ああ、玲子が毎月、母親にいくらか送金してるみたいだ。それ以外の金も流れてるかもしれんな」

 と土屋が答えた。


「母親は関係ないんじゃないですか?」

 と田上が訝しむ。


「どうしてだ?」

「いや、母親ですよ?子供が悪いことしてたら、ぶん殴ってでも止めるのが母親じゃないですか」

 

 子供の頃、些細なイタズラをして母にぶたれたことを葵は思い出した。どんなイタズラだったのか、今では思い出すこともできないが、葵の記憶の中で母にぶたれたのは、後にも先にもこの時だけだった。

 

「最近はそういう親も少ないだろ、それに、母親はワケアリの金だと知らずに預かってるって可能性もあるだろ」

「ああ、そうか」

 と納得する田上。

「考えられる可能性はすべて潰していかんとな……ということで、佐原玲子の母親を今日呼んでるから」

「そうなんですか?」

 と二人して同時に驚く葵と田上。


「参考人というより、被害者として、だけどな」

「被害者……どういうことですか?」

 と葵が言った。



 警視庁のロビーまで出てくる二人。

「佐原玲子の母親の自宅に、殺害予告の手紙が届いたと所轄に相談があったらしいんだ」

「殺害予告ですか…」

 と葵が言った。


「事情を聞いてるうちに、佐原玲子の母親だということがわかってな、それで所轄からうちに連絡がきたってわけだ」


 そこへ所轄の刑事二人に付き添われて、小柄な年配の女性がやってくる。葵たち三人がその女性に目を向ける。少し疲れた印象の女性だ。


 一行が、葵らの前までやってくる。所轄の刑事たちは簡単な自己紹介をし、この女性が佐原玲子の母親・佐原静江で、殺害予告の被害者であることを伝える。


 刑事から証拠品として透明のビニールに入れられた脅迫状を渡される土屋。

 

 

       ◆

 

 

 会議室の長テーブル、玲子の母、静江の向かいに座る田上と土屋。土屋の前には脅迫状が広げられている。パソコンか何かで作ったのだろう。


 「佐原静江、娘と一緒にお前も殺す」とだけ記載されている。

 土屋が封筒を手に取りながら

「封筒は直接投げ込まれてるみたいですな」

「そうなんです、だから余計に怖くて」

「指紋も出なかったそうです」

「脅迫状がポストに投げ込まれたのはいつ頃ですか?」

 と田上が訊ねた。


「おととい、仕事から帰るとポストに入っていて…」

「心当たりは?」

 と田上が続けた。


「さあ、娘は、自分のアンチではないかと言ってましたが」

「そうですか、しかし……どうやってお母さんのご住所を調べたのかなあ」

 と土屋が不思議がる。


「あの……」

「わかりました。ひとまずは、所轄と協力して、ご自宅周辺のパトロールを強化しましょう」

 と土屋が言った。

「安心ですわ…」

 続けて土屋が続ける。


「しかし、娘さん、すごい人気ですなぁ」

「……刑事さんからは、そう見えるのですね」

 田上と土屋が顔を見合わせる。

「今一番、旬な政治家だと思いますよ」

 と田上が言った。


「でも、こんな脅迫状が届くなんて…。あの子は、国のためにしっかりやっているんです。それなのに、こんな恨みを買うなんて…」

 葵たちは何も言えなかった。

 

 

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