今日の隠れんぼ・・・「硬貨」
日本はかつてのバブル期を過ぎ、衰退期に向かって突き進んでいるようである。 その証拠の一つに金融機関への預け入れがある。預金を引き出すのに手数料がかかるというのはまぁわからないでもないが、硬貨などを貯金するのに入金の手数料がかかるというのは納得がいかない。これまでは1円玉貯金として、1円玉を大きな瓶や箱に入れていたが、多くなればなるほど預けにくくなるのは不思議なことである。1円玉を500枚貯めても500円だが、ゆうちょ銀行に預けたら結局50円のマイナスが出ることになる。コストや効率に問題が起こるのはわかるが、複雑な思いになる。
我が家では手数料がかかることを理解できない母が1円玉、5円玉、10円玉、50円玉、100円玉、500円玉と、全ての硬貨をお釣りなどで入手するたびに空き箱などに貯めていた。
先日、夕飯も済んで時間ができた時のことである。母が小銭を数えようと言って、硬貨の入った箱を持ち出してきた。まずは1円玉からテーブルの上に全部広げて、10枚ずつ取って箱に戻している。だが途中まで数えると、「幾らまで数えたか忘れたわ」という。「数えるたびに書いていけばいいよ」という私のアドバイスに従って、ようやく最後まで数え終えた。しばらくすると、ついさっき数えたことを忘れて、もう一度数えようと、一から始めていく。
ところが、ここで不思議なことが毎回起きる。数えるたびに金額が違うのだ。 そしてもう一度数え直す。するとまた違う。どうやら我が家では硬貨が隠れんぼするらしい。もちろん私は何もしていない。数えるのは老化防止になるし、何より本人が喜んでいるのだからいいかと思って見守っている。本人はいつも「これを郵便局に預けよう。そしたらいくらになる。明日にでも郵便局に行ってこよう」といい、「どうせ行くなら、もっとためてからにしよう」と胸を膨らませている。私は母が夢を打ち砕かれる姿は見たくないので、いつ「今から郵便局に預けに行ってくる」と言い出すのではないかと、ヒヤヒヤしながら今日も見守っている。そして母は今夜も数え出すのだ。1枚…2枚…。
それにしても、ささやかな老人の夢をぶち壊す郵便局等金融機関はひどい奴らだ。ヒュ~、ドロドロ…。恨めしや~。