今日の隠れんぼ・・・「シャンプー」
母の好きなことの一つに「洗濯」がある。いや、正確に言うと、「洗濯している洗濯機を見る」のが好きなのだそうだ。だから一日に一回は洗濯機が動いているのを見ている。そしてちゃんと動いているかを確認するためにフタを開けて確認しようとする。
洗濯機は危険防止のため、動いている時にフタを開けると、緊急停止するように作られている。そして警告音が鳴るようになっている。しかし、開けてしまうのだ。したがって一回洗濯するたびに何度も何度も警告音が鳴り響く。本人は耳が遠いので、それがわからない。そしてフタを開けて止まった洗濯機を見て、どうして止まったのか、なぜ動かないのかと思いながら、じっと見つめている。
「フタを開けたままでは終わらないよ」と何度教えても忘れて、同じことをする。洗濯機に注意書きを貼り付けても同じことだ。何度も同じことをされてでも耐えている洗濯機が気の毒になってくる。
少量の洗濯物でも一回分として洗濯機にかけるので、洗剤の減りも早い。最近のジェルボールや液体洗剤は母には使い方がわからないので、我が家ではいつも 粉石鹸を買ってくるのだが、少量の洗濯物にでもスプーン一杯を入れるので、すぐになくなってしまう。すると母はいつも驚きの行動に出る。石鹸を包丁で削って粉状にして使用する。それに疲れると風呂場に行き、ボディソープを洗剤の代わりに使うのだ。道理ですすぎの水が濁るはずだ。ボディソープが切れると、次はシャンプーを使う。
何度注意しても「泡立つし、体を洗うものだから悪いはずはない」と言い切って使う。母の頭の中では泡立てばどれも同じなのだろう。
先日、風呂に入り、頭を洗おうとしたが、シャンプーがなかった。洗濯機の横には空になったシャンプーの容器が転がっている。
そして私は見てしまった。その横に置いてあるものを。
それは浴槽洗いのバスマジックリンだった。今日はこれで洗濯をしたのか…。 さらに液体歯磨きもなくなっていることに気づいた。
洗濯が趣味なのはいい。しかし、洗剤はどれでもいいというわけではないということに、いつか気づいてくれるのだろうか。