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遥か、ミライ地図  作者: もりたろう


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[蛇足] 水ヶ谷神社 - 私の願い事

 ようやく静かな日常が戻り始めた。

 ずっと騒がしく、私の住処を人が往来するものだから、私の寝床は奪われたようなものだった。


 やむを得ない事だとは思っている。

 その上、願いは叶えられたのだから、贅沢は言うまい。

 たった短い時間の辛抱だ。住処の裏手の、人気のない木陰でひっそりと過ごすこととしていた。


 私のお気に入りの寝床へと戻って、体を丸める。

 人がここを訪れることも、当分無くなっていた。

 安心できる日常が、戻りつつある。



―――――――



 おや、いくつかの人間が私の住処を訪れたようだ。

 木陰で様子をうかがうと、1人はいつもこの場所の手入れに来ている娘だった。

 だが、残りは覚えのない人たちだ。彼女の友達だろうか?


 ……いや、もう一人の娘の方は見覚えがある。

 あの時の、半分空っぽの奴じゃなかったか。

 しかも名が、みらい、であるはずだ。


 私の知る「みらい」とはかけ離れた雰囲気で、当時は本当にがっかりしたものだ。

 一瞬だけの、彼女との再会の希望は、当然のごとく無に帰したわけだ。


 まぁ、それでもだ。

 彼女には、結局はこの村を救ってもらったらしい。

 私だけの力では、誰に何も伝えることは出来なかった訳だ。

 友に聞くには、私は相当な迷惑を彼女にかけてしまったらしい。

 ……この恩、どう返したものかな。



 1人の少年の目がこちらに向けられた。

 他の人にも私の居場所を伝えたようで、4人がぞろぞろと私の下へやってくる。


 厄介だ。興味本位で近寄ってくる輩は、ろくなことが無い。

 だが、まぁ、あの越路の娘がいるから、危害を加えてくる心配は無いか。


 では何の用事だろうか。慎重に彼女らの動向を見守る。


 私の近くに立ち止まった。

 みらい、と名乗る少女がしゃがんで、1つの紙を私に差し出した。



 あぁ、そうか。

 この地図を人間に渡したままだったか。

 それを返しに来たのだな。


 彼女が言う。


「この地図のお陰で、この村は救われた様です。私たちの大好きな村を守ってくれて、ありがとうございました」


 4人が頭を下げる。


 それは違う。

 結果的に、私は村を救うきっかけを作ったのかもしれない。

 だが、それを成し遂げたのは、そこの村の人たちだ。

 結局のところ、私は直接は何も力になれなかったのだから。


 もう一人、少年が私に別の紙を差し出した。


「新しい地図も、預かってもらえないでしょうか」


 私は何も言わず、2つの地図を彼らから取った。


 彼らは満足そうにして、もう一度頭を下げたのち、神社を後にしていった。



 2枚の地図を咥えた。寝床に戻ろう。

 そして、寝床の一番底に、この地図を隠した。


 古い地図は、私を一番愛してくれた彼女の象徴だ。

 わが唯一の友を、肌で感じられる最後の形見なのだ。


 新しい地図は、そうだな。新しい時代の象徴にでもしようか。

 時代は変わっていくのだ。彼らも、強くなっていく。



 疲れたな。

 でもこれで、私も、友も、安心して眠りにつけるだろう。


 もう、良いだろう?

 私は、体を丸めて眠りにつく。


 誰かが、少し笑った気がした。


 心地の良い風が吹いた。

 あたりに、淡い水色の輝きが零れる。

 すぐ横に刺さっている旗が、音を鳴らす。

 風は私の周りを廻った後、力強く広い青空に向かって吹きあがっていく。

 遠い遠い、遥か彼方まで。

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