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遥か、ミライ地図  作者: もりたろう


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[ミライ] 未来を導くもの ②

 3日目。


 悪夢が止まらない。

 昨日と同じ調子。いよいよ寝不足だ。

 夜眠れないのは、中々に堪えた。それに、得体の知れない感情が襲ってくるのは、素直に怖い。しかもこんな状況、誰かに相談しても、きっと信じてもらえない。疲れているんだとか、休みなさいとか、そんな風にしか言ってもらえないだろう。

 打ち明けにくい悩みを抱えてしまった。


 でも、何もかも、この地図が導いてくれる。

 この地図の示す場所にたどり着けば、私は全て元通りになれるんだ。

 そう思っていた。


 そして、4人でミライ地図を巡る。


 地図の示す目的地にはたどり着けなかった。


 壁が立っていた。行き止まりだった。

 私は、何も思い出すことができなかった。何も手に入れられなかった。


 急に自分のことが怖くなってきた。

 自分の今までのことが思い出せなくて。きっと、色々な大切な事を忘れていて。

 夜な夜な、変な声に怯えて。

 これから先、もしかして、自分はずっとこんな調子なのだろうか。


 記憶喪失は、いつか勝手に治るだろう、と楽観的にとらえていた。

 ……いや、ずっと治る気配のない状況から目を反らしていただけだったのかもしれない。

 でも、ずっとこのまま、という可能性が現実を帯びてきた。

 唯一の手掛かりだった地図は、私に何も与えてくれなかった。


 怖くて泣きだしそうになった。

 全てを投げ出して、誰かに縋りたかった。

 誰でもいい、何でもいいから、私を何とかしてほしかった。


 足から力が抜けて、地面に座り込んでしまった。

 辺りの景色がぼやけて、思考が濁ってくる。


 ふと、私の肩に誰かの手が触れた。


 大丈夫だよ。


 ハルがそう言った。

 励ましてくれているのだろうか。

 何の根拠もない、大丈夫、という言葉。


 でも、今の私に縋れる先なんて誰もいなくて。

 もういっそハルに全部心の中をぶちまけてしまおうかとも思った。


 ハルの手に触れて、強く縋るように。

 私はハルの手を握った。


 自然と心が落ち着いてくるのが分かった。

 どうしようもなかったら、ハルに全部ぶちまけてしまおう。

 そう思った。何だかそれだけで、とても気が楽になってきた。


 そうやって気持ちが落ち着いてきたら、今度はなんだかハルの「大丈夫だよ」という言葉が引っかかった。

 いや、なにも大丈夫じゃないんだよ。みらい地図、辿れなくなったし。


 笑えてきた。

 気持ちが穏やかになってくる。

 立ち上がって、深呼吸。


 そして、ハルに「もう大丈夫」と伝えた。

 何故か、ハルが苦しそうな顔をしていた。

 やっぱり、心配させちゃったかな。申し訳ない気持ちになった。


 でも、ちょっとだけ、ハルが近くにいることが、心の支えになっているようにも思った。

 ……ちょっと頼りないけどなぁ。



 で、なんだかんだあって、みらい地図の続きの道を壁の上に見つけた。

 みらい地図、まだ終わってなかった。目的地には何とかたどり着けるかもしれない!


 そうやって、梯子作りが始まったのだった。



 夜。

 私が寝れてない事をハルに気づかれた。

 また変な声にうなされて、目が覚めた。横を見たらハルが起きていて、目が合った。


 そしたら、ハルが頼ってほしい、なんて言った。

 私が外に連れ出したことに感謝していて、そんな風に他人を助けられる私みたいになりたい、だって。

 私がハルを外に誘ったのは、自分勝手な理由からだ。全く感謝されるようなことはしていない。


 でも昼の事を思い出した。

 いっそ、思ってること感じてること、全部ぶちまけちゃおうかと。

 一瞬そう思ったけど、流石に思いとどまった。

 でも、今の私の変な現状、ハルなら信じてくれる気がして。悪夢の事を打ち明けてみた。


 話していたら、なんだか今の自分が無性に孤独に思えてきた。

 記憶が戻らなかったらどうしようとか。なんで私はこんな苦しい目に合わなきゃならないんだとか。

 強がってた自分が堰き止めていた感情とかがあふれ出して、何故か涙があふれてきた。

 ただ、今の現状を口に出しただけなのに。


 でも、取り乱した私の話をハルは真剣に聞いてくれた。

 あり得ない、非現実的な話なのに、茶化すことなく受け止めてくれた。

 信じてくれた。


 ハルにも私の現状を知ってもらえただけで、なんだか心がスッキリした。

 打ち明けてみるもんだな、って思った。



 4日目。


 やっぱり眠れなかったけど、気分は悪くなかった。

 何だか、胸につっかえたようなのが取れたような。

 ハルに打ち明けて、ちょっと気は楽になったみたい。


 そして大部さんに設計図を作ってもらった。

 結寿葉さんに色々貸してもらった。


 梯子作りに向けて、皆で取り組んだ楽しい1日だった。



 5日目。


 寝不足が極まってきた。

 全く眠れないわけではないが、1時間おきくらいに目が覚める現状、体の疲れが取れなくなってきた。

 この調子じゃいつか体も壊しそうだ。

 どうしても限界を迎えたら、大人しく病院にでも連れて行ってもらおうと思った。でも、なんか病院でこの変な話するの嫌だなぁ。


 と、当時は思っていたようだ。

 どちらにしても、今、病院に入院しているわけだが。


 後は、梯子作りに向けて。

 田中さん、山守のおじいさまのお手伝いをして材料を集めた。

 皆で梯子を組み立て始める。やっぱり楽しい1日だった。



 夜。


 体力的にも限界が近いかもしれない。夜、意識がもうろうとし始めた。

 ハルにも心配された。


 そして、いつも通り眠れずに目が覚めた時、ハルがこっちを見てた。

 ずっと起きて私の様子を見てくれていたみたいだった。


 あぁ、ハルに余計な気を掛けさせちゃった。と思った。

 前、私の事を伝えてしまったのを後悔した。

 自分のせいで誰かに迷惑をかけるのは、本当に嫌だった。


 でも、もうハルには伝えてしまった。

 そして、伝えるだけで、心は楽になった。


 もうちょっとだけ。打ち明けちゃおうかな。って思った。


 自分の怖い事、ハルに言ってみた。

 誰かの感情、孤独、焦り、恐怖。


 そうしたら、ハルは1つ約束をしてくれた。


――僕は、ミライが記憶を取り戻すまで、ミライと一緒にいる。独りぼっちにはさせないよ


 独りぼっちにはさせない。

 元々、私は独りぼっちではない。山守家の人たち、村の皆、カイ、千夏。

 皆に囲まれて、いつも助けてもらっている。


 でも、ハルが独りぼっちにさせないと言ってくれる。

 何故だろう、とても嬉しかった。心が温かくなってくる。


 理由は直ぐにわかった。

 私のことを本気で心配してくれているのが嬉しいんだ。

 心細くて、ずっと怖かったけど、ハルは真剣に私のことを知ろうとしてくれる。

 そして、不器用だけど、何とか助けようとしてくれる。励ましてくれる。


 私のことを勇気づけようと、努力してくれる。


 凄く心強かった。

 ハルになら、どうにもならなくなったとき、縋りつけそうな気がした。

 きっとハルを頼ったら、本気で助けてくれる。


 ハルがいるのなら、記憶喪失のこの状況でも、素直に楽しんでいけそうだ。

 どうにもならなくなったら、ハルを頼れる。

 そして、そのハルが一緒にいてくれるというのだ。


 凄いな。

 気分が晴れやかになっていく。心が軽くなって、温かくなってきた。


 ハルと指切りをしようとした。

 ハルと小指を結ぶ。

 不思議なつながりを感じた。凄く暖かかった。


 小指から、不思議な温かさが心の中に流れ込んでくる。

 大丈夫、大丈夫。きっと、大丈夫。

 ハルが私のことを励ましてくれる。


 もうちょっとだけ、もうちょっとだけ繋がったままが良かった。

 そうしたらハルが手のひらで私の手を包んでくれた。


 暖かい。心が落ち着く。

 安心できる。


 なんだか、眠くなってきた。

 今なら、横にハルがいる。

 安心して眠りにつける、そんな気がした。


 私は深く、深く眠りについていた。



 で、問題の6日目だ。


 あいつ、梯子を壊して逃げやがった。

 私が寝坊して、遊び場に向かうと、カイと千夏が飛び出してきて、教えてくれた。

 戸惑った。梯子を壊したのは良い。逃げたって、どうして?


 越路家に行った。

 ハルと会った。なぜ逃げたのかを聞いた。

 私は失望した。ハルが、梯子を壊したくらいで、私がハルの事を嫌いになるかも、と思ったらしい。


 そんな事で切れる縁だと、ハルは思っていたのか?

 ハルは、この繋がりをその程度の物だと思っていたのか?


 そうじゃないな、とすぐに気づいた。

 ハルは分かっていないんだ。


 そして、私は思った。

 きっと今、ちゃんとハルに伝えないといけないんだ。


 だから、私はハルに、思いをぶちまけた。

 どれだけ私がハルに助けられてきたか。

 どれだけハルに励まされたか。

 ハルが離れてしまったら、私がどれだけ悲しい思いをするのか。


 自分勝手な気持ちの数々だったけど、でも、ハルになら全部言っていい、って思った。

 だから言った。

 感情はぐちゃぐちゃだったけど。今思えばかなり恥ずかしいな、って思うけど。

 私なりに、ハルに思いを全部ぶつけた。


 そして、もう一度約束しなおした。

 カイ、千夏とも仲直りした。

 梯子も完成した。


 何だかんだあったけど、私たちの仲間意識が強くなったような気がした。



―――――――


 日記はここで終わっていた。

 その次の日、私たちは神社への道を辿ることになる。

 そして神社にたどり着いて、私の記憶は、そこで終わってしまっている。


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