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遥か、ミライ地図  作者: もりたろう


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[ミライ] 未来を導くもの ①

 日記には、私の手で記憶が記されていた。


 1日ずつ、1日ずつ。

 楽しかった思い出、大変だったこと。

 素直に私の感じた事、誰かが口にしたこと。

 そんなことが書いてある。


 日記を書いた私は、過去の私を忘れてしまった、記憶喪失の「ミライ」だった。

 でも今は違う。

 今は、「未来」と「ミライ」、両方を覚えている。

 どちらの私も、今の現実を繋いでいる私。


 そんな、本当の私として、その時の事を1つずつ、なぞっていった。



―――――――



 0日目。


 私はバス停で倒れていた。

 頭が痛くて、何とか体を起こしてベンチに寝転がる。

 その後、カイと千夏に起こしてもらった。


 なんやかんやあって、山守家にお世話になる事になった。

 結局1週間以上お邪魔してしまった。

 またいつか、お礼を言いに行かないと。


 で、ここでハルと出会った。


 あの時の私は、記憶喪失で凄く心細かった。

 なるべく、周りには悟られない様にしていた。けど、どうしても先の見えない状況が怖かった。

 誰か、頼りになる人を探していた。


 同い年くらいの少年がいた。ずっと、暇そうにしてた。

 勇気を出して声をかけてみた。

 怪訝な顔をしながらも、何だかんだ会話してくれる。

 もう一歩、勇気を出して、明日一緒に手伝ってくれないかと誘ってみた。


 ハルが、私の目をしっかりと見て、何かを探るようにしていたのを覚えている。

 ただ孤独で怖かったから、誰かを頼りたかった、という自分勝手な理由を見透かされそうで、怖かった。

 けど、彼は手を取って手伝うと言ってくれた。


 勇気を出して良かったと思った。


 でもその後、自分勝手な事ばかり言って、ハルに色々押し付けてないかな?と不安になった。

 けど、その後ハルから私に「おやすみ」と声をかけてくれた。

 ちゃんとハルからも私に声をかけてくれた、という事に安心した自分がいた。



 1日目。


 全然寝られなかった。

 記憶喪失という事で興奮しているのか、そもそも寝付けなかった。

 夜更かししちゃった。お茶を取りに行ったら、おじいさまと鉢合わせた。

 で、そのまま役場に連れていかれて、田中さん、勇輔さんと会った。

 そこで、田中さんがこの日記をくれた。そういや、日記を貰ったお礼もまだ言ってない。


 一度家に帰った。

 それからハルと一緒に、カイと千夏と出会った。

 村を案内してくれた。全く知らない場所で、色々な場所を巡る。何もかもが新鮮だった。なんというか、ど田舎。

 その後遊び場に行った。

 ハルがめちゃ寒い中川に手を突っ込んでたのが変で笑えた。私も真似してみた。案の定、めちゃ冷たかった。

 その後、ボードゲームやトランプをして遊んだ。

 みんなで、4人で一緒に遊ぶのがこんなに楽しいとは。今でも、あの日の興奮を覚えている。


 日記には、こんな楽しい時間は久しぶりのような気がする、と書いてある。

 実際、そうだろう。長い間、1人きりの時間をずっと過ごしてきた。

 あの時の私は、お母さんの事を忘れて、私は思う存分楽しい時間を過ごしていたはずだ。


 で、記憶喪失であることを忘れかけていたわけだった。

 バカだ。

 記憶喪失という非常事態に、なんで遊び惚けたんだ私は。


 ……でも。

 そんな時間をずっと過ごせていなかったから。記憶喪失の私も、心のどこかで、楽しい時間を思う存分過ごしたい。なんて、望んでいたのかもしれないな、とも。記憶がないとはいえ、私自身の体だから。


 で。

 絶対に忘れないぞ。私が忘れても良いように、ハルにも念を押しとく。

 と日記に書いてある。我ながら自分勝手だなぁ。



 2日目。


 悪夢を見るようになった。

 夜寝ようとした時のことだ。意識を手放して、眠りに着こうとすると、自分では無い何かの意識が私に浸食してくる。


――急がないと、大変なことが起きる


 そんな思いが私の中で溢れてくる。

 焦りと恐怖で胸いっぱいになる。


 息が詰まって、溜まらなく苦しくなって。

 それで目が覚めた。


 もう一度目を閉じても、同じような調子で。

 眠ってしまうと、私が私ではなくなってしまいそうで。

 私の記憶が、他の誰かに上書きされてしまいそうで。

 怖くて、怖くて、眠れなかった。


 そんな調子で、しっかり眠ることが出来ず朝になってしまった。

 隣でぐっすり眠るハルを横目に、私は起きた。

 おじいさまも、聡さんも早く家を出るようで、私はおじいさまに許可を貰って朝ご飯を作った。

 折角なのでハルと私の2人分。なんだかほっこりとする食卓だった。


 その後は、4人で記憶探しのために村巡り。

 田中さんが、ゆっくり記憶を取り戻せばよい、と励ましてくれた。

 なんだか、田中さんは色々なことを見通している気がする。

 田中さんが言う事なら、なんだか安心して信じられる。

 そんな風に思った。


 あぁ、そういえばその後鉄塔にも上ってみたんだっけ。

 あそこから見た、水ヶ谷村の景色は素敵だったな。

 緑豊かで、ゆったりとした時間が流れていて、でも人々の暮らしが根付いている景色。

 私は、そんな雰囲気のあの場所が好きだった。


 最後に、千夏の提案でバス停に行った。

 見つけたのはみらい地図だった。

 日記にも、曖昧としか書かれてないけど、何故か私はこの地図を手放してはならない、と感じた。

 謎の既視感。そして手放してはならないという直感。

 本能的な何かが、この地図は私の手掛かりになる、と告げていた。


 この地図に従えば、私は記憶を取り戻せる。

 きっと、何もかもが上手くいく。

 何故かそう確信していた。


 テンションが上がって、家に帰っても興奮は覚めなかった。

 何より、自分の記憶の手掛かりを手に入れられた、という事が嬉しかった。

 この地図を辿れば、何もかも取り戻せる、そう確信していた。

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