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遥か、ミライ地図  作者: もりたろう


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[8日目] 水ヶ谷村 - また会う、その日まで

 翌日、午前中に国道が開通したことで、沢山の支援物資が村に届けられた。道路をふさいでいたのは、土石流の際の地面の揺れに誘発された倒木だったようで、簡単に撤去することが出来たそうだ。

 そして、安全確認のされた地域の住人から帰宅が許可されることになった。


 神社は避難所ではなく、正しくは災害時避難場所と呼ばれる場所だったようで、長期的に身を寄せる場所は別に開設されることになった。全壊の被害を受けた家屋は5棟、うち1棟は山守家であるから、山守家もそこに暫くお世話になる事になる。

 被害状況も明らかになってきた。想定されていたよりは、かなり状況は良いとのことであった。各種災害に向けての対策が功を奏しつつ、土石流の流れる先が住居の少ない川北側であったことが良かったようだ。


 しかしながら、村として大きな問題は1つあった。役場が倒壊はしていないものの辺りが土砂に埋め尽くされて、使い物にならなくなってしまった。当分は隣町に臨時の村役場を設けることになる、とのことだ。おじいちゃんは、しばらくはそこで仕事をすることになるという。


 こんな状況であるから、村の外からの訪問者である僕は、今日の手伝いがひと段落したあたりで、お父さんと一緒に家に帰ることになった。都心部の方の、元々僕が住んでいるほうの家である。

 本当は、村の為に出来ることをもっとしたかった。

 ……いや、そう言うと格好がつくが、ちょっと嘘をつくことになる。

 単純に、僕はもっとこの水ヶ谷村に滞在したかった。

 カイ、千夏がいるというのも理由の一つだけど、僕はこの村が大好きになっていた。いつか、この村の住人になりたいと思うほどに。


 が、流石に状況が状況だ。わがままを言うつもりも、僕には無い。

 どう考えても、今ここに僕がいても邪魔なだけである。非常事態すぎる。どうしようもない。



「そうかぁ、帰るのか」


 カイと千夏に報告すると、カイは凄く残念そうな表情をしていた。


「寂しくなりますね。私は、もっとハルにここに居てほしかったです」


 そう言ってくれた千夏の言葉が、嬉しかった。


「僕ももっとここにいたかったよ。理由を付けて、ボランティアだとか何だとか、なんとかここにいれないか考えたんだけど、どう足掻いても邪魔だよねぇ」


「まぁ、俺らみたいなお子様がいても、か」


 カイも同意する。

 村の外からの助けもあって、今日僕たちは体を休めることが出来た。カイと千夏は平気そうだが、僕は体の節々が痛かった。運動不足だよなぁ……運動しよ。



「ミライ、どうしてるんだろうな」


 カイが言った。


「なにしてるんだろうね」


 僕も返事をする。



 昨日は忙しすぎて、ミライの事を考える暇さえなかった。

 でもこうやって今日、ゆっくりと過ごせる時間になると、ミライの事が気になって仕方がなかった。


 僕たちは、おじいちゃんにもミライの事を聞いた。

 でも教えてもらえたのは、ミライは無事であるという事だけだった。


 ミライは大丈夫だよ。きっと、また会えるだろう。

 田中さんはそう言った。


 これ以上のことを聞こうとしても、ミライのプライバシーに関わる事だから、と言って教えてもらえなかった。

 今の僕たちには、これ以上ミライを追いかけることは出来なかったのだ。



「でもさ、僕はミライと約束したんだ」


 青空を見上げながら僕は思い出していた。


「また、一緒に会えるはずなんだ。ミライはそう、約束してくれた」


「そうなのですね」


 千夏は僕の方を見て言う。


「うん。きっと」


 いつかまた、ミライと会えるはずだ。

 ミライは死んでしまったわけじゃない。理由はわからないけど、今だけはきっとお別れしないといけない理由があるのだろう。

 だから僕は、ミライの事を信じる。


 またいつか、会えるよね。


「じゃぁ、ハルとミライが再開した時、またこの村で一緒に遊べたらいいな」


「そうですね」


 カイと、千夏が言った。


「そうだね。また、水ヶ谷村で4人で会おう」


「おう」


 顔を合わせて、頷き合う。


「じゃぁ、また。その時はいつも通り、バス停で集合だな!」


 カイが立ち上がる。


「わかった!」


 僕も立ち上がって、カイの肩に腕を回す。


「お、ハルからそうしてくれるのは初めてじゃないか?」


 そう言ってカイは嬉しそうに僕の肩にも腕を回した。


「カイ、その時は遅刻しちゃだめですよ!」


 千夏も笑顔だ。


 ここにミライはいないけど。

 次合う時は4人で、一緒にこの村で遊ぼう。


「それじゃぁ、またね!」


「あぁ、ハル。またな!」


「ハル、また会いましょう!」


 僕たちは、この場で別れた。

 カイと千夏は自分の家へと戻る為に、神社を後にした。その後も自宅での沢山の作業が待ち受けているらしい。今日はもう、2人と会うことは出来ないだろう。


 僕は手を振って、2人を見送った。2人の背中が小さくなって、やがて見えなくなる。



 僕の、たった1週間の、水ヶ谷村での春休み。

 水ヶ谷村に来て、ミライと出会って。

 3人の友達が出来て。

 みらい地図を拾って。

 梯子を力を合わせて作り上げて。

 ミライから大切な事を学んで。

 そして、この場所で、水ヶ谷村の過去と強さを知った。


 沢山の思い出を持って、いくつかの思いを水ヶ谷村に残して、僕は村を離れる。

 またいつか、この村に戻ってくる。

 そしてその時には、4人でまた遊ぼう。


 その日を正しく迎えるためにも、僕は一度、元々いたあの場所へ戻らなければならない。

 捨て去って見ないふりをした過去に、僕はちゃんと向き合わなければならない。

 そうしてこそ、正しく前に進むことが出来るはずだから。


 また会う、その日を目標に未来へと進む。

 一度歩みを止めてしまった人生。

 前に進むきっかけを、僕はこの水ヶ谷村で見つけたのだった。

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