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遥か、ミライ地図  作者: もりたろう


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[7日目 - 午後] みらい地図 - 大事な記憶を繋ぐ事②

 家に着いた。

 小道を登りながら、家におじいちゃんもお父さんもいなかったらどうしようか、とか考えていたけど杞憂だった。

 玄関に2人分の靴が置いてある。


「おじいちゃん!お父さん!」


 僕は靴を脱いで家の中に入る。


「ハル、家の中で走らない!」


 お父さんが部屋から顔を出して言った。


「ねぇ、お父さん。言いたいことがあるんだけど、おじいちゃんはどこ?」


「よんだかの?」


 おじいちゃんが台所から顔を出した。

 台所の方に行くと、おじいちゃんは野菜を茹でていた。タッパーに作り置きのおかずを作っている様だった。


「ねぇ、お父さん、おじいちゃん、ちょっと良い?」


「ふむ、なんじゃの?」


 お父さんも部屋を出て台所に座る。


 僕は急ぎながらも、なるべく落ち着いてこれまでの事を伝えた。


 皆で神社に行った事。

 ミライがいなくなってしまった事。

 ミライが、不思議なことを最後に言っていたこと。

 それに従って、僕たちは地図の歴史を調べた事。

 そして、その歴史が今日繰り返すと、ミライは言っていたこと。


 ミライがいなくなってしまった、と言ったとき、おじいちゃんもお父さんも驚いていた。

 でも、取りあえず話を聞こう、という事で最後まで話をさせてくれた。


 お父さんは終始怪訝な表情をしていた。

 おじいちゃんは表情を一つも変えず、無言でずっと聞いてくれた。


「だから、もしミライの言ったことが本当なら、大変なことになるかもしれないんだ」


 僕は伝えたいことを言いきって、2人の反応を待った。

 お父さんは、おじいちゃんの方を見ている。

 おじいちゃんはじっと僕の顔を見たまま、何かを考えている。


「なるほどな。少し待っていなさい」


 おじいちゃんはそう言って席を立って、電話の子機を持ってきた。

 どこかに電話をかけている。


「田中、今大丈夫かの」


 田中さんに電話をかけている様だった。


「まず、みらいが行方不明じゃ。神社で晴とはぐれたと言っておる。捜索を頼みたい」


 電話に向かっておじいちゃんが話している。


「次に晴が気になることを言っておる。詳細は省くが、今日は慎重に観測を頼むぞ」


 そう言った後、いくつか言葉を交わす。


「ふむ、ではの。頼むぞ」


 そう言って、電話を切った。


「ハル、よくわしに相談してくれた。まず、ありがとう」


 おじいちゃんが僕に感謝を伝えた。


「ミライのことは、田中が何とか調べてくれるじゃろう。人探しはあいつの十八番じゃ」


 おじいちゃんが自信満々に言う。


「それで、みらい地図の事じゃな。これは、日頃から田中が常に監視してくれておる。少しでも、災害の兆候があれば伝えてくれるじゃろう」


「晴、この村は昔から自然災害が良く起きるんだ。だから、僕たちもしっかり対策して、警戒もしてる。だから、一旦は安心していいと思うよ」


 お父さんは僕にそう言ってくれた。


「警戒って、どういうことをしているの?」


「わしらでも全部は知らんがのう」


 えぇ……


「知っているのだと、川の水量とか地面の小さな揺れが無いかとか、色々計測しているらしいよ。田中さんが、そういうシステムを作り上げたんだってさ」


 お父さんが言う。

 やっぱりこの村、ハイテクだ。


 ピンポーン


 呼び鈴がなった。

 誰か家に来たようだ。


「行ってくるね」


 僕は玄関に向かう。

 ドアを開ける。


「あれ、カイ?それに勇輔さん?」


 2人が立っていた。勇輔さんは手に何故か旗を持っている。


「いきなりすまんな。山守のおじいさんはいるか?」


 勇輔さんが聞く。


「中にいますよ。どうぞ上がってください」


「じゃぁ、失礼するよ」


 勇輔さんは靴を脱いで、すたすたと台所の方に向かっていった。


「カイもお父さんに伝えたの?」


「おう、したら、取りあえず山守さんとこいくぞ、って言って連れてこられたんだ」


「そうなんだ」


 僕たちも台所へと向かう。


 そこで、おじいちゃん、お父さん、勇輔さんで何か真面目な話をしていた。


「カイ、あそこにいてもなんだし、客間でゆっくりする?」


「そうさせてもらうわ」


 2人で客間に行った。

 隅に布団が2つ畳まれている。部屋には僕の私物だけがぽつんと置かれていた。

 ミライは元々持ち物が少ないから、いつも全部ポケットに入れて持ち歩いていた。

 だから、この部屋にミライが持っていたものは何も残っていない。


 カイと僕で畳の上に寝転がる。

 妙に部屋が広く感じた。

 そして、ミライがいなくなってしまったことが気になって仕方なかった。


「ミライ、戻ってくるのかな」


 僕はカイに意味もなく言ってみる。


「どうだろうな」


 曖昧な答えが返ってくる。

 僕たちは、ミライがどうなっているのか、何もわからないのだ。


「夜になったら戻ってこないかな」


「そうだといいな」


 虚しくなってきた。


「ミライと、また会えるよね?」


「……会えるさ」


 カイは、はっきりと言った。


「また、一緒に遊べるさ」


「ほんとに、そうだといいな」


 こんな形で、ちゃんとお別れも言わず離れ離れになるのは嫌だな。

 また、ミライと一緒に、カイ、千夏と4人で遊びたいな。

 この、水ヶ谷村で。



 ゴロゴロと寝転がりながら、どうでもいい話をして時間をつぶしていた。


 台所の方では勇輔さん、お父さん、おじいちゃんがいるようだけど、特に何かを話しているような雰囲気もない。


 プルルルルル!

 電話が鳴った。おじいちゃんが電話を取った。


「なに?」


 おじいちゃんが大きな声を出す。


 僕とカイは顔を見合わせる。

 頷き合って、台所に向かった。


「うむ、そうか。では念のためなのじゃな。うむ」


 そう言って、おじいちゃんは電話を繋いだまま僕たちに話す。


「僅かだが、川の水量に変化があるそうじゃ」


 おじいちゃんが言う。


「この程度なら普段は気にしない所じゃが、晴達の警告もあるのでな」


 僕とカイの方を見て言った。


「川北のほうは、避難準備を始めてもらおうと思うんじゃ」


 川北というと、畑が多くある方の地域のことだ。

 おじいちゃんは勇輔さんの方を見る。


「勇輔さんも、異議無いな?」


「万が一がある。念には念を入れて、そうしましょう」


「よし」


 そう言うと電話に話しかける。


「田中、避難準備じゃ。川北の危ない所は、一次避難を始めさせるのじゃ」


 田中さんに軽く指示して、電話を切る。


「なぁ、ハル。なんか大事になってきたな」


「そうだね」


 これで何もなかったら、迷惑なことをしてしまったことになる。

 けど、逆に何かあった時のことを考えれば、その位の恥、どうということは無いだろう。


 ピンポンパンポ~ン

 すぐに、外で放送が流れだした。


【こちらは~、ぼうさい~みずがたに~、ひなんじょうほう~……】


 川北地域で、避難準備を始めるような指示があった。

 また、お年寄りや避難が困難な方は一次避難所に集まるように指示がされていた。



 暫くして、勇輔さんの腰のポーチから、誰かの声が聞こえ始めた。

 勇輔さんがポーチからトランシーバーを取り出す。

 声を聞くと見守り隊の人たちが、避難に関しての情報を報告していた。分担して、避難が困難な人のいる家に車で送迎に行ったり、一次避難所の準備が始められた事などが伝えられる。

 しっかり丁寧に連携されていて、定期的にその地区のリーダーの人が情報を整理して、田中さんに報告があげられる。


 おじいちゃんが自分の部屋から、ひと際大きくて古い手持ち型の無線機を持ってきた。


「随分使ってなかったがのう」


 電源を入れると、大きな音量で無線の音声が聞こえ始めた。

 勇輔さんは無線機の音量を絞ってポーチに仕舞う。


『川北東原、避難完了してます』

『川上側、役場の応援で1人向かってます』


 そんな報告が定期的に流れる。

 何も話すことが無く、僕たちは机の上に置かれた無線機を囲んで、無言で流れる声を聞く。


 その時、無線機で流れる報告を遮るように、1つの通信が入った。


『田中だ。ジジ団の誰か、きいておるか!』


 おじいちゃんが無線のボタンを押して話す。


「山守じゃ。どうした」


『わずかに、地面の振動を検知しておる。かなり上流の方だ』


「なに?」


『これは、もしかするかもしれんぞ!』


 田中さんは焦ったように報告した。

 その後、続いていた通信は途絶え、誰も何も話すことは無かった。


 数秒間、無線機を囲んで皆が唖然としている。

 その時。



 クゥーーーーーン!

 クゥーーーーーン!


 動物の鳴き声が、家の外で響いた。

 何かの動物が遠吠えするように鳴いている。


「なっ」


 おじいちゃんが慌てたように立ち上がる。

 何も言うことなく部屋を出て、玄関から家の外に出る。

 お父さん、勇輔さん、僕、カイ、4人で何事かとおじいちゃんの後ろに付いて行った。


 クゥーーーーーン!


 また、鳴き声が聞こえた。

 それに続いて、森から様々な音が聞こえてきた。


 キィーーー!

 ピー!

 というような小動物の鳴き声が微かに、でも沢山の数が重なって聞こえてくる。


 小鳥が森の上空を飛び回っているのが見える。

 家のすぐ近くでも、何かの動物が森の奥の方へ向かって走って行くのが見えた。


 ワオーーーン!


 村から犬の遠吠えまで聞こえてくる。


 村が、森が賑やかになったと思った。


「そうじゃ」


 おじいちゃんが呟くようにして言った。


 僕たちはおじいちゃんの方を見る。

 おじいちゃんは、僕たちの方へ振り返る。

 そして、叫んだ。


「あのときも、森が騒がしかったのじゃ!」

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