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遥か、ミライ地図  作者: もりたろう


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[6日目 - 午後] 越路家 - 正しく向き合う事 ③

「うわ、何だあれ」


 ミライが前方を指さす。僕と千夏も、前に目を凝らす。

 遊び場に続く小道に、軽トラックが1台駐車してあるのが見えた。


 そう言えば、さっきから電動ドライバーなのか何なのか、機械の動く音が定期的に聞こえていた。

 まさかとは思ったが、どうやら遊び場からその音はなっていたらしい。


「何してるのでしょうか……」


 僕たち3人は恐る恐る、遊び場の方に向かった。


「お、ハルだ」


 真っ先にカイが僕たちに気が付いて、近寄ってきた。


「おいこら、ハル。派手にやってくれたなぁ?」


 カイが肩に腕を回して、拳で頭をグリグリする。


「カイ、本当にごめんなさい。梯子こわしちゃったし、僕壊した後ここから逃げちゃった」


「んまぁ、やらかした後は焦るよな。しゃーないよ」


 あぁ、こんなにあっさりと許してもらえるのか。


「皆、ほんとうにごめんなさい」


 改めて僕は頭を下げて謝った。

 心からの謝罪をする。ちゃんと皆の方を向き合って、自分自身の過ちに向き合って。


「私はもう許してるよ」


「私もです」


「俺もいいさ。何より、ハルがちゃんと戻ってきてくれてよかった」


 カイが肩に腕を回してくる。

 何となく、僕もカイの肩に腕を回して、肩を組んでみた。


「お、いいねぇ」


 ミライも反対から肩を組む。千夏もカイとミライと一緒に肩を組んだ。

 4人で輪っかになる。


「よし、仲直りだ。俺らは仲間だぞ!」


「うん」


 数秒間皆で肩を組んで、笑った。その後、自然と手は離れて、輪はほどけていく。

 でもその後は、僕含めて4人とも笑顔になっていた。

 僕は、ちゃんと皆に謝ることが出来た。



「おう、皆、なんか色々大丈夫だったみたいだな」


「父ちゃん、マジでありがとうな」


 ふと梯子のあった方から、勇輔さんが近寄って来る


「俺の最終手段、父ちゃんを呼んで梯子を何とかしてもらってんだ」


 僕たちは梯子の方に向かう。


「わぁ!」


 驚いた。

 僕が粉々にしてしまった踏み場は、新しくスチール製の頑丈な足場に置き換えられていた。

 完全に壊れていない踏み場も、上から合板を打ち付けたりして補強されていた。

 こうしてみると、何とか壊してしまった方も完成しそうに思えてくる。


「ハル、俺マジで心配したんだぞ?」


 カイが僕の横から話しかけてくる。


「梯子壊れてショックだろうし、いつの間にかどっか行っちまってたし」


 肩に手を載せてくる。


「慌てて道の方まで探しに来て、そこに居た女の子に聞いたらハルはあっちに歩いて行ったっていうから、追いかけようかと思ったんだ。でも、それ以外にどうにかハルを元気づけたくて、何とか僕らの元に戻ってこれるようにしたくて、考えたんだ。で、父ちゃんの力を借りることにしたんだ」


「カイ、何から何まで、本当にありがとう」


「いいってことよ。梯子、何とかなりそうだしな」


 2人で肩を並べて、2つの梯子を見る。

 1つは勇輔さんの手によって何とか出来上がりそうだ。

 もう1つは、まだ材料は置かれたまま、組み上げられるのを待っている。


「ハル、俺ら友達だよな」


「……カイ、ありがとう。友達でいたい」


「よかった」


 拳をカイが僕に突き出してくる。

 こつん。

 僕も拳を合わせた。


「よっしゃ皆、あっちは父ちゃんに任せて、俺らで最後の梯子を作り上げるぞ!」


「「「おー!」」」


 4人でなら簡単だ。既に準備された足場もある。

 カイと僕で力を合わせて足場を固定する。

 取り付ける時はミライが持ち上げて支えてくれる。

 作業の順番は、しっかり千夏が整理して指示してくれる。

 4人でなら、完成までにそんなに時間はかからなかった。


 夕暮れ時、僕たちは、ついに1つの梯子を完成させることが出来た。


「よっしゃぁああ!」


 カイがガッツポーズ。


「皆、よく頑張ったな」


 勇輔さんが近づいて来る。


「勇輔さん、色々、本当にありがとうございます」


 僕は頭を下げる。

 今日は平日だ。お仕事があっただろうに、きっと勇輔さんも色々無理してここに来てくれているのだろう。


「はいはい」


 ぽんぽんと頭を叩かれる。

 勇輔さんのやさしさを、僕は感じた。


「さ、俺の方も完成だ。明日、あそこで組み上げようか」


 勇輔さんが修理していた梯子は、色々部品が替えられていたが、しっかりと完成した。

 流石プロの仕事だ。数時間でしっかりと仕上がっている。


「じゃぁみんな、明日こそみらい地図を辿るぞ!バス停にいつも通り集合な!」


 カイがそう言って、僕たちは解散することにした。

 色々なことがあったけど、結果オーライ。

 明日、ついにみらい地図の指し示すところへ。壁を越えて進むことが出来そうだった。



――ーーーー



 夜、ミライは今日も早くから眠りについていた。

 すぅ、すぅ、と穏やかな寝息のまま、寝続けている。


 そんなミライの横で、僕は今日の出来事を振り返っていた。

 取り返しがつかないと、冷静さを欠いて逃げ出したこと。

 結寿葉さんに、ちゃんと向き合う事を教えてもらったこと。

 皆に、本当に暖かく許してもらえたこと。


 僕は恵まれている。おかげで、大切な事を学んだ。

 逃げ続けたら、可能性は失われるという事を知った。

 正しく向き合う事の大事さを知った。



 僕にはもう一つ、向き合わないといけない事がある。



 コートを羽織って、家の外に出た。

 ロッキングチェアに座って、携帯を開く。

 僕は、長い事起動していなかったSNSアプリを開いた。


 興味のない店からのDMが数件届いているだけの画面。

 通知の無い人たちの中から、僕は親友のメッセージを開いた。

 あの日から、一度も連絡をしていない。


 冷たい息を吸い込む。

 覚悟を決めた。


――お久しぶりです。山守です。あの日の事、謝りたいです。お話しできませんか?


 十数分かけて、1行のメッセージを送った。

 祈るように、携帯を手で包み込んで、目を閉じる。

 想像以上に早く、返信は帰ってきた。


――許さないよ


 一言。

 だけど、すぐに。


――でも、話してあげる。電話しよう


 そんな返信が返ってきた。

 僕は震える手で、通話ボタンに手を伸ばす。

 すると、もう1つ、メッセージが送られてきた。


――遅すぎるんだよ


 そうだよな。


 もう2か月が過ぎている。

 意を決して、僕は通話ボタンを押す。


「もしもし、山守です」


 僕は長く、長く、寒空の下で1人。会話を始めた。

 吹き抜ける風は凍えそうなほど寒かったけど。

 今の僕には、それは気にならなかった。


 湿った目を乾かしたくて、空を見上げた。

 満天の星空が、村を超えた果てにまで広がっていた。

 その星空は雄大で、やっぱりとても綺麗だった。



―――――――



 部屋に戻る。

 ミライは寝ている。


 ちゃんとミライに感謝を伝えないと、と思った。

 いつも僕にキッカケをくれて、助けてくれて、ちゃんと怒ってくれて。

 どれほど僕がミライに救われていることか……


 そう思いながら、携帯をポーチに仕舞う。


 ふと、ポーチの中に数枚の紙きれが入っていることに気が付いた。

 何だろうと思って取り出す。

 日記だった。そういえば、ミライに何枚か貰ってたんだっけ。


「……」


 ボールペンを探して、紙に書き込む。


 カリカリカリ……


 カリカリカリ……


 僕は書き上げた手紙を、そっと折りたたんで、ミライの日記の後ろに挟み込んだ。


 そうして、布団にもぐりこむ。


 うわ、なんか紙に書いたの恥ずかしい気がしてきたな。やっぱりやめておくか?


 そんなことを思いながら、夜は更けていく。

 いつの間にか、僕も眠りに落ちていた。

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