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異世界で世界に影響を与えて、通販をしよう!  作者: ナスカ
第一章 異世界生活の始まり
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第七話 出発

 隆也とソフィアはジャイアントグリスリー討伐から帰還すると三日間、活動を休止した。


 したことと言えば多少金銭に余裕ができたので、分割後払いにしていた登録料をギルドに対して払ったくらいだった。その他は特別な事はしていない。


 大仕事の後だからリフレッシュ休暇としての活動休止だったが、この三日間が後に結果として重要な意味を持って来るのだった。


 三日目の夜、宿屋で隆也はポイントの確認をしている。


 獲得ポイントの詳細は表示されないのだが、隆也の想像以上にポイントが溜まっている。


 実は先の魔獣討伐のクエストだが、加算されたポイントは討伐で直接得られたポイントだけではない。


 野営でソフィアにカレーを食べさせた事やその後の覗き行為などでもそれなりにポイントが加算されている。


 カレーに関してはこの世界では決してメジャーでない料理を食べさせた事、覗きについては貴族令嬢の全裸姿を見た事が知れれば大事になりかねない。つまりどちらも世界にそれなりの影響を与えているといえた。


「う~ん、これなら俺の防具だけでも買ってしまうか」


 但し、それは現金を使って、この世界の防具を購入した。


 現金の方がポイントよりも余裕があるので、そちらで賄える分は賄うべきだ、と考え、翌日に街の防具屋で購入した。


 隆也は両手の手甲とその手甲に装着する盾、それに左胸をガードする簡易なプロテクターを購入した。


 まだ最低限としか言えない程度だが、隆也の防御力はかなりの上昇となった。




 リフレッシュする為の休暇で鋭気を養って再び冒険者ギルドに顔を出すと、

「リューヤ様、ソフィア様、やっと来てくれたんですか」

と受付嬢が歓喜して隆也の両手を握ってきた。


 なぜこんなに熱烈な歓迎をされるかと云うと

「上・中級の冒険者パーティーがいない?」

「はい、実はお二人の活躍に触発されて、皆さん、高難度クエストに出かけてしまったんです」

「でもそんなに長期間かからないんじゃないですか?

 俺達でも二日だけだったし…」

「何言ってるんです!

 あんな高難度クエスト、早くて数日、長ければ一ヶ月あっても達成出来るかどうか」

「え、噓ですよね…」

「そもそも高難度の魔獣は個体数が少ないんです。

 ですからまず遭遇するのが難しいんですよ」


 どうやら隆也達は相当運が良かったという事だ。


「でも一時的な事ですよね。

 随時戻ってくるんじゃないですか?」

「それはそうですけど、直近で問題がありまして…、

 商品運搬の護衛も依頼が入ってるんです。それも緊急で!

 そういったクエストは中級以上の冒険者しか斡旋できないので困ってしまって…、

 だからこのクエスト、お願いします!」


 有無を言わさぬ迫力だった。


 隆也がソフィアを振り返ると

「いいんじゃないかしら。

 私達もそろそろ他の街を見て回るのも」


 冒険者は一か所に長く留まらない場合が多い。貴族令嬢のソフィアも側室の娘だから多少ましだと言ってもやはり籠の中の鳥に近い状態にあった。だからこそ冒険者に憧れた。そして今、外の世界に触れるチャンスが訪れている。


 ソフィアが乗り気なので隆也もそのクエストを受ける事にした。


 詳細としては、出発は明朝、個人で商品運搬をしている人物と荷を無事に目的地まで送り届ける、その目的地は州都アルファ、そしてクエストを受注したパーティーは隆也達のみ。尚、報酬は10万ギル。これは往復なら安いが片道なら高い。ある意味適正金額ではあった。


 隆也達はその日の内にクエストの準備を終えて、明朝、ギルドの前までやって来た。


 そこに待っていたのは

「マルス!?」

「リューヤか?

 お前、生きていたのか」

そう、隆也がこの世界に来て最初に会った人物、商人のマルスだった。




「いや~、まさかリューヤが俺の護衛になるとはな~」

「俺も想像もしなかったよ」


 隆也とソフィアはマルスの荷馬車に乗せて貰っている。


「それにしてもリューヤが優秀な冒険者とはな」

「いや、俺は駆け出し。

 優秀なのはソフィアだよ」

「へ~、ぱっと見は綺麗なお嬢さんなんだが、

 これも人は見かけによらないって言って良いのか?」

「いえ、私はそんな…、全部リューヤが居てくれたからで…」

「いや、いや、ソフィアがいたからここまでやってこれたんだよ」


 二人のやり取りを見ていたマルスは

(なるほど、互いを立てる良いコンビなんだな)

と、一人で納得していた。


「それにしても護衛が俺達だけなんてな」

「もっと多人数の方が安心だけど、やっぱり金の問題がな…。

 それでも護衛無しは不安だし」

「でもこの前は護衛はいなかったよな」

「まあ、物騒になった様だから護衛は必須だろ」

「物騒になったのか?」


 隆也がそう尋ねると、マルスは呆れを通り越して馬鹿を見るような表情になる。


「いやリューヤは野盗に襲われたんだろ?」


 そう、隆也はそういう”設定”をマルスに話していた。それを失念していたので笑って誤魔化すしかなかった。


「ま、マルスは今回は帰還なのか?」

「ああ、俺は元々州都アルファの商人だからな。

 今回はデルタに商品を売りに来たのさ。

 で、少しの間滞在してめぼしい物を仕入れて帰還する事になったのさ」

「へえ、良い物が手に入ったのか?」

「ああ、予定していたものは当然として、

 なんと胡椒と『ジャイアントグリスリーの毛皮』まで仕入れたぜ」


 これを聞いて隆也とソフィアは顔を見合わせる。


 そんな希少なもの、他でほいほいと手に入るわけがない。間違いなく隆也が最初に売った胡椒と、二人で狩った魔獣のドロップアイテムだろう。


「売り先の宛はあるのか?」


「ああ、今、公爵様が香辛料を集めてるらしいんだ。

 なんでも『カレー』とかいう料理を書物か何かで知ったから、

 それを再現しようとしているらしい。

 『ジャイアントグリスリーの毛皮』は、貴族様の間で大人気だから直ぐに売れるさ」

「マルスは公爵様の御用商人なのか?」

「いや、俺は違うが御用商人と取引があるのさ」


 隆也はまさか『カレー』がこの世界にあるとは思っていなかった。尤もほとんど知られていない料理だから、ソフィアも知らなかった。


 しかし驚くと同時にアリエス公爵が香辛料を買い集めてると聞いて、隆也はある事を思いついた。


(単純だけど上手くいけばポイントを稼げるかもな)


 そんな事を考えていると、

「リューヤ、何を企んでいるの?」

またもやソフィアの芯を喰った言葉だった。




 州都アルファまでは約三日の道のり。途中、野営は必須で食料はマルスが用意する契約だ。当然、携帯食料なので味気ない。隆也の”ショップ”ならばもっと良いものを用意できるが、それはマルスの手前、やめておいた。噂を広めるのは避けるべきだし、マルスが絶対に話さないとも言えない。


 隆也とソフィアは交代で見張りをし、昼間は荷馬車の上で昼寝も挟んでアルファへの道を進む。


 二日目の野営も大過なく終了する。野生動物は天然動物避けの『ジャイアントグリスリーの毛皮』があるからだろうが、野盗は…。


 そんな三日目の昼過ぎ、事件は起こった。




 あと半日もすればアルファに到着するという所でいきなり街道の左右から10人はくだらない者達が現れた。全員の身なりからして、堅気とは思えない。


 隆也とソフィアは荷馬車を降りて、前に出る。すると

「へえ、荷物と金だけいただくつもりだったが、こんな上玉までいるとはな。

 さて、おとなしく荷物と金、それに女を渡してもらおうか」

やはり間違いなく野盗だった。


 そこでソフィアが槍を構える。


「なんだ、抵抗しようって言うのか?

 やめとけ、やめとけ、俺達は泣く子も黙る

 『く…』」


 ”ドサッ”


 野盗団のリーダーらしき男がおそらく団の名前を言おうとしていた処でボウガンの矢が眉間に突き刺さり、その男は息絶えて倒れた。


「リーダー!」


 倒れた男がリーダで間違いないようだった。


 当然、倒したのは隆也がボウガンで、だ。


 相手の男は名乗りを上げようと前口上を言っている途中だったが、隆也は聞く価値無しとして攻撃したのだ。


 元の世界の物語でもそういった名乗りの途中には攻撃しないという暗黙の了解があった。


 しかし隆也は幼少の時に見た特撮ヒーローの作品で、敵が名乗りの途中に攻撃しないのは何故かという無粋な疑問を持った男である。待つ合理的な理由がない以上、攻撃するのは当然であった。


 とはいえ、隆也がボウガンをしっかり構えて、狙い定めて撃ったのなら相手も途中で警戒してこんな簡単に仕留められなかっただろう。しかしこの時隆也は銃の早撃ちの如く、腰に下げた状態からいきなり構えて撃ったのである。眉間という急所に当たったのは偶然でしかない。


 ただ野盗はそうはいかない。いきなりリーダーがやられ、指揮する人間がいなくなってしまったのだ。


 うろたえる野盗の群れは隆也とソフィアにとって敵ではなかった。


「ぎゃあーー!」

「ぐえーー!」


 阿鼻叫喚とはこの様な事を言うのだろう。隆也とソフィアは何時もの様に見事な連携で野盗達を討ち取っていく。


「し、死にたく、死にたくないーー!!」


 最後の一人が二人に背を向けて逃げ出した。


 しかし隆也は今度はしっかりと狙いを定めてボウガンを放つ。その矢は野盗の足に命中し、野盗は転倒し、もう逃げられない。


「終わりよ」


 ソフィアの無慈悲な言葉でその野盗は首を突かれ絶命した。


 隆也は自分が人を殺めても心が乱れないのを《精神強化》の効果だと理解している。しかしそれが果たして良い事なのか一抹の疑問を抱いてしまう。


 それは兎も角、

「二人とも、凄いんだな…」

マルスは心底感心しているようだった。


「まあ、護衛ですからこの位は当然です」


 ソフィアの言う通り、護衛が野盗から雇い主を守るのは当然だった。


その後は順調な道のりで、

「お、アルファが見えてきた」

三人は被害なしでアルファに到着するのだった。



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