表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で世界に影響を与えて、通販をしよう!  作者: ナスカ
第一章 異世界生活の始まり
2/19

第二話 狩りの成果

 隆也は冒険者ギルドを出るとそのまま狩りに出発…しなかった。


 それは単純に日が暮れたからだった。


 隆也は宿泊した宿屋の部屋で明日の狩りの準備をする。


 まず防具として、腕に装着するタイプの盾を”ショップ”で購入した。鎧は高価でまだ手が出ない。しかし何も無いと危険なので現実を見据えた選択だった。


 そして武器としてボウガンを同じく”ショップ”で購入する。異世界転移の物語だと剣が主流だが接近戦で使用する剣は戦闘に熟達していないとかなりの危険が伴う。その点、ボウガンは遠距離での武器なので危険は格段に減る。その上、取り扱いが簡単であるメリットがあり、これは素人の隆也に向いていた。遠距離での使用を前提にするなら銃という選択肢もあるが弾丸が使い捨てなのに対して、ボウガンの矢は再利用が可能である。まだまだポイントは節約しないとならない。そして,そもそもまだ”ショップ”で銃を買うだけのポイントを所持していない。


 因みに盾で100P、ボウガンで300Pのポイントを消費した。


 一方でポイントは15P加算されていた。これは胡椒を購入した時にも見たのだが、その時は10Pだった。これから推測すると街に到着した事で5P、各ギルドに登録した事で5P獲得したと思われる。確かに広義で見ればその程度でも影響を受ける人も出るだろう。そしてこのことから推測されるのはポイントの獲得ハードルは結構低い。まあ、大量に獲得するのはそれ相応にハードルが高くなるだろうが。


「これでなんとかなるか」


 隆也は狩りの素人である。その素人の見立てが正しいなどと誰も言えない。しかし確かめるには実際に狩りに赴いて体験することが肝要だった。それがこの世界に影響を与えてポイントを稼ぎ、生き抜く糧となるのだから。




「おはよう、お客さん。

 今日は狩りに行くんだってね。

 それならこれを持って行きな」


 朝、宿屋の部屋から下へ降りていくと直ぐに女将に声を掛けられた。そして渡されたのは弁当だった。


 この宿屋は冒険者ギルドで紹介してもらった宿泊客には夕食の無料サービスがある有難い宿屋だ。しかし朝食や昼食のサービスはなかった筈である。つまりは完全に隆也個人だけへのサービスなのだろう。


「ありがとうございます。

 では、行ってきます」


 隆也は礼を述べてから狩りへと向かった。




「聞いた場所はこの辺なんだが…」


 隆也は冒険者ギルドで教えて貰った角兎の繁殖地に来ている。


 角兎はこの小高い丘と云うか、小さな山と云うか、で繁殖するのだが、この辺りを通る旅人を度々襲ったり、街に降りてきて人的・物質的被害を与えてくる。だから絶え間なく駆除依頼が出されているのだが、中々減らない。それは元の世界の兎同様、繁殖力が旺盛だからだ。


 そうなると比較的簡単に見つけられそうな気がするが…


「いた!」


 隆也は声を潜めてそう呟いた。


 角兎の姿形は読んで字の如く、一角獣の様な角の生えた兎である。大きさは通常の兎より一回り大きい。


 特徴については敵と認識した相手には跳躍して、角を突き立てるように襲い掛かってくる。小動物の割に好戦的なので不意を突かれると人間でも大怪我をする事がある。


 隆也は見つけた角兎に気付かれない様に隠れながら、音を立てずに近づいて行く。


(もう少し、もう少し…)


と徐々に近づいて行くと、突如、角兎がこちらへ向きを変えた。


(気づかれたかっ!)


 隆也はボウガンを構えようとしたが、あまりにも接近していたことが仇となって角兎の攻撃の方が早かった。しかし手に装着した盾で角兎の攻撃を防ぎ、足元に降りた角兎にボウガンを放った。矢は角兎に命中したが致命傷には至っていない。矢が体に刺さったままなのに角兎は弱弱しく逃げようとする。これはボウガンの弱点ともいえる。どうしても殺傷力不足で急所に当たらなければ一発で仕留める事が出来ない。


 隆也はそんな角兎にもう一発の矢を放ち止めを刺した。


 元の世界にいた頃の隆也なら弱弱しく逃げようとしている小動物に躊躇いなく止めを刺したりは出来なかっただろう。


(全然、心が痛まない。

 これが《精神強化》の恩恵なのか…)


 隆也としては少し複雑ではあるが必要な事であるのは間違いなかった。まあ、あの”神様”の言葉通りなのは少し、否、かなり癪だが。


 余談だが、グロ耐性についてはこの後に

「弁当はおむすびか。

 この世界にも米だけでなく、おむすびがあるんだ」

と、血を見た後にも拘わらず弁当を平気で食べたので、多分、強化されていると思われる。


 この世界の魔獣と呼ばれる存在は絶命すると鈍い光を放って肉体が消滅する。ただし”魔石”と呼ばれる宝石の様な物を残していく。ギルドの討伐依頼の成果はこの魔石を持って帰る事で判断される。


 魔石は魔獣の種類によって大きさや色に違いがあり、そしてその全てが何らかの材料、燃料として活用されている。




 隆也はこの後、積極的に角兎の狩りに精を出した。


 最初の狩りを教訓にボウガンの射程に入ったら近づき過ぎずに討つ。討つ前に攻撃されたら盾で的確に防いでから仕留める。そして確実に止めを刺す。魔石と矢の回収も当然忘れずに。


 その結果、5羽の角兎を狩る事に成功した。


 そして6羽目を仕留めた時、消滅した角兎の魔石の隣に角が残されていた。


「よし、『角兎の角』が手に入った!」


 魔獣は魔石のみを残して消滅するのが普通だが、時折、体の一部が消滅しないで残されることがる。それはドロップアイテムと呼ばれて高値で取引される。


 角兎6羽を狩った隆也は日も傾きかけてきたので帰還する事にした。欲張って夜の森に一人、なんて考えるだけで恐ろしい。


「失った矢はないから、経費としては0、

 収入は角兎6羽で600ギル、後は『角兎の角』がいくらで売れるかだな」


 今日の収支を考えると確かに悪い稼ぎではない。しかしこれを継続して続けられるのか、それには戦力、それも火力が決定的に足りていない。そんな不安に襲われていた。それを解消する方法は…。


 そんな事を考えながら崖(5、6m程)の上を通りかかった時、ふと崖下に人影を発見した。


 それだけなら無視しても構わないが、狼の様な魔獣の群れに崖下で追い詰められている。


 冒険者の行動は危険も功績も全て自己責任。見捨てても誰も咎めない。しかし隆也はそこまで達観していない。崖を見回すと人が一人だけなら乗れそうな踊り場の様な場所を発見した。


 隆也はその崖の踊場へ向かって崖を滑り降りていく。




「く、このままじゃ、この、黒狼の群れの、餌になってしまう!」


 黒狼に追い詰められている人物は必死に槍を振るって応戦しているが、多勢に無勢の感は否めない。


 しかも黒狼は群れの優位性を生かして獲物となった人物の体力を徐々に奪うように死角から攻撃し、決して深入りしない。それでいて決定的なダメージを与える隙を虎視眈々と狙っている。


 それをその人物も分かっている。しかしどうしても自分の力が足りない。せめて援護があればと思うものの、それは所謂”無いものねだり”でしかない。


 そして疲労から足を滑らせ、決定的な隙を作ってしまった。黒狼の内1頭がその隙をついてその人物へ襲い掛かった。反撃は間に合わない、回避も出来ない。あるのは大きなダメージを与えられてその後は嬲り殺しの如く黒狼の群れに食い殺される未来しか考えられない。


 ”ドス”


 その瞬間、隙をついて襲い掛かった黒狼の頭に矢が突き刺さった。その黒狼はその場に倒れ攻撃することも出来ずに消滅した。


 突然の、そして予想外の出来事にその人物も黒狼の群れも困惑する。そこへ

「ここから矢で援護する。

 目の前の敵に集中しろ!」

「は、はい!」

 隆也の声でその人物は我に返った。


 完全に形成は逆転した。そもそもその人物の槍術の腕は中々のもので、黒狼相手でも単体であれば苦も無く仕留められる技量を持っていた。問題は10を超える群れだったという事だけだった。しかし隆也の援護で自分の隙を補って貰えば負ける筈もなかった。


 隆也が一番下まで降りていれば追い詰められた人間が二人になるだけだったが、高さ2m~3mの踊り場にいる為黒狼達は隆也に攻撃が出来ない。それは即ち一方的に矢を射ることができるという事なので充分な援護が可能だった。


 そして一頭、また一頭と黒狼を仕留めていくと、群れのボスと思しき個体が大きな咆哮を上げる。するとそれが合図だったようで残りの黒狼たちは撤退していった。




 黒狼が撤退したのを見届けてから魔石と矢の回収もあり、隆也は下まで降りてきた。


「あ、あの…」


 すると追い詰められていた人物が走り寄って来る。


 そこで隆也は初めて気が付いた。その人物が女性である事を。


「貴方のおかげで助かりました。

 私はデルタ領主イプシロン子爵の次女、ソフィア・イプシロンと申します。

 命の恩人である貴方に心より感謝致します」


 そう言って軽く頭を下げる。


 隆也はまさか助けた人物が自分と同じか少し下の年齢に見える女性で、しかも領主貴族の娘だったなんて予想外の連発だった。しかもソフィアは年相応の可愛らしさと美少女が美女に成熟する直前の美しさを兼ね備えた美貌まで持っている。更に付け加えるなら全体的にスレンダーながら出るところは出て、引っ込むところは引っ込むという文句のない体型をしている。


 しかしそれは逆に隆也にとっては身分違いを含めた高嶺の華ともいえる存在だった。


「あの、宜しければお名前を教えていただけますか?」


 そう言われて隆也は自分がソフィアの容姿に見とれて、自分が名乗っていない事に気付いた。


「失礼しました。

 私は隆也と申します。

 察していただけると思いますが、平民なので家名はありません」


 この世界では家名、即ち姓は王侯貴族しか持っていない。隆也はこの世界では身寄りも何もないので正しく平民でしかない。だから敢えて元の世界の姓は名乗らなかった。


 そこで隆也の視線の先、つまりソフィアの背後で動く影があった。それは仕留めたと思った黒狼だった。


 この世界の魔獣は絶命すれば魔石を残して消滅する。消滅していないという事はまだ生きている事を証明している。


 それをソフィアも隆也も当然理解していた。隆也はボウガンで矢を放ち、ソフィアは槍を振るってその黒狼の首を落とした。


「挨拶やお礼よりも止めを刺す方が先でしたね」


 そんなソフィアの言葉に二人は笑いあった。

今回も情報過多です。

説明で文章の半分近くいってるかも知れません。

説明しないと主人公たちが何故そんな事をしているのか分からない事が多いので説明は必須なのですが、もっとコンパクトに纏めないと…。精進します。


評価、ブックマーク、感想、全てがモチベーションになるので、宜しければお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ