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客人

私がベルシエ公爵家に来てから、初めての客人を迎える事となった。


そうは言っても、相手はルドウィクの友人なので、フランクな対応をするらしい。

その友人とはなんと、小説のライバルキャラである宰相の息子レハルト・ブルーゼル公爵令息なのだ。


一応未来の妻なだけに、私はどう対応すればいいかしら?とルドウィクに聞いたら、ありのままの私でいいと言われた。悪女モードよりは、飾らない普段の私の方がいいってことね。

オッケー。それで準主人公を堪能するわ。



そうして、いよいよお待ちかねのレハルトの登場である。

ルドウィクの隣り、入り口のホールにて出迎える従者達の前にふんぞり返ってアドリシアは立っていた。


そうしていざ、期待を胸に扉が開かれた。

従者の者に案内をされながら現れたレハルトに、アドリシアは息を飲む。


い……いいっ!!知的キャラきたーっ!!

ルドウィクが美貌を全面的に押したキャラだとしたら、レハルトは頭脳派で知的な顔とツンとした性格が顔に全部でちゃったみたいな、知的麗人ね。

私主人公よりも、こうゆうキャラ好きよ。


ほー、いーねーいーね。絵になる2人だわ。

普段は愛想のよくない2人が、友人として楽しそうに談笑する姿いいわ〜。特別感ある〜。美しく麗しい友情最高。


目の保養だと見守っていると、ルドウィクとにこやかに話していたレハルトがこちらに視線を向けてきた。


んっ?あれっ………?


その顔が、視線が一変して、表情が消えた冷たい男の顔になった。


「夜会などではお目にかかった事はありましたが、こうして話すのは初めてですね、アドリシア嬢」

「そうね。私有名人ですもの、声もかけられなかったんでしょう?小心者ね」


あ?何だその顔?社会人たるもの、初対面であからさまに嫌そうな顔すんな。たとえ嫌ってても顔に出すな。友達の集まりの場じゃないんだよ。


「なっ………」

「アドリシア・ゴルディックよ。もうじきベルシエ家の一員になるから、ルドウィク共々よろしくね。ほら、挨拶なさい」


アドリシアは瞳を細めニッコリと笑い、スッと手を差し出した。


未来の夫人を前に失礼なのはお前の方なんだよ、馬鹿ちんが。そうゆう対応されて、黙ってる姉さんじゃないんだよ。37歳なめんなよ。


「…………レハルト・ブルーセルです。どうぞよろしく」


レハルトはアドリシアの手を取り、ソッと口づける。その手が怒りでか小刻みに震えていた。


レハルトは嫌だろうとマナーを叩き込まれているから、礼儀として拒否はできないのだろう。

ざっまーみろ。お前の負けだ、負け。


「あっら〜。全然心がこもってないわね。言わされてる感満載。レハルト様はもっとスマートな対応ができる方と思っていたのに、買い被りだったようね」


オホホ、悔しそうな顔しちゃって。

ルドウィクと同じ歳だっけ?しょせんは小僧よ。


「アドリシア嬢は噂に違わぬご令嬢のようですね。押しかけて居座られたと聞いて、友が心配になり訪ねて参りましたが、正解だったようです」


笑みをうかべたレハルトの頬が引つったようにピクピクと動いている。

あらあら、こんな事くらいでお怒りかしら?


「扇」


アドリシアが手をかざすと、メイドがその手にすかさず扇を持たせた。


「何が正解なのかしら?私はルドウィクの婚約者よ。婚前に邸宅に入り夫人としての役割りを学んでいくのはよくある事。何の心配をなさってるんだか、見当違いの上に勘違いまでなさって、顔はいいのに頭は残念なお方ね〜」


ファーのついた扇をバッ開くとアドリシアは仰ぎながら、オホホと笑ってみせた。


「ルドウィクが困窮してるところに漬け込んで、婚約者の座に収まり、我がもの顔で好き勝手しているんでしょう!ルドウィクがどんな扱いを受けているのかこの目で確認させていただきますからね!」


その言葉にアドリシアは手に打ちつけ扇をたたみ、それをレハルトに向けた。


「おまけに無礼で非常識な方!酷い侮辱だわ。私は困窮するルドウィクに手を差し伸べただけだというのに。そんなに言うなら、自分で多額の援助をなされば良かったのに、何もしないでおいて口だけはご立派で愚の極みね」


それからアドリシアはルドウィクを見た。


「それで、あなたが彼に酷い扱いを受けてるんだ〜って泣きついたのかしら?」


ニコーッとしながらも全く笑ってない目で睨まれたルドウィクは、慌てて首を横に振った。


それを聞いたアドリシアはツカツカとレハルトの前まで行き、その顔に扇を突きつける。


「ですってよ!事前確認をしてから喧嘩を売りなさい!この甘ちゃん坊やがっ!」


アドリシアは扇をレハルトに投げつけると、踵を返し奥へと歩き始めた。


「アドリシア!レハルトが失礼を働き申し訳ありません」


ルドウィクが声をかけるが、アドリシアはバイバイと手を振り、〝あー腹立つ〟とぼやきながらそのまま振り返らずに行ってしまった。



せっかく会うのを楽しみにしてたのに、嫌いでも感じのいい振りくらいしなさいよね!

いいのは知的な顔だけで初対面だっつーのに会うなり嫌味ったらしい男!

ふふん、あんたの事はね、妄想の中であんなこと、こんなことしてやって思い知らせてやるんだからね!覚悟なさいよ!

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