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6. 可愛いねと言われちゃった

 6. 可愛いねと言われちゃった




 他愛もない会話をしながら街を歩く。ボクの横にはあの葵ちゃんがいる。本当に憧れの人とこんなに近い距離にいるなんて夢みたいだ……でもこうして見ると、葵ちゃんって本当に可愛い。ふわふわしてて柔らかい雰囲気で、まるでお姫様みたいだ。


 周りの人たちも葵ちゃんを見て見惚れてる気がするし……


「あっそうだ」


 そう言って突然葵ちゃんが立ち止まる。そしてボクに向かって手を差し出してくる。ボクはその手の意味が分からなくて首を傾げる。


 すると葵ちゃんは少し頬を赤らめながら言う。


「ねぇ雪姫ちゃん……手……繋ごっか?」


「え?……え!?」


「驚きすぎw……別に女の子同士なら手とか普通に繋ぐよ?ほら見て?」


 そう言って周りの人達を指差す。確かに女の子同士の友達だろうか、手を繋いでいる人たちもいる。そうか……これが女の子同士の日常なんだ……ボクはゴクリと唾を飲み込み覚悟を決める。


 葵ちゃんと手を繋ぐんだ!そしてボクも顔を真っ赤にしながらおずおずと手を伸ばす。


「なんか震えてる?」


「えっいや緊張しちゃって……」


「なんでw」


 すると葵ちゃんはクスッと笑いボクの手を優しく握ってくれる。柔らかい感触が伝わり心臓がドキドキする。これが女の子の手なんだ……


「まぁ……私と雪姫ちゃんは友達じゃなくて……今は恋人だけどね?」


 そう可愛く微笑む葵ちゃん。ボクは高鳴る鼓動を抑えるのに必死で、何も言い返せなかった。


 それからボクは緊張しながらも葵ちゃんと手を繋ぎながら、前から行きたかったカフェでお茶をすることにする。本当に新しいカフェにいくのは楽しみだよね!しかも葵ちゃんと一緒に……


「あっそうだ!葵ちゃん。今から行くカフェなんだけど、レモンタルトが美味しいって評判なんだよ?葵ちゃんはレモン大丈夫?酸っぱいの苦手?」


「ううん。好きだよ」


「良かったぁ……レモンタルト、本当に食べたかったんだよね!」


「そうなんだ?楽しみだね。……ふふ」


「え……私なんか変?」


「いや雪姫ちゃんって好きなもの話すとき少し早口になるね?」


 そう言って微笑む葵ちゃん。そっそうなのかな……恥ずかしいなぁ……そして目的のお店に到着し中に入ると中はお洒落な雰囲気で、お客さんも女の子ばかりだ。店員さんに案内され席に座る。


 ボクはレモンタルトとアイスティーを注文し葵ちゃんを見る。すると葵ちゃんもボクと同じものを頼んだ。


 それからしばらく待つと、美味しそうなレモンタルトが運ばれてくる。ボクは思わずスマホを取り出し写真を撮った後、フォークを手に取り一口食べる。すると口の中に甘酸っぱい味が広がる……そしてゆっくりと飲み込むと自然と笑みが溢れてくる。う~ん……美味しすぎるよこれ!そんなボクを見て葵ちゃんは頬杖をつきながら微笑む。


「え?」


「ふふ。……可愛いなぁって思って」


「かっ可愛い!?」


「うん。……雪姫ちゃん可愛いよ」


 その笑顔を見た瞬間、胸がドキッとした。今まで男の子として生きてきてこんな経験をしたことがなかったからだろうか……それとも憧れの女の子に可愛いと褒められたからだろうか……


 恥ずかしながらもボクはまたレモンタルトを一口食べる。口の中には甘酸っぱい味が広がる……でも……心なしかそのレモンタルトがさっきよりも甘く感じた。

『面白い!』

『続きが気になるな』


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