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32. 一線越えちゃうかも?

 32. 一線越えちゃうかも?




 夏の日差しが照り付ける中、ボクは木陰のベンチに座って涼んでいる。今日は葵ちゃんとのデートの日だ。今は待ち合わせ時間までまだ少しあるけど……早く来すぎたかな?


 もうすぐ夏休み。夏休みになったら一緒に海とかプールに行きたいな!


 ……なんてね。ボクは男だし葵ちゃんとは一緒に行けないことくらい分かっている。でも……葵ちゃんの水着とか可愛いんだろうな……そんなことを想像しながら思わず笑みがこぼれる。


 最近、外で葵ちゃんと会っているからか結構アウトドア派になってるのかな……今までは1日中部屋でゲームやアニメを観たり、典型的な引きこもりのオタクだったのに。そう考えたら本当にボクは変われているのかもしれない。


「お待たせ!雪姫ちゃん!」


「ううん。そんなに待ってないよ」


 そう言って笑顔で手を振る葵ちゃんが可愛いすぎて思わずドキッとしてしまう。


「あれ?雪姫ちゃん……今日いつもと違うね?」


 そう。今日のボクはいつもとは違う服を着ている。淡いピンクのワンピースで肩のところがシースルーになっていて、胸は少し多めのパッド入りのインナーを仕込んでいるから、見た目はそんなに違和感はないかな?それに髪も少しセットしたからいつもより可愛く見えていたら嬉しい……なんて思いながらボクは口を開く。


「今日……ちょっと可愛くしてみたんだけど……どうかな?」


「えぇ~すごい可愛い!雪姫ちゃんいつも露出控えめだから、肩だし全然いい!肌も白いし」


「ありがとう……この前、葵ちゃんが大人っぽかったから……ちょっと挑戦してみたんだ」


「嬉しい!雪姫ちゃん……私のためにしてくれたんだ……」


「うん」とボクは恥ずかしがりながらも言う。すると葵ちゃんは嬉しそうに微笑んでくれる。やっぱり可愛いなぁと思いながら見ていると、葵ちゃんが口を開く。


「でもさ……それ……少し胸盛ってるでしょ雪姫ちゃんw」


「えっ!やっぱり分かる!?」


「だって……いつもより大きいよw雪姫ちゃんそんなに胸大きくないし」


「うぅ……」


 バレてしまった。やっぱりダメだったか……すると葵ちゃんは悪戯っぽく笑う。


「もしかして……私を誘惑しようとしてたのかな?」


「ち、違うよ!でも……その……ちょっとはそうかな……?」


「あはは。……でも雪姫ちゃんになら誘惑されてもいいかな……?」


 そう言って葵ちゃんはボクの手を握ってくる。ボクは思わずドキッとして顔が熱くなるのを感じる。そんなボクを見て葵ちゃんは悪戯っぽく笑う。


「雪姫ちゃんはやっぱり可愛いなぁ」


「葵ちゃん……」


 さっきみたいな冗談も言えるようになったのに……結局ボクは葵ちゃんにドキドキさせられている。でもそれは不思議と嫌な気分ではない。むしろ嬉しいような……そんな感じだ。


「雪姫ちゃん……今日はどこ行こうか?」


「えっとね。実は調べておいたんだ……こことかどうかな?」


「水族館?」


「うん。夏だし涼めながら楽しめそうだし……どっどう?」


「いいよ。せっかく雪姫ちゃんが私とのデートのために事前リサーチしてくれたんだもんね?」


 まぁ……莉桜姉さんや真凛に聞いたんだけどね……でも調べようとした努力は認めてほしい。


「これは……友達の一線越えちゃうかも?」


「え!?もう!からかわないでよ葵ちゃん!」


「……私は本気だよ」


「え?」


「ふふ。じゃあ行こっか」


 そう言って葵ちゃんは微笑む。その表情はいつも見ている笑顔だけど、どこかいつもより大人っぽく見えた気がした。やっぱり……葵ちゃんはズルい。

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