27. 雨のち晴れ
27. 雨のち晴れ
帰り道、ボクは緊張しながら歩く。雨が降っていて葵ちゃんには聞こえないとはいえ、ボクの心臓はバクバクと激しく動いている。だって……好きな女の子と相合傘なんだよ？ドキドキしない方がおかしいよ！
それに……すごく密着してるし……葵ちゃんの体温や匂いが伝わってきて……ますます緊張する。
でもボクは身長が葵ちゃんより少し高いくらいだから相合傘をしてもお互い濡れなくて良かったけど……
「白瀬君は雨好きなの？」
「え……なんで？」
突然葵ちゃんにそんなことを聞かれる。ボクが雨好きなんて……一体どうしてそう思うんだろう？
「いや、なんか凄く嬉しそうに見えるから」
「そっそんなことないよ！」
「じゃあ……私と一緒だからかな？」
「えっ！？いや……その……」
「あはは。冗談だよ。白瀬君は面白いね」
そう言って葵ちゃんは笑う。葵ちゃんの冗談は、本当なのか嘘なのかわからないよ……でもボクと同じなら嬉しいかも。だって2人は相合傘をして一緒の帰り道を歩いてるんだよ？それが恋人みたいでなんだかすごく嬉しかった。そんな幸せな気持ちで歩いていると、急に雨足が強くなる。
「あちゃー……ちょっとあそこの公園で雨宿りしよっか」
「え？」
葵ちゃんの指さす先には小さな公園があった。その公園には屋根付きのベンチが1つあったので、そこに移動することにした。
そして2人でベンチに座って少し休憩することにした。その間も雨足は強くなっていくばかり……これは当分止みそうにないな……それに服がちょっと濡れちゃったけど、今は梅雨だから仕方ない。
横に座る葵ちゃん……着ているブラウスが雨に濡れて、ピンクのものが透けている。これはマズい！そう思ったボクは思わず視線をそらす。
しばらく沈黙が続く。その沈黙を破るかのように
「ねぇ白瀬君って……好きな子いる？」
「え？」
「いや……その……いるのかな～って思って」
突然の葵ちゃんの質問にボクは思わず戸惑ってしまう。そして恐る恐る葵ちゃんの方を見てみる。すると葵ちゃんはボクを真っ直ぐ見ている。その視線に思わずドキッとして視線を再びそらしてしまう。
だって……好きな人は……いやそもそも言えるわけないし！でも……いないと嘘をつけない……ボクは嘘がヘタだから。ボクは意を決して口を開く。
「……いっ……いるよ」
「そっかぁ……どんな子？」
「えっと……凄く優しくて、いつも笑ってる可愛い子……」
「白瀬君も恋してるんだね？」
まさか葵ちゃんからそんなことを言われるなんて思ってもみなかった。
「あ。見て白瀬君」
そう言って葵ちゃんは空を指をさす。ボクもつられて上を見ると、いつの間にか雨は止んでいて、雲の切れ目から光が射し込んでいる。そしてその空には虹。しかもその虹は2つ空にかかっていた。
「わぁ綺麗……久しぶりに虹なんて見たかも」
「ボクも……」
思わず見とれてしまうほど綺麗だと思う。こんな風に誰かと一緒に虹を見たことなんてないから、余計にそう思うのかもしれない。きっと葵ちゃんと一緒だからかな？そう考えていると、不意に葵ちゃんが口を開く。
「ねぇ白瀬君」
「ん？」
「二重にかかる虹を見るとね……幸せになれるんだよ？知ってた？」
「そうなんだ……」
「だからさ……私も白瀬君も幸せになれるよきっと」
そう言って葵ちゃんは優しく微笑む。その笑顔がとても綺麗で……そして同時に思う。
ボクはこの笑顔をずっとずっと見ていたいって……
そしてその笑顔の葵ちゃんの横にはボクがいたいって……
それから2人で虹を見ながら、雨上がりの道を駅まで帰る。結局……最後は相合傘は出来なくて少し残念だったけど。それでもボクの気持ちは晴れやかだった。
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