22. だと思う
22. だと思う
いつものように家に帰る。ただいつもと違う……この心臓のドキドキ、熱くなっている身体。ボクは『白瀬優輝』のままだ。
ボクは本当に葵ちゃんと……
「おかえりおにぃ」
家に帰ると真凛がリビングにいる。これもいつもと変わらない。
「ただいま」
「なに?おにぃいいことでもあった?」
「え?」
「なんか嬉しそうにニヤニヤしてるけど?」
そんなに顔に出ていたのかな?でも仕方ないよね……初めて『白瀬勇輝』のまま葵ちゃんと話せたし、一緒に帰ったんだから。
その勢いもあったのか、ボクは無意識に真凛に声をかけていた
「あのさ真凛。次のデートどこに行ったらいいと思う?」
「は?え!?ってかなんでアタシに聞くの!?」
「それは……兄妹だし、真凛しか相談できる人いないって言うか……ダメかな?」
「いや!?別にダメじゃないけど……」
そう言って真凛は少し焦っていたけど、すぐに考える素振りを見せる。そしてしばらく考えた後、ボクに言う。真凛は呆れていたけど……でも相談に乗ってくれるようだ。
「デートって葵ちゃんとでいいんだよね?」
「うっうん!」
「……やっぱり好きなんじゃん」
「好き……だと思う」
「だと思う?まぁいいや。おにぃが葵ちゃんのことを好きなのは分かった……でもさ、その前に……おにぃはどうしたいわけ?」
「えっ」
「今のおにぃは『白井雪姫』じゃない。まぁ変装しているから葵ちゃんは気づかないだろうけど、バレたくないんでしょ?」
もちろんバレたくない。でも本当にこのままでいいとも思っていない。そう……思うようになっちゃったんだ。
「あまり色々言ってもおにぃが可哀想だから、今は週末のデートのこと考えてあげるか」
「ありがとう」
「ほら。早く座って。作戦立てるよ?」
そう言って真凛はボクにクッションを差し出す。ボクはそれを受け取って床に座る。
ボクが……どうしたいのか……
葵ちゃんとどうなりたいのか……
そんなことを思いながら、真凛と作戦会議を始めた。色々話していると、突然真凛が思い付いたかのように言う。それはボクが予想していなかった言葉だった。
「あのさおにぃ?」
「なに?」
「週末のデートさ……アタシも行ってもいい?」
「えっ!?なんで!?ダメだよ!葵ちゃんに迷惑だし!」
「じゃあ葵ちゃんに聞いてみてよ」
「いや……その……」
ほら早く!と言わんばかりに真凛が急かしてくる。なんでそんなことするんだ?何が目的なの?そんなことを考えていても仕方ない。今は真凛に相談している立場だし……
そしてボクは渋々スマホを取り出して、葵ちゃんへメッセージを送ることにする。
「えっと……なんて送れば?」
「え?それもアタシが考えるの?……じゃあ『葵ちゃんの話をしていたら、どうしても妹が会いたいって言ってるんだけど……葵ちゃん嫌だよね?』にして」
「これ……断りにくくない?それになんで真凛が会いたいの?」
「アタシの事はいいでしょ!ほら早く」
真凛に急かされながらメッセージを送る。するとすぐに返事が返ってくる。その内容は……
『え?家で私の話してるのw恥ずかしいな///雪姫ちゃんの妹さんってどんな子なんだろう……私は全然大丈夫だよ』
「……」
「葵ちゃん何て?」
「なんか思ったよりノリノリだった……」
本当に大丈夫だろうか?そう思いながらもボクは真凛の方をちらっと見る。すると真凛がニヤニヤしながら言う。
「楽しみが増えたねおにぃ♪」
「うっうん……」
なんでそんなに嬉しそうなんだろう? でも……真凛に相談に乗ってもらって良かったかも。こうして週末のデートに真凛も来ることになったのだった。




