20. 気にしないよ
20. 気にしないよ
ボクは怖いだけだ。もしボクが女装していることを葵ちゃんに知られたらって……
それに、もしもバレてしまった時に葵ちゃんがどういう反応をするか考えるだけで怖かったんだ。だってそうでしょ?普通だったら気持ち悪いって思われるに決まっているし……そんなの耐えられない。
でも……それでもやっぱりボクは……葵ちゃんに会いたいなって思うし、もっと仲良くなりたいとも思っている。
「勇気がないんだ……ボクは……」
それから数日後の放課後。日直の仕事を終えて帰り支度をし、ふと校舎裏側の窓の外を見ると、そこには葵ちゃんと……1人男子生徒がいた。
「あれ……葵ちゃん?」
その男子生徒は確か隣のクラスの子で、サッカー部に所属しているイケメンだと聞いたことがある。そんな2人が校舎裏で何をしているのだろう?ボクは思わず窓から身を乗り出すようにして外を見る。すると、ちょうど葵ちゃんが告白されているところだった。
「え……」
突然のことに驚きを隠せない。しかも目の前で告白されてる瞬間を初めて見たし……でも同時に胸が締め付けられるような感覚に襲われる。そしてそのまま見ていると葵ちゃんはその告白をお断りする。
その瞬間、ボクはホッと胸を撫で下ろすと同時にすごく複雑な気持ちになる。なんだろう……この感情は? そんなことを考えていると……
「白瀬君?」
「え……」
身を乗り出すようにして外を見ていたので、葵ちゃんに見つかってしまった。どっどうしよう……ボクは慌てて身を隠そうとするけど、もう遅い。葵ちゃんはそのままボクに向かって手招きをする。
もしかして……怒らせたのかな……確かに覗きなんて悪趣味だし、嫌われても仕方ないよね……ボクは覚悟を決めて葵ちゃんの元へ恐る恐る行く。
「あっ……あの……」
「……今の見てた?」
「ご……ごめんなさい……」
「そっか。別に怒ってないよ。それよりさ……白瀬君ってもう帰るところ?」
「うん……」
「もし良かったら……駅まで一緒に帰らない?」
葵ちゃんからの誘いに一瞬戸惑う。まさかこんなことを言われるとは思わなかったからだ。
なんで……?
今のボクは『白井雪姫』じゃなくて『白瀬優輝』なのに……?
「ちょっと……告白されたあとで……1人で帰るの怖くてさ?ダメかな?予定ある?あるなら無理しなくて大丈夫だよ」
「ない……けど……」
「じゃあさ……お願い!」
結局ボクは葵ちゃんの勢いに押されてしまった。でも……一緒に帰れるのは嬉しい。思わず顔が緩みそうになるけど、慌てて引き締める。
「でも……ボクと一緒にいたら……藤咲さんが迷惑すると思うし」
「迷惑?なんで?」
「ほら、ボク……暗いしオタクだし……釣り合わないと思うし……」
ボクがそう言うと葵ちゃんはキョトンとした表情を見せて、すぐに優しく微笑みながら言う。
「白瀬君それさ……付き合おうとしている人が言うセリフじゃないw」
「えっ!?いや……あの……」
「あはは。冗談だよ。あ。もしかして遠回しにお断りしてる?」
「そんなことないよ!」
「それなら一緒に帰ってほしいな。それに、白瀬君はオタクだけど……別に私は気にしないよ?そもそもクラスメートじゃん。ほら行こう?」
そう言って葵ちゃんはそのまま歩き出す。ボクは突然のことに驚いてしまったけど……でも……こんなボクを肯定してくれた葵ちゃんの言葉がそれ以上に嬉しかった。
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