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異世界グランドホテル ~転生したらホテル経営者になりました。スタッフは調伏したゴーストです!?~  作者: 四葦二鳥


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046号室 社交場としての名誉な要請

 ヌエヴォ・グランにあるレストラン『オブザヴァトリオ』は、個室席が数部屋ある。

 どれも窓からの景色が美しいだけでなくプライベートな空間が確保でき、さらに特別感が得られると言うことで予約は困難を極める。

 スタッフゴーストの話では貴族の権力を使ってまで予約を取ろうとした事が何件かあるらしいが、禁じられた領域は独立国のような扱いを受けているし、そもそも僕のスキルで出した予約機を使った機械的な予約システムになっているので、システム上権力を使って脅し取る余地は存在しないのだ。

 そんな超人気席にデルフィナさんは予約を勝ち取れたんだから、やはり『持っている人』らしい。


「これが本場のシャリアピンステーキ。パラドール王国でも目聡い人達の噂になっているわよ。高級肉でも及ばないような柔らかさを、お手頃な肉に持たせる料理法だって。労力と時間はかかるけどタマネギだけでできるから、そのうちパラドール王国内で流行るかもね」


「このホテルでは食品系のお土産の売り上げが多いですから。そのうち他の料理も流行るかもしれませんわ」


 本館の1階に『メルカンシア・ゲネラル』というお店がある。日用品を取り扱っていて旅行やホテル滞在中に必要だったり便利になる物を売っているのだが、実はお土産コーナーがある。

 その中でも一番人気がクラウディアの言った様に食品系で、ヌエヴォ・グランの味を帰ってからも楽しめるのが売りだ。

 例えば瓶詰めされたナポリタンソースや缶詰のカレー、シチューなど。これらは電子レンジがないこの世界でも鍋やフライパンで温めて食べられる。

 さらに、缶詰にされたシャリアピンパイも販売されている。シャリアピンステーキをパイで包んだ物で、家に帰ってからオーブンに入れて温めるのだ。


「後で見させて貰うわ。ところで、2人は不審に思ったのではないかしら? 私が変なところに興味を持ったり似つかわしくない台詞をしゃべったり」


 確かにそうだ。公園に行っては見通しの良さを褒め、医療関係者でもないのにエステよりも診療所に注目したり。出てきた感想は全てセキュリティを気にした発言だったし。

 これは明らかに、観光に来た雰囲気ではない。


「実は、私の婚約者に頼まれたのよ」


「クリスティアン王子ですか?」


 なんと、デルフィナさんの婚約者とはパラドール王国の第2王子、クリスティアン・パラドールだそうだ。

 どうやら学院時代、デルフィナさんとクリスティアン王子は何度も顔を合わせていたようで(デルフィナさん曰く『腐れ縁』)、いつの間にか王子から興味を持たれた末に婚約へ至ったらしい。


「そう。本人が直接ここに来たかったらしいけど、時間が取れなかったから私に頼んできたのよ、あいつ。

 それであんた達に色々案内して貰って確信したわ。合格よ」


「合格……ですか」


 とは言ったものの、何に対しての合格なのかわからないんだが。


「合格って言ったらあれよ。パラドール王国とリッツ王国の会談会場。クラウディアがあのバカ王子に一方的に婚約破棄されて以来、気まずくなっていた両国関係を修復するための会談に使うのよ」


 一国の王子に対して『バカ王子』はインパクトあるなぁ。まぁ、クラウディアとの婚約覇破棄だけでなく危険地帯だと思われていた当時の禁じられた領域へ追放するという暴挙を鑑みるに、全く擁護する気は起きないけど。


「会談ですか……。リオさん、どうされます?」


「そうだなぁ……。そういえばデルフィナさん、なぜパラドール王国とリッツ王国の会談に僕のホテルを使うのか理由を聞いても?」


「そうね。その辺も話しておきましょうか」


 デルフィナさんが語ったところによると、どうもリッツ王国の派閥争いが関係しているらしい。

 どうやらクラウディアとの婚約を破棄した第3王子の後ろ盾となっている貴族やパラドール王国との戦争を望む主戦派は、現在風当たりが悪くなっているようだ。

 原因は単純で、第3王子がクラウディアとの婚約を破棄したが、その後僕がクラウディアと婚約した。その関係で、現在経済的に注目されている禁じられた領域がリッツ王国をひいきするのではないかと思われていて、せっかくのチャンスを潰してくれたなと第3王子派が国中の政財界の人間から恨みを買っているらしい。


 ……ま、僕としてはお客様であれば出身は問わないし、そもそも一番商取引しているのはリッツ王国の商会であるノボテル商会だし、移住者や冒険者についてはパラドール王国・リッツ王国分け隔て無く受け入れている。

 つまりただの考えすぎだ、と言いたいけどね。


 話を戻して、主戦派も存在する第3王子派の勢いがなくなっている内に会談を開いて関係修復したい、というのが両国の考えなのだ。

 ただ、追い詰められた人間ほど何をするかわからない。ひょっとしたら会談をぶち壊しにするべく暗殺や襲撃を仕掛けるかもしれない。

 そう考えると、建物の構造や警備体制についてあまり知られていない禁じられた領域のホテルで開くのが最も安全、という考えに至ったとか。


「けれど、今までの禁じられた領域のホテルはどこも会談に適していなかった。収容力だったり会談会場になりそうな場所がなかったり。

 唯一カシオン・デル・マールが一番の候補だったけど、観光客が集まりすぎて警備上支障が出るから及び腰だったのよね。

 そんな時、このヌエヴォ・グランが開業した。一縷の望みをかけて見に行ってみたら、実に会談会場にピッタリだったわ。というわけで、会場としてホテルを貸しなさい」


「ええ、いいですよ」


「ちょっとリオさん、そんな即答していいんですか!?」


 クラウディアがビックリしているのももっともだが、これでもきちんと考えている。これは、ホテルとしての格を示す絶好の機会なのだ。

 そもそも、欧州においてホテルは社交場だった。だから純粋な宿泊者だけでなくホテルのレストランや広間を貸し切ったパーティーなどの参加者も出入りしていたという。

 このような背景の延長線上で、政治的に重要な舞台になったり国際会議に使われたりしたのだ。まぁ、その関係で戦争時には占領軍に接収されたり、テロの標的になったこともあったらしいが。

 現在では、ホテルで国際会議を行うのは欧米のみならず世界各国で行われている。つまり、外交の舞台になるのはホテルに対する信頼と名誉の証とも言えるのだ。僕はホテルオーナーとして、この証をゲットしたい。


 もちろん、他国の会談に関与して巻き込まれたらどうする、という考えもある。だが実際問題、禁じられた領域の利用客の大半はパラドール王国とリッツ王国なのだ。

 つまり、両国が平和でなければ僕達の商売があがったりになってしまう。それを避けなければならないので、どう考えても今回の会談に協力しない訳にはいかないのだ。


「なるほど、リオさんのお考えはわかりました。確かに両国の平和に尽力しなければ、この地にも影響が出ますね」


「納得してもらえてありがとう、クラウディア」


「では、協力してもらえるということでクリスティアン王子には伝えておくわ。日程は追って連絡するけど、なるべくホテル営業に支障が出ないよう配慮するわ。

 でも、会談は早めに行われるわ。あまり時間をかけすぎても第3王子派が何かやらかす隙を与えるだけだから。そこはよく覚えておいて」

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