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 伸ばされたアスレイの手にそっと触れ、魔法を解き地面に足をつける。するとアスレイの後ろから別の隊の隊長が笑顔で私を見ていた。なぜ笑顔なのだろうと内心首を傾げつつ、とりあえず状況の説明をするため口を開く。


「アクアティールで一体。その後この付近で二体。計三体に遭遇。そして先ほど三体同時にココロで攻撃しましたが、ちゃんと仕留められているかは不明です」


「三体か。俺たちが発見した負の者は七体だ。最低でもあと四体……ディアーズ。囮を頼めるか?」


「もちろんです。セルディオ隊長の隊と一緒に動けばいいですか?」


「ああ。そうしてもらえると助かる。動きはいつも通りで」


「はい」


「グレイヴ。そういうわけでお前の隊はディアーズが遭遇した三体の確認でいいか?」


「ああ。ちゃんと仕留められていれば心臓回収後に合流する」


「頼む」


 動きが決まったところでセルディオ隊長は自隊の隊員に指示を出し始めたので、私も囮として動く準備をする。いつも通りと言っていたから、私はセルディオ隊長の合図と同時に動く。


「イリス」


 名前を呼ばれるのと同時に優しく腕を引かれ、手に何かを握らされた。何か、と言っているけれどその何かとはアスレイの想いを具現化させたココロである。


「念のため」


「ありがとう」


「気をつけて」


「ええ。アスレイも気をつけてね」


 アスレイは小さく頷き、自隊のところへと向かう。私はその背を見つめ小さく息を吐く。


 よかった。見たところ怪我をしていなさそう。でもこの任務が終わったらしっかり確認はする。


 そう決めて、意識を切り替える。


「ディアーズ。派手に頼めるか」


「はい」


「お前たちもいいな」


 セルディオ隊長の言葉に隊員たちはみな同時に返事をして武器を構えた。それを確認した私は、先ほどと同じように風を操り上空へと行く。そして魔力を円を描くように自分の周囲へ集中し、その形を大きくしていく。


 ーーザザッ。


 ーーザザッ、ザーッ。


 聞こえてくる音。その音は迷わず私のところへ向かってくる。


「さあ、おいで」


 私は音がするほうを見据え、魔力を放つ。すると負の者が姿を現した。こちらへ向かってくるその表情は恐怖を感じるほどの笑みが浮かべられている。


『イイナア』


『キレイダネエ』


『ホシイホシイ』


『ネエチョウダイ』


 四体いる。さっきセルディオ隊長たちが発見した四体ならいいけど。違うのならまだ増える。


「放てっ!」


 セルディオ隊長がそう言うと、隊員数名が負の者専用狙撃武器で攻撃する。一体は狙撃武器で仕留めることに成功。残り三体は弱り下へと落ちていった。その三体を近距離で攻撃し確実に仕留めていく。


『あーア。ヤラれちャッタカあ』


 聞こえてきた声に、放つ狂気に……恐怖が走る。


 瞬間的に振り返り距離を取る。だけど相手のほうが上手で私の胴回りが掴まれ、ぎりぎりと徐々に絞められていく。


「いっ……!」


『コれモーらッた』


「っ……」


『きれいキレイ』


 いつも見る負の者よりもう少し人よりの姿をしている。つまりどこかで特魔力者が……。


 眉間に皺が寄り、ぎりっと歯が鳴る音が聞こえた。


「……」


 愉しそうに笑う姿。その姿が……あの日と重なる。


 到底理解できない理由で狙われて、挙げ句に奪われて。あまりの理不尽さに私の怒りは最高潮よ。


 私の怒り……と言うよりは私の身が危険だというのがココロに伝わったらしく、小瓶を割る勢いで動いているのが伝わってきた。


「私を今すぐ放して。そうじゃないと後悔するわよ」


『そレ、オれがクッタキレイもってルもイッテタ。でもムダ。二ゲラレな、イっ……?』


「あなたにとっては不運。私にとっては幸運」


 負の者は想像していなかったであろう重さに耐えられなくなりつつあるみたいだ。徐々に下へと落ちていっているし。


『ナニガオキてル』


「ただ落ちていっている。それだけよ」


 言い終わってすぐ小瓶が割れた。ココロが空間を越えて私の前へ出てくる。


 色がいつも以上に変わり強い光を放っている。


「私は大丈夫。来てくれてありがとう」


 ココロは私の言葉に反応しふよふよと動く。そして私の頬を撫でるように動いてから、負の者のところへと勢いよく飛んでいき負の者と一緒に急降下していった。私は瞬間的に落ちる場所の地面を強化する。


「……ふー、とりあえず生きてる」


 安堵の息を吐き、魔法で割れた小瓶を直し残っているココロを入れた。

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